表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ただ、白く。  作者: 早狗間
番外編
4/4

ユキムラの話 後編

後編です!

だいぶ遅くなりました。

ああ、もう一度だけでいいから、君を俺の中に映して。

こんな願い、叶わないのはわかってる。

でも、俺はただ、願うことしかできないから。




眠らなくても生きられる世界。黒都市(ブラックシティ)は、そんなところだ。だから夢なんて、見られない。彼女の姿も、見られない。

彼女のいない世界で存在するということが、こんなに辛いことだなんて、知らなかった。どうせなら俺も連れて行ってくれ、なんて今更言うこともできないのだ。ただ願うことさえも、許されないのかもしれない。



「ユキムラ」

急なお呼び出し。背後からの声。声の主は、アマツ。

「なんだ、アマツ」

俺と正反対の、真っ白な髪の色。いつ見ても綺麗だと感じる。

「お前、最近元気ない。どうしたんだ」

俺の気持ちが周りに現れていたようで、全てを見透かされてしまったような気分になる。

「…そんなのアマツに関係ないだろ」

俺がどんな気持ちで、彼女のことを思っているのか知られたくはなかった。誰にも、だ。アマツにでさえも、知られたくはないこと。

「関係あるよ。お前の元気がないと、僕も元気がなくなる」

でも、アマツはそんな俺に、こんな優しい言葉をかけてくれて。俺なんかには、勿体無いよ。

「なんでだよ…なんで、アマツは、そんなに…」

優しいんだよ。

目が熱くなる。アマツをまっすぐに、見れないまま。俺の目は、涙で濡れていた。

泣いたのなんて久しぶりだ。アマツに気づかれてしまいたくはないから、顔を伏せ、腕で隠した。

「ユキムラ、何か辛いことがあるのなら、話してみろ。独りで抱え込むな」

でも、やっぱりアマツにはわかってしまったみたいで、少し恥ずかしくなった。

「ありがとう。でもいいよ。自分ではっきりさせないと、俺が変わらないままだから」

俺がそう言うと、アマツは、

「ああ、そうだな。応援してるよ」

と言って、俺の前から去っていった。やっぱりアマツは、俺のことを見透かしていたようだった。

もう、過去に囚われるのはやめよう。彼女はもう、いないのだから。

一度、瞼を閉じて思い浮かべる。彼女がはっきりと、思い出される。あの頃のままの彼女。当然だ。俺の記憶の中の彼女。

(変わらない、なんにも変わらない。)

自分自身の記憶の中で、俺の名前を呼ぶ彼女。それは暖かくて、もう思い出すことのできない、温もり。

雪村(ゆきむら)くん!』

もう名前を呼ばないで。

『雪村くん!』

頼むから、もう。

『雪村くん!』

彼女のことを思い出したくは、ないから。

彼女は俺の中でいつまでも、生き続けるだろう。俺が、忘れてしまわない限り。

もう彼女は死んでしまったのだ。彼女だけではなく、自分自身でさえも。

俺たちはもう、生きてはいないのだ。全て、忘れてしまおう。何もかも消し去って、これからまたこの場所で、存在していこう。

逃げる方法など、どこにもない、この世界で。


結局、俺の願いなど叶うはずもない。でも、もうどうでもいいから、どうなってもいいと、そう思うから。この世界に来て良かったと、そう思えるようになりたい。

あの頃の、彼女を好きだった自分を、無駄にしたくはないから。

今はもう、アマツとシキが笑っていても、昔のことは思い出さないよ。変わりに、俺の中には、幸せな2人が映るから。

自分のことはもう必要ない。俺は、十分だから。

だから、俺は願う。今度こそは、叶えてもらえるような。

どうか、神様。

2人がずっと幸せで、いられますように。



なんか書いたの久々すぎて、キャラ崩壊してますが、許してください。

気が向いたら、シキ視点でも書こうと思います。

こんなところまで、読んでくださってありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