愛するムーン
始めちゃったよ新連載。目困シリーズよりはゆっくりにしたいなぁ。。
私には、所謂前世の記憶というものがある。
思春期を迎えた頃、鏡を見て、呆然とした。
見覚えのある、横に成長しちゃった身体。
髪の色に違いはあれど、その容姿、体型は見覚えがあって。
既視感と共に、がつん、と前世が甦った。
私は、日本と言う国に住む、ごく普通のOLだった。
あの日、トラックに轢かれてしまうまでは。
ごく普通に小中高を卒業し、ごく普通に就職し、数年も続ければもう重要な仕事だって任してもらえるようになって、充実していたと思う。
仕事や友人関係には文句もなく、ただ、恋人はできなかった。
それは暗に、自らの体型にあるとわかってはいても。
美味しいものを食べてきた贅肉はなかなか減ってはくれず。
社会人になって、食欲は学生時代と比べれば減ったものの、動くことが減ったことで、プラマイゼロ。
体型は増減することなく定着し。
自分でも、そんな自分に特に不満は…多少はあれど、他人の目を気にして苦労してまでのダイエットに踏み切れなかった自分の甘さは自覚するところで。
このまま、ひとり、この身体と付き合っていくんだろうと思っていた。
そんなとき。
帰り道、猫を助けようとして道路に身を投げ出してしまった。
ちょうどそのタイミングで、トラックが突っ込んできて。
ああ、死ぬなぁって思った。
鈍い音に、飛んだ身体で、腕の中には何とか守ろうとした小さな肢体。
思ったのは、トラックの運転手に悪いことしたなぁ、てこと。
そして、見た限り無事そうな猫を見て、この体型に感謝した。
こんな私でも、守れるものがあったじゃないか。
なら、いいかな。こんな最期でも。
運転手さん、ほんとごめんなさい。
そして、私はゆっくり目を閉じて。
次に生を受けた地では、記憶は一切なかったけれど。
つい先日、記憶は蘇ってしまった。
私は、ムーランティ・イリー。
街の食堂を経営してる家に産まれた、前世の記憶を持つ、丸い身体を持つ、女の子です。
愛するムーン
愛をその身にいっぱいいっぱい詰め込んで、
きみはみんなに愛されるべき
ムーランティ。