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星影の誓いを君と  作者: りん


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11. 期待と希望が眠る町ギアハム




10年前。


「母さん!空の色がどんどん変わってく…ウィンが、もしかしたら!」


「…本当に?ウィンが、ついに倒したの?」


「うん、たぶんそうだと思う」


数か月前から続いていた黒い霧の異変を解決するため、ウィンは仲間とともに旅立っていた。

そして、霧が晴れてから数日後、ウィンは馬に乗って、ナリア村へ帰還した。


「ウィン!おかえり!」


「アドニス兄さん!!会いたかったよ…!」


2人はしっかりと抱き合った。



ウィンが魔王討伐を果たしたということで、村全体が祝いの空気に包まれ、お祭りを開くことが決まった。

アネモネの花畑に設営される会場の準備をアドニスも手伝っていた。

そのとき、


「ん? あれ…流れ星?」


村人の1人が空を指さした。


「え?」

アドニスがその指先を目で追うと、何かが彼の方へまっすぐ落ちてきた。


「うわっ!」


落下してきたそれはアドニスの目のすぐ横をかすめ、こめかみに鋭い切り傷を残した。


そこから数十秒、記憶がない。




「その時から、頻繁に記憶をなくすようになっていった」


「どうして、それを言ってくれなかったの」


「自覚がないんだ。村の人に聞いても異変はないと言われて、軽い記憶障害だろうと思っていた」


「…ノスアス洞窟でセイランをかばった時、フォグリス遺跡の中で魔物に攻撃された時、そして、さっき人と肩がぶつかった時」


フローラは今まで見てきたアドニスの行動を思い出した。

「あなたが記憶を無くしている時、あなたは人が変わったような行動ばっかりしていた」


「…そうなんだ」


「言葉遣いが悪くなって、急に力が強くなって、魔物をどんどん倒せるようになる。さっき気づいたけど、目の色も変わっているような気がする。異変がないなんて、それはあなたか何かを守るための嘘ね」


「…」


「今、あなたは、もう一人の人格は…」

フローラは言葉に詰まったが、話を続ける。


「私の母親の名前を挙げた」


「…え?」

アドニスもハイマも驚く。


「あなたの、頭の中にいるもう一人の人格は、私の母親と接触したことがある、かもしれない」


「…」


「あの!」

ハイマが口をはさむ。


「今の話と先ほどの出来事を見て、アドニスさんが体に何らかの衝撃を受けると人格が変わる可能性があるんじゃないかなと思ったんですけど…」


「なるほど…確かに、痛みを感じた瞬間に意識を失っていた気もするかも」


「ちょっと待って、今ビンタしてもいい?」


「え、ちょ、まだそうと決まったわけじゃないだろ!」


「お願い!一回だけ!」

3人の間では真剣な話だが、傍から見ればふざけているようにしか見えなかった。


「分かった。ギリギリの強さにしてくれ」


「…」

フローラは、思い切りアドニスのほほを叩いた。


「いったい!変わった!変わったから腕下ろしてくれ!」


「本当に変わったんですか?パッと見分かりませんね」

ハイマがアドニスの顔をのぞく。


「ほら!目!目を見ろ!」

目を見ると、みるみるうちに黒目が白く濁り始めた。


「手短に話す」


見た目はアドニスだったが、しゃべり方が別人のようだった。

「俺の名前はゼフィアン。多分だけど、アドニスの曽祖父に当たる人間だ」


「ええ!?そうだったの!?」


「魔法使いと人間の戦争があっただろ?その時に死んだはずなんだが、いつのまにかこいつの体の中に」


「…なぜ、人格が?」


「どうしてこいつと人格が入れ替わるのか分からん。森の中で1人の魔法使いを見つけて、肩に矢を受けていたから手当てして、そこまでは覚えている。やれることもないし、暇つぶしに俺を殺した犯人を捜してる。まあ、俺の事は気にしないでくれ」


