セリフも地の文もどっちも重要
「んで、どこから攻める?」
「昨日おみくじ引いたら南が吉って書いてあったから、南で」
「そんな理由で……」
「えーっと、一番南の国は…ケイプ国か?」
「そこはまだハライズに攻められていない。一番南の戦線は、ケイプの2つ上。アラナス帝国だ」
「アラナス……でっけー国だなー」
「面積は世界4位だ」
「そうなのか」
「ってか、この人数で勝てるのか?」
「なんとかなるさー」
「バカだろお前」
ようやく地の文の出番である。
リザたちは、アラナス帝国に来た。
「リザさん!」
アズがリザの方へ走って来た。敵状視察の帰りである。
「ここから北におよそ2.2km!アラナス軍が駐留しています!」
「よぉし、いくか」
ここはアラナス軍が駐留している陣営で、北西から攻めてくるであろうハライズ軍を迎え討つように布陣している。ここから東に数km歩けば、アラナス帝国の本城、ラダス城があり、そこの最上階に王がいる。また、城の前には近衛師団なる組織が駐留している。城のまわりには大量の罠(主に地雷や落とし穴)が仕掛けられており、罠にかかった敵兵を一網打尽にする、という作戦だ。
「まあ、ここで止めるに越したことはないんだけどな……」
アラナス軍の先頭で、男が一人呟いていた。彼の名はルオ。軍の指揮を任されている。
「魔王軍(ハライズ軍のことね)はおよそ3万と聞いているが……」
こちらの軍には優に5万を越える兵がいる。その上、近衛師団も2、3万はいるようなので、こちらの勝ちはまず確定。そうルオは……いや、おそらくここにいる兵全員がそう思っているだろう。
この戦は勝ち戦。負けることなどありえない。ここで敵軍を一人残らず駆逐して、反撃の足がかりとする。それがこの戦の目的であり、存在意義だった。
「ここで潰す………」
ルオは虚空を睨みながらそう呟いた。
その直後、
「どーもぅ!皆、元気ー!?」
戦の場とは思えないような陽気な声が陣営に響いた。
「ルオ隊長!面会を求めたいと言う者がいます!通しますか?」
兵の一人が彼に尋ねた。
「……軍の者か?」
「いいえ、部外者です!」
「帰ってもらえ」
「はっ!」
部下がその旨を来訪者に伝えようと、来た道を引き返そうとした。しかし、
「まあ、つれないこというなよ」
来訪者は、すでにここまで来ていた。
「帰れ。余所者に話すことなどない」
ルオが落ち着いた声で追い払う。
「今回の戦は、勝てますかね?」
「まず名前から聞こうか」
「ああ、悪いね」
そう言って来訪者の男は軽く頭を下げる。
「シリァール界の魔王、リザ・シリァールと申しま〜す」
リザと名乗ったその男は、嘲るように笑みを浮かべ、手を差し伸べる。
「アラナス帝国、第二師団師団長……ルオ・ディラン」
ルオも同じように名乗り、彼の手を握った。
「んで、どうですかね?」
「余裕だ」
リザの質問に彼は短く答え、黒い短髪を軽くかき上げる。
「魔王軍はどう多く見積もっても3万……対して、こちらは7万の兵がいる。負けるはずがない」
「数が多ければ勝てる……ってわけでもねえんだよなぁ」
「なんだと……?」
「戦い方によって勝率は大きく変わる、と言っているのさ」
「我々の戦い方に文句があると?」
ルオが彼を睨んだ直後、
「ルオさん!」
部下の一人が叫んだ。
「敵襲です!」
「そうか。いい機会だ」
そう言ってルオは黒い陣羽織に袖を通す。
「来訪者よ、そこで見ているがいい。俺たちの戦い方は間違っていないと、ここで証明してやる」
「へー。そいつぁ楽しみだ」
リザは不敵に笑い、金色の髪をたなびかせた。
気がついたらセリフだらけになってました。これからは地の文多めだと思います