おねしょのかみさま
ケンタくんとショウタくんは、元気な双子の男の子です。
弟のショウタくんは、毎朝おねしょをしては、お母さんに叱られていました。
「どうしてショウちゃんは、いつまでもおねしょをするのよ。ケンちゃんを見習いなさい。」
今日もショウタくんは、おねしょをして、お母さんに叱られました。
「どうしてケンタは、おねしょをしないんだろう」と、ショウタくんが考えていると、窓の外にケンタくんの後ろ姿が見えました。
おねしょの跡がついたショウタくんの布団の向こうで、ケンタくんは、あじさいの花に向かって話しかけていました。
「何をしているんだろう?」
ショウタくんは、不思議に思いました。
するとケンタくんは、「これで大丈夫」
そういって、家の中に戻っていきました。
「分かったぞ。あじさいのかみさまにお願いすると、おねしょが治るんだ。」
ショウタくんは、あじさいの花の前にいきました。
「おねしょをして、お母さんに叱られることがありませんように。」
ショウタくんは、あじさいのかみさまにお願いしました。
けれど次の日の朝、ショウタくんの布団には、見事に大きなあじさいの花が咲いていました。
「またショウちゃんは、おねしょをして!」
今日もショウタくんは、お母さんに叱られてしまいました。
「おかしいなぁ、あじさいのかみさまにお願いしたのに。」
するとまた、あじさいの花の前に、ケンタくんがいました。
今度はそっと、ケンタくんのそばに近づいていきました。
「何してるの?」
ショウタくんは、びっくりしてケンタくんに 聞きました。
ケンタくんが、あじさいの花に向かっておしっこをかけていたのです。
「そうかぁ、あじさいのかみさまに、おしっこをかければ良かったんだ。」
ショウタくんは、ケンタくんのとなりで、あじさいの花におしっこをかけました。
「よし、これで明日は、お母さんに叱られないぞ。」
ショウタくんは嬉しくなって、いつもより少し早く寝ることにしました。
ところが次の日の朝、ショウタくんの布団には、いつもより大きなあじさいの花が咲いていました。
「どうしてあじさいのかみさまは、僕の言うことは聞いてくれないんだよ。」
ショウタくんは、お母さんに叱られながら「えーんえーん」と泣きました。
そしてまた、あじさいの花の前にいくと、ショウタくんがおしっこをかけていました。
「今日もあじさいのかみさまに、おしっこをかけているの?」
ショウタくんはケンタくんに聞きました。
「僕はおしっこで、ナメクジをやっつけてるんだよ」と、ケンタくんは言いました。
よく見ると、ケンタくんにおしっこをかけられたナメクジが、みるみる小さくなっていきました。
「あはははは…僕もやっていい?」
ショウタくんは、笑って言いました。
そしてふたりは、一日中ナメクジにおしっこをかけて遊びました。
「やったよママ、僕おねしょしなかったよ。やっぱり、あじさいの花はおねしょのかみさまだったんだ。」
次の日、ショウタくんは、にっこり笑って言いました。
そして、今日もショウタくんは、ケンタくんとナメクジにおしっこをかけて遊びました。
「今日はナメクジ少ないなぁ。」
けんたくんは、言いました。
そうです、ふたりでおしっこをかけるようになったので、ナメクジが少なくなったのです。
そして、とうとうナメクジは、一匹も姿を見せなくなりました。
すると次の日の朝、ケンタくんの布団にも、ショウタくんと同じ大きなあじさいの花が咲いていました。
「おねしょのかみさまなんて大嫌い。」
ケンタくんとショウタくんは、ふたり揃ってお母さんに叱られました。