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異界百語  作者: 西渡島 勝之秀
5/5

侵食

 山岸は俗に言う小悪党である、悪人かと言えばそうでもない。

 面倒見がよく気さくで皆から慕われている。

 では、善人かといえばそうでもない。

 生死に関わるような事でなければ平然と法律を侵す。

 つまりはそういう奴だ。

 その山岸が刀を持ってやって来た・・・

 まぁ、やりそうと言えばやりそうなんだが、流石にそれはどうなんだ?


 「山岸さん、俺にかちこみ掛けても何もいいことないよ・・・」


 「いや、これはですね。拾ったんですよ」


 何やら言い訳をする山岸だがそれもそれでどうなんだ?

  



 が、俺はその刀を見てギョッとした!


 「そ、それは!奴の刀じゃないか!」


 なんてことだ、それがココにあるという事は奴がきている。

 だが、考えようによってはチャンスかも知れない、武器が半分なら今が勝機か?


 「渡部さん奴の気配を探れる道具はあるか?」


 「あるにはあるよ、あんたじゃ使いこなせないけどね。まぁ、あたしなら使えるけどね」


 「そうか、やっぱり無理だよな・・・え?使えんの?なんで?」


 「あたしは若いころに中国で修行したのさ」


 そういって渡部がおもむろに羅針盤を出す。

 手をかざすと針が勢い良く回りしばらくしてピタリと止まる。


 「踏み切り付近の住宅街だね」


 「行ってくる!」


 「待った!皆で行った方がいいよ。今は逢魔ヶ刻だ」


 俺達は渡部の示した踏み切りに行く、そこに奴はいた。

 独特の格好、山高帽に仮面そしてタキシード左手に脇差。

 奴はニタリと笑い、ちい様を見る。


 「どうやらターゲットが決まったようだ、頼むぞ」


 「お主!それはどうなんじゃ!あちきのような幼子を囮にするか!」


 「大丈夫お前は人間じゃないし」


 「人じゃなくても霊滅するじゃろうが、後生だから助けて~、なんでもするから~!」


 泣き喚くちい様、これはたまらん・・・

 と、ふざけてもいれなそうなので俺は打って出る事にした。

 前回の戦いで格闘術はそれなりに有効である事が判明している。

 俺はアドバンテージを掴むために奴に仕掛ける!

 左のジャブを出そうとする、それに合わせ奴は脇差を突き出す。

 予想通りフェイントに掛かった奴の顔面に右ストレート   

 が、スカった・・・

 触れる事が出来なかった、どうやら現世では実体化が出来てないようだ。

 と、いう事は・・・

 かなりヤバイ!一方的にやられる!

 体勢を崩した俺に奴は切りつける、避けられない!

 が、俺に刃は届かなかった。

 そこには、刀を構えた山岸の姿があった。


 「助かりました山岸さん、剣術なんて出来たんですね」


 「いや、あっしはチャカはいけますがヤッパはからっきしですわ」


 「え?なんで?今の動きは相当なものですよ」


 「頭が可笑しくなったと思うかもしれませんがね、しゃべるんですよこのヤッパ」


 「ヤッパとな?もうちと上品な呼び方をせんか無礼者め」


 「えっと、しゃべってますね・・・」


 「でしょ?」


 いきなり語りだした刀に困惑する、禍津神なのだから話しても可笑しくないのかもしれないが。


 「奴は剣術などは会得していない素人じゃ、我を持って戦えば遅れはとらんだろう」


 「しかし、刀様。アイツには触れる事ができないだぜ」


 俺と刀が話しているとちい様が口を挟んできた。


 「手はあるぞ、主の力を使い奴の霊力密度を一時的に上げればよい」


 「ば、媒体がないよ・・・」


 「そのポケットに入っているじゃろ?」


 俺はポケットの10ドル金貨を握る、20万ですよこれ・・・


 「あやつはエゲレスの殺人鬼じゃほっとけば死人が出るであろうな」


 「う、しかし・・・」


 「主も小さい男じゃな、金くらいで。今まであちきと契約したものはそんなのけちらんかったぞ」


 「マジか!どんな金持ちだよ!」


 「まぁ、国の富を自由に使えるような感じじゃな」


 「そんなのと一緒にすんじゃねぇよ!あぁ!クソ!やってやるぜ!」


 「山崎さん!奴の動きを止めてくれ!」


 「わかりやした!」


 山崎は奴と切り結ぶ、突きを主体に攻める奴に対して横なぎに刀を振り反らす

 我慢しきれなくなった奴は大きく踏み込んで深く刺しに来る、好機!

 山崎はバックステップをしながら刀を突き出す寸分違わず鍔の穴に入りそのまま弾かれる。


 今しかない!!

 俺はポケットの10ドル金貨を無防備になった奴の体に向かって弾く!

 そこにちい様が何かをつぶやき奴に手をかざす。

 すると、コツン、と金貨が当たる。実体化したのだ!


 「ここで決める、仏法!金色日天破魔!」


 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 断末魔の叫びと共に怪異は消滅していく。

 しかし、その叫び声は俺のものだった・・・

 俺は倒れこみながら呟く。


 「また、赤字だ・・・」


 異界百語り  第1部 完 

 

 

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