必死の攻防
なんなんだよ、これは!
俺は今鋭く繰り出される剣技を受け止めことだけに精いっぱいだった。
それが起こったのは突然だった。
リディアとリリアナととも人でにぎあう街に出かけたのはいいもの、リリアナはいつも懇意にしている店の亭主に呼びかけられて一人で行ってしまった。
手持無沙汰なアデルとともにほかの店を冷かしていた。
「ちょっと、お嬢さん。ほらまたふらふらしてるって!」
少し目を離せばアデルはなぜか路地裏の方へと入って行ってしまっている。
あとで送り届けるつもりではあるが、いいところのお嬢さんをこれ以上危険な目に合わせるわけもいかないのでひやひやしていた。
「わりぃけども、俺とちょっとの間手を握っていてもらってもいいか?あんたどこにいくかわかんねぇんだ」
「まぁ、ごめんなさい。気が付かなかったわ」
そういって躊躇なく俺の手にアデルの手が滑り込んできた。
年甲斐もなくかわいい子と手をつなぐことになり少しだけ照れる俺だったのだが、さきほどから背後では「あれ何?」「何で剣を引きずってんの」「かっこいい!」という声に気が付かなかった。
「ちょっと、兄さん!なんでアデルさんと手をつないでんのよ」
亭主との話に区切りをつけたリリアナが、俺とアデルが手をつないでいるのを目ざとく気がついて焦りながら戻ってきた。
「別に下心とかねぇよ、この嬢ちゃん目を離すとどっかいってしまうからな。しょうがなくだ」
ほんのすこしの下心を隠しつつリリアナに言うがさっさと離しなさいよ!と力ずくで離そうとしてきた時だった!!
瞬時に殺気を感じた俺はアデルとリリアナを押し、飛びのいた。
さっきまでいた地面には短剣が突き刺さっている。
まさかアデルをさっきかどわかそうとしていたやつらがまた来たのか?
そう思って探検が投げられた方を向けば一人の男と子供が立っていた。
だが注目すべきは男の方だろう。
ここらでは見ない男だが整っていたであろう金色の髪を少し乱しながら、その端正な顔はまったくの無表情だ。
だがその背後からにじみ出る殺気に只者ではないと感じる。
いつの間にか俺のすぐそばに来た男はもっていた抜身の剣で振りかざしてきた。
俺もこれでも騎士としては実力がある方なのでその剣技を止めたが、重い…
反撃する暇を与えない鋭い剣技に防戦一方の俺だが、何より息切れひとつ見せないその無表情がよっぽど怖い。
アデルとリリアナの様子も何とか確認するが男と一緒にいた子供が二人と何か話している程度で往来の客も急に始まった勝負に見入っている。
「おい兄ちゃんがんばれ!」だの「きゃあ、あの金髪の人すごい!」「あんな男やっつけちゃえ」とか言っているが俺への声援すくなくねぇ?
けどいつまでもこの件を受け止めてもいられない。
大きな傷はないが繰り出される剣技により俺の身体は擦り傷だらけだ。
なんとか反撃してみても簡単に抑えられてこっちが危なくなる。
なんだよ今日は厄日かなにかかよ…
ちょっと気がそがれた時、俺の剣は飛ばされてしまった。
おいおい!
俺の頭上で剣が振り翳され、斬られると思った、が…
「そこまでです。これ以上はなりません」
止めに入ったのはあの子供だった。
ピタリと止まった剣に俺は知らずの安堵の息を吐いた。
何とか助かったようだ。
「ここでなんですので、リリアナさんの家にお邪魔させていただくことになりました。剣は納めてください」
驚いたことに男は子供にそう言われて、無言のまま剣を収めた。
さぁ、行きましょうかといわれ何が何だかわからないまま俺たちは歩き出した。
けど子供とアデルが手をつないで歩いている。男は無表情のままじっとそのつないだ手に視線が注がれていた…怖い!
一緒に母親を探す父と息子
ヴァルド「…父様、ここは往来なので剣を抜いて引きずらないでください」
ジーク「…すまん、抜いているとは思わなかった」
ヴァルド「短剣でも遊ばないでください。どこぞのヤンキーですか」
ジーク「すまん、勝手に手で遊んでいたようだ」
ヴァルド「父様、僕でよければ手をつなぎますか?母様がいなくてさびしいのでしょう。朝までなら母様と僕、手をつないでいましたから」
ジーク「…間接的な何かで満足できるほど、俺はそこまで堕ちていないぞ…まぁ迷子にならんようつないでおくがな」
ヴァルド「(ジークを見上げる)…父様」




