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嫁ぐ前の日


それはアデルが嫁ぐ前日のことであった。



「つまり殿下といえども高潔ではないのです。殿下も下心の塊なのですよ」


セイルはアデルに向かってジークとはについて話していたことから始まる。


「そんなはずはないわ。殿下はお素敵な方よ」


「姉さんは何もわかっていません。物語などの出てくる男と殿下を同じにしてはいけません。男というものは、口に出す言葉以上に多くのことをその胸に秘めているものなのです」


「深い話ね。私そんなこと全く知らなかったわ。なら、殿下もいろいろ想いがあるのでしょうね。あまり言葉にされる方ではないですし、これからの結婚生活の中で分かち合えるといいのかもしれないわね」


アデルはほほを少し赤らめながらはにかんでそういったが、セイルは首を横に振った。


「そんなことで分かり合えるものではありません、姉さん。それに殿下はどう考えてもむっつりオオカミです!」


「殿下がオオカミ…?」


しっくりとこないアデルは首をかしげた。


「そうです、男はオオカミなのです。そんな男の前にのこのこ出ていけば姉さんなら確実に簡単に食べられてしまいます。その上殿下はむっつりさんですから…」


「むっつりさん…?まぁ、殿下は私を食べてしまうのね。どうしましょう、私おいしいのかしら?」


「姉さん…物はたとえです。それに殿下なら姉さんのことを何度でも食べてしまいたいほどのごちそうに見えているはずですから大丈夫ですよ。そんなことより不安な姉さんに渡したいものがあるんです」


セイルから渡された本を受け取ったアデルは首をかしげた。


「この本がどうしたの?」


「姉さんここに出てくる陛下は殿下そっくりです。僕も読んでみましたが、行動やら思考が殿下によく似ておりますし、これを読んで男心というものを理解されればよろしいかと」


「殿下の考えがよくわかる本なのね。私、勉強いたしますわ!!殿下のお気持ちを理解できる妻になって見せます」


本を胸に抱きしめアデルは良き妻になろうと決意した。


「その調子です。姉さんならうまくいきますよ」


セイルもそんな姉を見て拍手しながら応援した。




「……そして今に至ったというわけですね」


「おい、回想の中で何やら俺のことを下心の塊だとかほざきよったな。それに奇跡のようにアデルが至極当然な発言をしていたのだが……なぜ本を渡す!」


「姉さん並びに義兄さんのためを思いました」


「セイル、嘘でもいいから陛下にごめんしようか」


悪びれもしないセイルに一応ユーグが謝るように促した。


「いたしかたありません。…義兄さんごめんなさい」


「謝るのは後だ。俺が貴様を切りつける前にアデルを何とかしろ!!」


そして今、セイルはアデルの部屋に入っていったまま周囲をやきもきさせているのであった。


ジーク「だからか!」


ルイ「何がですか?」


ジーク「そのなんだ…初夜の日にアデルが塩や胡椒を部屋に準備しておった」


ルイ「……おいしかったですか」


ジーク「……」


ユーグ「ごめんね、本当に純粋なんだよ俺の妹」


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