「私の母、ディーテがどうなったか、覚えてない?」


「すまんな、あんまり覚えてない。思い出したらまた言う…はっくしょん!…ああ」


「…久しぶり」


「…なんて言ってた?」


「もう一人の人格は、あなたの曽祖父だったわ」


「…えええええ!?」



3人は歩きながら今起きた出来事について話し合っていた。

アドニスは記憶が残らない一方で、ゼフィアンはある程度の状況は把握していたことから、裏の人格はすべてのものが見えているということ、今までの行動からゼフィアンはかなり好戦的で攻撃的な、アドニスとは真逆の人間であること。

そして、くしゃみや咳など、何かしらの身体的反応があると元に戻ることが現状として理解できた。


「じゃあ、僕はこれからひいおじいさんと生きていくのか…」


「ま、そうなるわね。とりあえず弟さんを止めてから今後のことを考えましょう」


「そうだな…あ、あれがギアハム?」


町中にパイプが張り巡らされ、蒸気があちこちから噴き出している。

歯車が回る音がどこからともなく聞こえ、空には小型の飛行機械が飛び交っている。


「わあ、すごい…」

ハイマが目を輝かせながら町を眺めていた。

虹色の雪は健在だが、異変に負けない村の活発さが印象に残る。


「今日のところは一旦休憩しよう」

宿屋へチェックインを済ませ、中を散策していると、ロボットがかわいらしく宿屋の中を歩いていた。


「うわあ!すごい!ロボットが動いてる!」


「あら、この子が気になる?」

若い女性がハイマに話しかけてきた。


「すごいですね、どうやって動かしているんですか?」


「町の中央にある発電所の電気を使って動かしているのよ。この子は私のお父さんが作ってくれた配膳ロボットさんなの」


「へえ、電気で金属を動かすことが可能なのね」

いつの間にかフローラも興味を示していたようだった。


「そうだ、明後日町でお祭りがあって、新技術を使ったロボットお披露目会があるんです!観覧だったらいつでも出来るので、時間があればおすすめですよ」


「ええ!アドニスさん、明日見に行ってもいいですか!?」


「全然いいよ。ハイマはこういうのに興味があるんだな、いいねえ」


「えへへ…」




翌日、3人は中央広場に向かった。


「わあ…ここの町はすごいな」

様々な形、大きさのロボットが展示されていた。

ハイマのように機械に興味がある子どもたちがたくさん町に訪れているようで、とてもにぎわっていた。


「ん?あそこ、たくさん人が集まってるね」


広場の中央の人だかりに向かうと、他のものよりもひときわ大きくてきれいに塗装されたロボットが展示されていた。

「アドニスさん、この説明…」


脇に置いてある説明書きを読んで、3人は目を見開いた。


『護衛ロボット「リドル」 核の部分に、新発見した魔力を持つ鉱石を使用することで、半永久的に動かすことができる新ロボットです』


「魔力がこもった鉱石…ね。まさか」


「あ、昨日の旅人さん!また会いましたね」

昨日宿屋で出会った女性が手を振って歩いてきた。

隣には彼女の父親らしき人が歩いていた。


「このロボットを作ったのは私の父なんです」


「初めまして、フレッドです。ベルの宿屋のお客さんですか」


すかさずハイマが口を開いた。

「あの!この説明の鉱石ってどういったものなんですか」


「ああ、たまたま町のはずれの鉱山で見つけたものでね、どの資料にも情報が載っていない不思議な石だったんだ。もうリドルの心臓部に入れてるんだけど、ちょっと開けて見せてあげようか」


腰につけたポーチから工具を取り出し、慣れた手つきでロボットの心臓部分を開けると、プレートの中に輝く何かが見えた。


「明日の祭りの大目玉だ。これこれ!きれいな石だろう」


「…そうですね」

予想した通り、アドニスの首にかかるペンダントのものとそっくりだった。




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