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星影の誓いを君と  作者: りん


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13/21

13. 生きたい者が生きられない世界




「やめてくれえええ!!!」


「…」


ゼフィアンがそっと手を伸ばし、星のかけらに触れた瞬間、リドルから高温の蒸気が噴き出す。

「…!あっつ!」


すかさず後ろに下がり、思わず手を振って熱を振り払う。

床に立ちこめる白い蒸気の中、リドルの目がうっすらと赤く点滅する。


「ガチッ、ギィィ…!」


火花を散らしながら、リドルがぎこちなく動き始めた。


「ゼフィアンさん、危ない!」


ハイマが焦った声で叫び、ゼフィアンの腕を強く引いた。

リドルの体からは、再び蒸気が噴き出し、白い煙となって一気に室内を満たしていく。


「げほ、げほ…え」


「アドニスさん?戻られましたか?」


「うん、これは…火事か?」


「リドルの体から出る煙が濃くて、姿が見えないんです。いったん離れましょう」


その瞬間、地面が不気味に揺れた。

煙の向こうから何かを壊す音が聞こえる。


「リドル!リドル!!」


フレッドが這うように床を進み、リドルの元へ向かおうとする。


「危ないですよ!」


アドニスがフレッドの体を支え、一気に抱え上げて部屋を後にした。

振動に合わせて、壁のパネルが外れ、機械の棚が一つ、また一つと倒れていく。



「はあ、はあ…」


3人はなんとか中央公園の方まで走り切り、息を整えた。

アドニスが、フレッドの肩をしっかりと掴み、その瞳を覗き込む。


「どういうことなんですか、なぜリドルはあなたを発電所に連れて行ったんですか」


「…」

ただ口を引き結び、視線を逸らす。


「アドニス!ハイマ!」


その沈黙を破るように、フローラの声が公園に響いた。

「無事に救出できたのね、良かった」


「ああ、うん…」


「…とりあえず、アドニスさんの腕のケガを」




宿屋の灯りの下、包帯を巻きながらアドニスが語る。


「…ということで、僕らはリドルの動力源である星のかけらを求めてこの町に来ました」

部屋の空気が重くなる。


「今、世界はそんなことになっているのですね…。虹色の雪のこと、何も知りませんでした」


「ベル」

フレッドは冷たい声で娘の声を遮った。


「旅人さんの事情は分かりました。しかし、リドルを死なすわけにはいかない」


「…なぜ?」


「リドルは大切な、子どものような作品なんだ。あなた達に協力するということは、リドルを殺すことになる」


「…はあああ??」

フローラが心底あきれたように話す。


「ベルさんってあなたの娘じゃないの?世界をこのままにしていたら、リドルだけでなくベルさんも危険な目に合うのよ」


「それでも」


「ふざけないでよ!ロボットと人間の命を天秤にかけて、ロボットを選ぶっていうの!?」


アドニスがちらりとベルの方を見る。

ベルは、涙も流さず、蒼白な顔で静かに床を見つめていた。


「すまない、少しお手洗いに」

フレッドが空気に耐えきれなくなったように、足早に部屋を出ていく。


「…ベルさん、すみません」


「いえ、気にしていないので」


「ベルさん、あなたのお父さんは何を考えているの?なぜ、あなたよりもリドルを優先するの…?」


「…私は、父と血がつながっていません。母と、母の不倫相手との子で…」

静かな口調に、重たい真実が落ちていく。

「私は母に見捨てられ、ここまで父の援助のおかげで生活してきました。父は、血の繋がらない私よりも、1から自分で作り上げたリドルを自分の本当の子だと考えています」


「…あ、ごめんなさい、そんな」


「いいんです。…お願いがあるのですが、聞いてくれないでしょうか」

アドニスの治療を終えたベルは、立ち上がって3人に頭を下げた。


「どうか、父の」

「ベル、館長が呼んでいるぞ」


「ああ、うん。では、本日もお休みになってください」

そう言い残し、彼女は静かに部屋を後にした。


「娘が何かおっしゃいましたか?」


「いいえ、腕の治療をしていただき、助かりましたと話していたところです」




「…」

