ある日の二人
残酷な描写は保険です。
「なぁ、デジャブって信じるか?」
俺は相棒に訊いてみた。
「……」
相棒は相変わらず言葉を発しない。
だが俺にだけは考えていることがわかる。
――俺は特別だからな。
だから今まで誰にも心を開かなかったこいつが、俺にだけは心を許してくれる。
ありがたいことだ。俺みたいな人間でも信頼してくれる奴ってのがいるんだから――
「普通はそうだよな」
「……」
「ああ、俺は信じてる」
そう、本当に信じてる。俺には本当にデジャブが多い。
それはふとした拍子に気付くこともあれば、これが起きるんだろうなと漠然と感じるものまで様々だ。
俺はそれが見えるたびに「あぁ、俺はこの道に進むことが決まっていたんだ。進む道は間違っちゃいなかったんだ」と安心する。
デジャブがあるという事は自分の道が繋がっているという事だ。
道が途切れていないから。まだ先があるから。
俺は心の底から安心出来る。
「……」
「おう、俺は結構あるぜ」
「……」
「そうだなぁ……まあ色々だ」
俺たちはそんな会話をしながら周りに目を向けた。
そこには黒い獣たちの残骸が散らばっている。
「……」
「え? この景色も見たのかって?」
俺はもう一度見渡すと
「当然だろ?」
そう言って笑った。
ここは森の奥深く。昼間だというのに鬱蒼と茂る木々に遮られ、光すらまともに差さぬ静寂の場。
そこにスーツの男とワンピースの少女はいた。
男の黒色は闇に滲み、少女の檸檬色はその中に差す一輪の光だ。
そんな対照的な二人だが、獣だったものの残骸が散らばるこの場ではどちらも場違いに見えた。
「何か怪しい儀式をしてるっていうから来てみれば」
「……」
彼はため息をつきながら祭祀場だった場所をもう一度見る。
周りには何だかよくわからない骨や模様の描かれた布が落ちている。
人の姿は見えない。
彼はバラバラになった獣達を見ながら
「こいつらも自分がこうなるとは思ってなかったんだろ」
そう言って目を細めた。
元々彼らは野良の呪術師だった。
あまり大っぴらに仕事をしては協会の人間に勘づかれる。
かといって小さな仕事をすれば割に合わない。
その現状に悩んだ彼らは
「協会に見つかっても正面から叩き潰せばいい」
そんな考えに至った。
「自業自得さ」
代償は『自らの魂』。報酬は人間という存在からの『逸脱』。
所詮、普通の人間より魂の強度が高い程度。その程度で人の枠を超えた力を行使できるはずもない。
彼らは理性を失くし、一番近くにいた獲物に襲い掛かった。
二人が来た時にはもうほとんど生き残りはいなかった。
一匹を除いては。
それもまた二人の足元に横たわっている。周りの獣とは二回りほども違う体躯。その身体には大きな穴が開き、頭部は少し離れた場所に落ちている。
その切断面は綺麗な直線を描いていた。
「ま、来世で真面目に生きるんだな」
彼はそう言うと少女と共にその場を後にするのだった。
Fin




