ユキムラの話 前編
前に書いた番外編と本編を一つにまとめさせていただきました。
アマツとシキ。この2人を見ていると、俺はどうしても生前のことを思い出してしまう。あんなこともう思い出したくはないと、何度も祈っているのに。
雪村静木 18歳
あの頃の俺は死にたくて死にたくて、堪らなかった。片目ずつ、色の違う目。それがどうしても、嫌だった。俺の1番のコンプレックスだった。
俺は、カラコンを入れて生活していた。それは学校にも知らせず、入学したときからずっと隠していた。俺がそこまでして学校に通うのには、理由があった。
中学のときの俺は、この目が原因でいじめられていた。学校を不登校になったくらいだ。それでも俺にはただ1人、大切な人がいたのだ。そいつは俺が学校に来なかった間、ずっと家に来てくれて俺に、学校に行かないかって何度も誘ってくれた。別に委員長でも生徒会長でも、なんでもなかった。ただの同じクラスの女子生徒だったのだから、不思議でならなかった。それから、学校に行くようになった。彼女と話をすることが何よりも、楽しかった。言うなれば俺は、彼女と話をするために学校に通っていたようなものだったのだろうか。休むことは、あった。だけれど、高校に行けるくらいには学校に通った。彼女と同じ高校に入学したいと思った。もっと話をしたかったからだ。
それから、彼女と同じ高校に無事入学することができ、その頃の俺は舞い上がっていた。そして高校で友達ができ、俺は幸せだった。あの頃の俺はきっと、彼女のことが好きだったんだと思う。でも、この想いは彼女に伝えることができなかった。
彼女は、死んでしまった。家族と一緒に車に潰されて、死んだ。交通事故だった。
それから俺は生きる希望を失くしたのだ。そして俺は自ら命を絶った。
ーそして今、ここにいる。
アマツとシキを見ていると、あの頃の俺と重なって、胸が苦しくなる。どうやら死んだ今も、彼女への想いは消えないようだ。
どうせなら記憶さえも奪ってくれ、と何度願ったことか。でも、叶うことなどなかった。あるはずがないのだ。記憶さえも代償で、この傷は消えない。俺の中にあるこの傷は永遠に、消えない。
どうしてだよ。
もういいだろ。
俺だって、嫌なんだよ。
死んでるけど、死にたいよ。
消えたいよ。
俺はどうしたらいいんだよ。
俺はどうすればいいんだよ。
そんなこと祈ったって、無駄なのに。
でも、祈ってしまうのだ。
もう一度、彼女と話がしたい。
なんでもない話を、もう一回したい。
この気持ちを伝えることが出来なくてもいいから、お願いだ。
「この願いを叶えてくれ…!」
後編まで気長に待っててくださると、嬉しいです。