決闘 ― 101st Proposal ―
運命の日はアッシャームの悲劇からわずか一週間後に訪れた。
もともと攻め込む気でいたのだ。宣戦布告から侵攻まではあっという間だった。キリシヤの門を抜けたグラント軍は麓のイソス河を挟んで我がシーリア軍と相対する。
敵は第七騎士団と新生アストリア軍との混成軍。その数はシルバーソードを主力とした約千機。アラン市長もバルティアに支援を要請したが火急のため敵国を上回る数を用意できなかった。敗戦濃厚の戦だったが、勝ったところでなんの意味もない。
勝てばバルティアの狗。負ければグラントの狗。実に馬鹿馬鹿しい戦だ。アヤメでなくとも投げ出したくもなる。
もっとも――今の私にとっては何もかもがどうでもいい話だがな。
難しい戦後処理はアランに任す。全軍の指揮はナーサシスたちに任す。私はシーリア騎士の代表として、この決闘の勝利のために全身全霊を捧げるのみだ。
「魔法の使用許可を願う」
「どうぞご自由に」
対岸からワンドタイプの氷結魔法が次々と放たれる。かちかちに凍りついた河の上をたった一機の旧型タロスが長剣片手に悠然と歩いてくる。
武芸者は歩く姿を見るだけでその者の実力をある程度察することができる。タロスでもそれは同じ。脆い氷面にひびひとつ入れず、足を滑らせる素振りすら見せないその様は、私でなくとも騎乗する騎士の実力の高さを伺い知ることができるだろう。
――怪物が来る。
タロスに乗るために生まれてきた男が、私がただの一度も勝てなかった男が、グラントが誇る世界最強の騎士が、太陽の子が、私の求めに応じてやってくる。これほど光栄なことがあるだろうか。感動で、身が震える。
「待たせたなマリィ。では始めようか」
「対岸から始めても良かったのですが。貴殿のタロスはボゥタイプですから」
声だけは震えぬように気をつけた。自軍に余計な勘ぐりをされたくはなかったから。
「同じ条件で戦わなければ正々堂々の闘いとは言えまい」
聞く者すべてを魅了するよく透き通った美しい声だった。団長のだみ声はタロスの拡声器を介するとなぜか美声となる。私はそれが気にくわない。
「私と貴殿のタロスには歴然たる性能差があります。とても同条件とは言えませんが、それでもよろしいか?」
「それは気遣いか? それとも我が愛機に対する侮辱か?」
……愚問だったな。
たとえどれだけ時代が移り変わろうとも、あなたが他のタロスに乗り換えることなどありえない。それは良く言えば機体に対する拘り。悪く言えば――驕りだ。
「気遣いでも侮辱でもなく、ただ事実を申したまで」
団長は弟子である私に自分が負けることなど万に一つもないと考えている。だから後衛機に乗ったまま私の前に立った。その慢心が唯一の勝算だ。
あなたは、私がシーリアに来てどれだけ強くなったかを知らない。
「貴殿に不服がなければ、これ以上何も問うまい。いざ尋常に勝負!」
私は剣を構えてラングフォード団長の様子を伺う。
団長は、相変わらず剣を構えなかった。
無形の構え。あらゆる方向からの攻撃に迅速に対処するための型なき型だ。団長は訓練時は団員たちに手本を見せるためにきちんと構えるが、私との決闘の時はいつも無形だ。実戦派の団長らしいが一対一での決闘ではそれが敗因となることもあるだろう。
私は構えを取ったままじりじりと間合いを詰める。慎重にいかねば団長の魔性に飲み込まれる。
一足飛びで斬り伏せることが可能な距離で一旦止まる。
「……」
やはり隙がないな。私が撃ち込もうとする気配を見せる度に鋭い反応が返ってくる。
当然だ。わざと隙を作って攻め込ませたところを狙うなど二流か、せいぜい一流に成り立ての者がやることだ。その先を極めた真の強者は隙という隙を一切見せない。鉄壁の防御術と必殺の一撃で敵を完封する。団長は無論それができる騎士だ。
だがこのまま睨み合っていても埒があかない。隙は見つけるのではなく作るもの。そして格下が先手を取るのが決闘の礼儀。まずは私から行かせてもらいますよ。
私は脚部に魔力を集中させて力強く踏み込む。同時に首もとめがけて素早く剣を振り下ろした。
両者の剣が火花を散らして交差する。
私とラングフォード団長の百一戦めの決闘が、今ここに幕を開けたのだ。
「相変わらずいい太刀筋だ」
そちらこそ相変わらず理解不能な強さです。
ゴールドランクの出力はブロンズランクの約二倍。おまけに通常のブロンズボゥは大型の剣を使えるように調整されてはいない。にも関わらず、なぜこの一撃を真正面から受け止められるのか。機体に専用のカスタムがなされているのはわかるが、それでも出力差を考えれば理不尽極まりない。
おそらく力の逃し方が神懸かって上手いのだろう。半壊していたとはいえピトナハ四世の駆るゴールドファラリスを、さながら闘牛士のように短剣のみで一方的に完封してみせた、太陽の子の実力は今も健在といったところか。
――だが、私をピトナハ程度と一緒にしてもらっては困りますよ!
