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ただ、白く。  作者: 早狗間
本編
1/4

ただ、白く。 前編

この世界は、ただひたすらに真っ黒だ。

前に進みたいのに、黒くて前が見えない。

いつになったら、この世界から逃げられるのだろう。

今日もまた、この世界が黒に染まってゆく。



ここにきた時から、ここは普通ではないと感じていた。震えるような恐怖と、あり得るはずのない違和感がここにはあった。

僕はちゃんと、死にたかっただけなのに。

真っ黒の世界の中で、僕は今日も存在しなければならない。これは、死にたかった僕への罰なのだ。

首につけられた首輪、そこから伸びる管。それを身につけた時から、僕への罰は始まっていたのだ。

白い髪に真っ黒い目、そして右目を覆う包帯。そんな見た目の所為で、この世界でも仲が良いと呼べる友人はできなかった。あいつ以外は。

「なぁ、」

あいつは僕の名前を呼んだ。

「なんだ、ユキムラ」

黒い髪に、オッドアイの目。でも、ユキムラは誰から信頼されている。そんなユキムラが羨ましくもあり、妬ましくもあった。

ユキムラは笑みを浮かべた表情で、口を開いた。

「今日、新しい奴が入ったんだ。アマツ、お前暇だろ。ちょっと見てきて欲しいんだ」

なんだ、そういうことか。

「なんでだよ、お前の仕事だろ」

ユキムラは新人担当のそこそこ偉い人でもある。

「いや、今日ちょっと用事があってさ」

絶対嘘だろ、と僕は思う。何故なら、ユキムラの表情が嬉々としているからだ。

でもまぁ、ユキムラの頼みな訳で。

「興味が無いこともない」

「アマツは素直じゃないなぁ。まぁ、いいけど。じゃあ、後は頼むよ、上手くやっておいてくれよ」

「あぁ、上手くやってみせるさ」

ユキムラは嬉々とした表情で、僕の前を去っていった。

僕もそんなユキムラを信頼しているのだ。


今から会う新人は、“チカゲシキ”という名前の女なのだという。それは、人間界から送られてきた、“ヒトの魂”だ。きっと彼女も自殺したのだろう。

僕も同じだから。

人間界で自殺した人の魂は、ここ"黒都市"に転送される。そしてここで、終わりのない世界を味わうのだ。

この世界は永遠で、僕らに与えられた罰なのだ。

僕は、淡々と歩く。管が引っかかって、邪魔くさい。

ここは静かで、黒くて、何もないみたいだ。

そんなことを考えていると、あっという間に"新人収容所"の前に来ていた。

「ここか」

と、声を漏らし、少しばかりここに来た時のことを思い出す。直ぐに思い出すことをやめた。

この部屋は“黒都市”の始まりの場所、開けてしまったら、もう逃げられない。

後編に続きます。

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