お気に入り
「今日も本読んでる。」
「はい。持ってきたわよ。」
「ありがとう。ん?本?」
「そう。前に会ったときあなた用の本を持ってくるって言ったでしょ?」
「覚えてるよ。読んでみるって────」
「絵本じゃん!?!?」
「そうよ。全部ひらがなだし、読みやすいでしょ。」
「読みやすいって。さすがに絵本くらいは。」
「それに結構使い古されてるじゃん。」
「あぁ。ごめんなさい。私のお気に入りの絵本で小さいころから読んでたから。」
「確かにボロボロね。今でもたまに読んでたから気にしてなかったわ。」
「絶版ってわけじゃないから新しいの買ってくる─「これがいい。」
「え?」
「君の大事な本なんでしょ?だからこれがいい。新しいのなんていらない。」
「これがいい。」
「わ、わかった。」
「じゃあ読もうかな。」
「わ、私も続きを。」
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「ふー読んだ読んだ。」
「どうだった?」
「すんごい面白かったし俺も気に入った。てかお姫さまが王子さまを助け出してそのあとの二人の掛け合いがまた涙を誘うっていうか感動したんだよねー」
「そうなの!ここでお姫さまが王子さまと────」
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「だからこの絵本が好きなのよ!小さいころは泣きながら何回も読んで─」
「へぇ。そうなんだ。」
「!」
「ごめんなさい。私ったらずっと話してて。本のことになると止まらなくて。」
「あなたが私の大好きな絵本を気に入ってくれたのが嬉しくて…」
「俺は君がたくさん話してくれて嬉しい。」
「え?」
「君がこんな風に可愛い顔して話してくれるなら」
「俺も本読もうかな。」
「!?」
お気に入り
「じゃあ500ページ以上のミステリーはどう?」
「………絵本からでオネガイシマス。」