3人は黙々と夕食を食べていた。


「明日、僕は発電所に行く」


「…私も行く」


「僕も行きます」


沈黙の中で、決意だけが確かに交わされた。



まだ朝焼けが町を照らしきらない時間。

3人は準備を終えて静かに部屋を後にした。

宿屋の玄関を開けると、目をこすりながらあくびをするベルが立っていた。


「きゃああ!…びっくりした…」


「しーー!静かに!」


「旅人さん…どこへ?」


「もちろん、発電所よ」

フローラはベルの肩をポンと叩いて小さくあくびをした。



3人は例の部屋へと到着した。


「なかなか荒れてるわね」

瓦礫と焦げた匂いが、昨日の混乱を物語っている。


「アドニスさん、リドルがいた位置に穴が開いていますね。あの下にいるのでしょうか」


「こっちの扉は、さらに下に続く階段だ。穴に入るよりもこっちの方が安全そうじゃないか?」


「旅人さん」


「…っ!フレッドさん…」

声のする方を振り向くと、フレッドが穏やかな顔をして立っていた。

昨日の様子とは違って、発電所を調べても止める気はないようだった。


「部外者が申し訳ありませんが、世界のために行かなければならないのです」


「…構いません、あなたにリドルは倒せない」


「なぜですか?」


「この地下深くには、強大な魔力が眠る泉がある。リドルはその力を求めて地下に向かったに違いない。その力を使えば、リドルは立派な生物に生まれ変われる」


フレッドの顔に、狂気とも取れる笑みが浮かぶ。


「それまで、リドルは私が守る!」


その背後から、複数のロボットが一斉に駆け出してきた。

鎌、包丁、鋭利な工具を手に、無言でこちらに突進してくる。


「フローラ!ハイマ!こっち!」


逃げるように階段を駆け下りてロボット達から距離を取る。


「リドルが泉に触れる前に止めないと、きっと僕らでは太刀打ちできない。急ごう!」



「待てええええ!!!」

ロボットたちが階段の上から次々に転がり落ちてくる。

無鉄砲に突っ込んでくる攻撃を見て、ロボットを大切にしているようには到底思えなかった。


「アドニスさん、階段がどんどん崩れていきます!」

階段の壁面には古びたレンガがむき出しで、不揃いに積まれていた。

ひとつ崩れると、まるでドミノ倒しのように周囲の段差が次々と崩落していく。


「がれきが落ちてくる前に降りてしまえば関係ない!足元しっかり見て!」


アドニスは手すり代わりのパイプをつかみながら駆け下りる。

上方からは瓦礫と共にロボットの部品が降ってくる。



「はあ、はあ、はあ…」

ようやく階段を降りきると、背後で崩れたがれきが出口をふさがれ、もう後戻りはできない。

フレッドの姿も、あの混乱の中で見失ってしまった。


「はあ、私たち、こんなことしてる場合じゃないのにね…」


「そうだね、だからこそ、急がないと」

アドニスは額の汗をぬぐい、前を見据えた。



発電所の地下一階はまだ人の手が入っている様子だったが、地下二階は長い間放置された倉庫のように荒れ果てていた。

誰もいないはずの廊下で、ふと遠くから話し声が聞こえた。


「…誰だ?複数人いる、リドル以外にも誰かがいる」


廊下を曲がると、半開きになったドアを見つける。

部屋の中からは照明の光が漏れ出し、男女の声がそれぞれ聞こえた。


「あっ…!」

ハイマの足が、床に転がる鉄パイプを引っかけた。

乾いた金属音が、やけに大きく廊下に響き渡った。


「誰だ?」


即座に鋭い声が返ってくる。


「すみません、この辺りにロボットがいると思うのですが、知りませんか?」

アドニスがとっさに答え、気配を探るように部屋をうかがう。


「ロボット?なぜだ?」


「この施設の方に頼まれて、暴れたロボットを止めるために探しているのですが…。あなた方はどなたですか?」


「…」

質問に答える代わりに、ドアの隙間から照明に映った影が伸びてくる。

きしむドアの音とともに現れた男は、アドニスと同じようにしっかりと武装をした騎士のようだった。

背に大剣を背負い、短く整えられた茶髪と鋭い瞳が、戦場を知る者の風格を漂わせていた。


「…アドニスくん?」


「…え?」

アドニスがわずかに目を見開いた。




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