もう死にたい……
……さようなら
俺はロープを首にかけ、踏み台を蹴った。
これでもう、この苦痛に満ちた世界から抜け出せる。
出来ることなら、ゲームの世界にでも転生してくれたら最高なのに。
そう思いながら、俺は意識を失った。
「おお、死んでしまうとは何事だ!」
突然、赤いマントで金ピカの王冠を頭に載せた、先っぽがくるんとなったヒゲを生やしたオッサンが、俺に語りかけてきた。
「しかたのないやつじゃな。お前にもう一度チャンスをやろう」
これは! 異世界転生キター?! のか?
「戦いで傷ついた時には、家に帰って傷を回復させるのじゃぞ!」
俺は? 勇者になるのか?
「再びこのようなことが起こらぬことを、わしは祈っておるぞ!」
その言葉を最後に、俺はもう一度意識を失った。
俺は、自室で目を覚ました。
そこには蹴り飛ばされた踏み台と、天上から吊り下げられたロープがゆらゆらと揺れていた。