この鍔迫り合いは私が有利だ。腕部に魔力を集中させて団長の剣を力で押し返す。左右に逃れる暇は与えない。ゆっくりと確実に圧殺してやればいい。スマートに勝とうと思うな。間違っても技術勝負に持ち込んではいけない。ハイグレードのイコールから生み出される圧倒的パワーを押しつけていけば必然、機体性能差で勝てる。
だが、さすがに団長もそれは軽々と許してはくれない。自分でも気づかないほどの一瞬の隙をついて私の剣圧を華麗に受け流す。
「いくぞマリィ」
わずかに空いた空間にミノス合金の閃光が次々と瞬いた。
踊るように放たれた幾多の剣撃がゴールドソードの装甲を切り刻む。私はギリギリのところで急所を盾で守る。
――危ないところだった。
アンチフィジクスシールド搭載機でなければ今の攻撃で決着が着いてしまっていたかもしれない。やはり団長は私の倍強い。もしかしたら団長は敵に塩を送る思いでゴールドソードを私に譲渡してくれたのかもしれないな。
普通ならここで息をつき、一旦攻防が終了するものだが、団長相手の場合はそうもいかない。
「くそっ!」
およそブロンズランクのものとは思えぬスピードとパワーの乗った剣撃が、疲れ知らずに延々と放たれ続ける。そしてその一撃一撃がすべて関節部等の急所。これだけ精度の高い攻撃を雨あられと放ち続けられると、急所狙いはむしろ読みやすいなどと強がりすら吐けない。
ラングフォード団長、やはりあなたは恐るべきタロスモンスターだ。
だが団長は知らない。シーリアにはあなたに似た剣筋を持つ天才騎士がいることを。私がそいつと訓練を重ねてきたという事実を。
団長の剣技は素人のナーサシスとは比較にならないほどのハイレベル。だがそれでもやはり、間合いの取り方や攻撃するタイミングはよく似ていた。だから反撃までは無理でも凌ぐことぐらいはできるのだ。
「よく捌けるな。おまえと剣を交えるのは久々だというのに」
ナーサシス同様ラッシュの最中でもお構いなしに話しかけてくる。シンクロ疲労などというのは団長には無縁の言葉だ。こういう怪物を狩るには泥臭く行くしかない。
私は攻撃の嵐をかい潜りながら、少しずつ団長に近づいていく。
剣技で劣るならば、反撃に転じることができないならば――こうするまでだ!
私は剣を放り捨て、倒れ込むようにしてダフネの脚部にしがみついた。
「もらったあァ!」
そのまま脚を掴んで引きずり倒して馬乗りになる。
なに、騎士なら騎士らしく剣で戦えだ? 知ったことか、ソードタイプは五体すべてが騎士の剣よ!
私はマウントポジションを維持したまま、ダフネの忌まわしい鉄面皮に拳を叩きつける。一見無意味に思える行為だが、シンクロしている以上衝撃は騎士に伝わるし、何よりダフネを傷つけられることを団長は酷く嫌がる。
しばらく殴打を続けると案の定、団長は両腕のガードを上げた。
それはすなわち弱点であるコアががら空きになるということ。ならば遠慮なく奥の手を使わせてもらう。
私は右腕で顔を殴打しつつ、左の掌をダフネの胸に押しつけた。
左腕に内蔵された魔法兵装ファイアボール。
ボゥタイプのミノス合金装甲は魔法耐性が高くなるよう調整されているが、ゼロ距離ならば関係ない。コアを破壊して機能不全に持ち込んでやる!
だがこの一撃も団長によって阻まれた。魔法発動のため動きの止まった左腕を素早く絡め取り、逆に関節を極めてへし折ろってやろうと力を込める。
――まずい!
私は完全に極められる前に素早く左腕を引き抜く。
なんとか腕を失わずには済んだが、代わりにマウントから抜けられてしまった。
マウントから脱出した団長は私の腕を折るために捨てた剣を再び拾い上げて立ち上がろうとする。だが上に乗っていた分、私のほうが体勢を整えるのが早い。すでに必殺の一撃を放つ準備は整っている。
真の覚悟がここから試される。
躊躇うなマリィ、シーリアに来た本当の理由を思い出せ。偽善を捨て去り己の邪悪を解放しろ。
「くっ」
く……くく……くくくっ。
そうだ、そうだとも。私はこの瞬間のためにアレスを挑発し、騎士資格の剥奪に異議のひとつも申し立てなかった。そして親グラントのアッシャームと交渉を重ね、剣客として迎え入れてもらったのだ。
正直、こんなに上手くいくとは、自分でも思わなかっただろう? だから……笑え、笑うんだマリィ!
「あははははは」
私はタロスの拡声機能を切った。
ここから先の醜い私を、団長だけには知られたくない。
「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
そうまでして私が愛する団長と敵対した理由――それはおまえだよダフネ!
私は知っている。おまえが団長の寵愛を一身に受けていることを。
私は知っている。団長が格納庫のおまえを見つめる瞳が、私に向けられたものよりはるかに優しいということを。
私は知っている。団長が愛しているのは私ではなくおまえだということを!
団長が初めて乗ったタロスだからといって調子に乗るなよ。団長はな、世界最強の騎士なんだ。おまえのような旧世代のポンコツなど団長には相応しくないんだ。おまえに乗っているから団長は前衛に出ていけない。だからあれほどの騎士なのに有名にもなれない。ハッキリ言って足手まといなんだよ!
ゴールドソードの全身に流れるイコールに火を入れる。剣の切っ先を起き上がるダフネのコアに合わせる。
この一撃に私のすべてを懸ける。
……ダフネ。
ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ、ダフネ!
おまえさえいなければ団長は新型機に乗れる。おまえさえいなければ団長は私だけを見てくれる。だから――。
「団長と私の未来のためにここで死ねぇっ!」
ゴールドソードの限界を越えた一閃がダフネの胸元に飛び込んだ。
もともと白兵戦を想定していないブロンズボゥの紙装甲。純正ミノスのバスタードソードは易々とそれを貫通し、奥にあるコア抉り跡形もなく消し飛ばした。
――はずなのに!
さっきまでそこに居たはずのダフネの姿がなぜかない。まるで煙のように私の前から消え去ったのだ。
私は、悪い夢でも見てるのだろうか。
事実そうなのかもしれない。あまりにダフネが憎くて、憎くて憎くてたまらなくて、こんな不快な夢を見るほどにまで追いつめられていたのかもしれない。
「30点」
後ろからぞっとするほど冷たい声。私は慌てて振り向き半狂乱で剣を振り回す。
「本当は0点だが、隊長就任祝いのご祝儀査定だ」
団長とダフネが、いつの間にか私の背後に立っていた。
この殺気を孕んだ禍々しい魔力が夢であるはずもない。私はすぐに構え直してフルスロットの準備を整える。決闘中の事故に見せかけてダフネを暗殺するために、団長の忠告を無視してまで編み出した一撃必殺の剣技、ここで使わずしてどこで使う!
後先を考えずに全魔力を投入した超高速の刺突。今度こそ確実にダフネのコアを捉えたはずだった。
だが、またしてもダフネは私の視界から忽然と消えたのだ。
夢ではない。幻でもない。私の想像をはるかに超える事態が起きていた。
「俺は、おまえにそいつを使いこなせと伝えたはずだぞ。だが、今のおまえはそいつの性能に頼っているだけだ」
驚愕した。
ダフネを殺害すべく突きだした私の剣――その上に、あろことかそのダフネ自身が乗っているではないか。
ブロンズボゥの総重量が何十トンあるかは知らないが、剣の上に乗るダフネからはおよそ重さというものを感じない。まさか、
「――ッ!」
今までのお返しと言わんばかりに側頭部をダフネに蹴り飛ばされる。私は一時シンクロ率を下げることで人体へのダメージを軽減する。
「この程度のことでシンクロ率を下げるか。ピトナハの覚悟とはほど遠いな」
音もなく着地したダフネは土煙のひとつすら起こさない。
そこで確信した。にわかには信じ難い話なのだが、団長はあろうことかタロスの重力制御装置を切っているのだ。
生まれた時より星の重力に囚われている人類が機械による補助を介さず、自らの感覚のみで重力を支配することができるだろうか?
否、できるはずがない。すなわち団長は人ではない。
「くそッ!」
だからなんだというのだ。ラングフォード団長が人智を越えた怪物だというのは初めからわかっていた話。たとえ団長が怪物だとしてもダフネはただの旧型機だ。フルスロットルはもう使えないが装甲を貫くだけなら必要ない。急所に一撃当てさえすればこちらの勝利。ならば恐れず手を出していけ!
――キィン。
耳障りな金属音が戦場に鳴り響いた。
雄叫びと共に振り下ろした私の剣が、あろうことか根本からへし折られていた。団長が無造作に降った剣にあっさり打ち負けたのだ。
負けたって……そんな馬鹿な! この剣は純正ミノス製だぞ!?
「ミノスの声を聞くことができればこういう芸当も可能だ。おまえのフルスロットルはタロスの性能頼りの力業にすぎない」
もはや言葉の意味すら理解不能だった。
それもそのはず、私と団長では強さの次元がまるで違うのだ。
なぜ私は、団長の実力を私の倍だと見積もっていたのだろうか。実戦で戦うのは今回が初めてであるにも関わらず。
訓練機同士ではわからないこともあるとなぜ思い至らなかったのか。訓練でいちいち相手の武器を折るはずがないと、本当の意味で真剣に闘っていたわけではないと、なぜ気づかなかったのか。
「約束とはいえ、ゴールドソードなどくれてやるべきではなかったかもしれないな。やはりあれは欠陥機だ。余計な性能が騎士に機体への依存心を植え付ける」
漆黒の閃光が私のタロスを切り刻む。
一切の殺気の篭もっていなかった先ほどまでとは比較にならないほど鋭い斬撃。疲弊しきったこの機体でかわせるはずもない。両手足の関節部を切断され、私のタロスはあっけなく崩れ落ちた。
切断された四肢から魔力の尽きたイコールの不浄の朱が勢いよく吹き出す。
アストリアを震撼させたグラントの紅き魔女、鮮血のマリィの最期は自らの血で彩られる――か。まあ、当然の末路だろうな。
「……私の戦術は、最初から機体性能差ありきだった」
性能差を押しつけることばかりを考えて、タロスの操縦技術そのものを向上させることを怠ってしまった。ダフネがあまりに憎くて、あいつと団長に時の流れというものを見せつけてやりたいがあまりに。
……なんという失態。すべては団長の言葉どおりだ。どれだけ時代が移り変わろうとも、この世には決して変わらないものもあるのだとなぜ気づけなかったのか。
今さらながら、ゴールドソードを欠陥機と称していたナーサシスの言葉を思い出す。
あいつもやはり天才だ。この機体の必要以上のスペックを、当初から一貫して忌避していたものな。私も、彼女の放ったフルスロットルを力で潰した時に、己が間違った方向に進んでいることに気づくべきだったのかもしれない。
「ちっ、ぜんぜん思いどおりに動かねえ。やっぱり独りでの整備には限界があるな」
決着がついた後、団長はとんでもないことをぼそりと呟いた。
ダフネの整備を任せていた整備兵がアストリア戦争を最後に引退してしまったが、後任が見つからなかったのだろうか。それもそうか、ここまで改造され尽くされた機体に気軽に手を入れられる者がそうそういるはずもない。
つまり私は、整備不全のタロス相手に一方的に蹂躙されたというわけか。
団長は、私など及びもつかぬほどはるか高みにいる。一瞬でも勝てると思った私が愚かだった。
「普段なら、ここでおまえと闘うつもりなどなかった。こうなることがわかりきっていたからな」
「それでは、なぜ私との決闘に応じてくれたのですか?」
観念した私は、拡声器のスイッチを入れ直して訊く。
「ダフネが望んだんだよ。おまえの想いを受け止めてやれとな」
そんな気がしていた。
悔しい。やっぱり私のためじゃなかったんだ。
「私は団長のことが好きです」
タロスの師としてではなく、ひとりの女性として。
私は自分の想いを吐露した。これが最後になるかもしれないから。
「俺にはダフネがいる。おまえの気持ちには応えられない」
知ってた。だから怖くて口に出せなかった。
「私は今、ダフネさんへの嫉妬で胸がいっぱいです。こんなに醜い感情を抱くのなら、あなたのことを好きになんてなるんじゃなかった」
「誰かを想う気持ちに醜いものなどあるものか。愛することは何よりも美しい。おまえの中にあるその黄金、これからも大切にするといい」
まぶしい。
あまりのまぶしさに、眼がくらみそうだ。
団長、ようやくわかりました。あなたが私の瞳にこんなにも美しく輝いて映るのは、ダフネを心から愛しているからなのですね。
死ぬほど悔しいけれど、殺してやりたいほど憎いけど、私が大好きなあなたは、ダフネに乗っているあなただ。ダフネのことが大好きなあなたなんだ。
「命令だ、しばらくそこで待機していろ。後方の支援部隊が回収してくれる」
団長は勝ち鬨をあげると全軍に進軍命令を下す。
魔法で凍らせた河を渡ってシルバーソードの軍勢が続々と自陣に乗り込んで来る。もしかしたら『橋』を作るのに決闘を利用したのかもしれない。
はたしてシーリア軍は、この怪物の指揮するグラント軍を止められるのだろうか。これからのシーリアはいったいどうなってしまうのだろうか。
――どうでもいい話か。
国の行く末も、己の生命すらも、今は何もかもがどうでもいい。
私の夏は、もう終わったのだから。