6. 魔術の練習とお国の話
予想よりも長くなってしまいました!
すみません!
ヴェールの国の話が出てきます。
「素晴らしいです!ヴェール様!」
誰か、この状況を説明してください。
…まって、一旦状況を多少整理しとくわ。
だからちょっと状況説明してくれる人待ってて!
…えーと、私は〜、光を放つ魔術―主に暗闇で重宝する魔術―を使いましたねぇ?
それでー、もっのすご〜く光ったんですねぇ?
そしたらー、ローシェンナにものすご〜く褒め称えられているんですねぇ。
あ、うん、ごめん。状況説明してくれる人いらなかったわ。
自分でゆっくり頭の中整理したらなんとかなったわ。
というかさっきからローシェンナの称賛の声がすごいよ。
最初の方は良かったけど今はもう、うるさいだけなんだな。これが。
「えっと、ありがとう。
ローシェンナ。他の魔術についても教えてくれる?」
私はそう言って、とりあえず一か八か話題を変えてみることにした。
「え、はい!わかりました!
次はですね、水属性魔術ですね。
生命の源たる海よ
その御力のほんの一欠片を我が手に!
マォン!」
あ、話題変わったわ。
いやローシェンナ、メリハリ完璧か!
というかマォンてどっかの国の言葉で水って意味だったよね。
へぇ〜。マォンはおおよそコップ一杯分の水を片手にだす魔術なのね。
よし!
危なくなさそうだしやってみよう!
「生命の源たる海よ
その御力のほんの一欠片を我が手に!
マォン!」
……え?え?なにこれ?これ何?
全然コップ一杯程度じゃないんですけど。
タライ一杯分は余裕でありそうな気が...
そう、私がマォンで出した水はものすご~い量だったのだ。
ちょっとやばい気がしたのでローシェンナを見ると口をぽかんと半開きにしていた。
うん。これ普通じゃないね!知ってたよ!うん!
というかこの水どうしよう。消えてって言ったら消えてくれるかな。
まぁ試して見る価値はあるからやってみよう。
私は強く水に消えてと念じた。
すると魔術を行使した際に使った魔力が戻ってくる感覚がして水が消えた。
いや、私の手のひらに吸収されたと言ってもいいかもしれない。
だって私にはそう見えたから。
「素晴らしいです!ヴェール様!
貴方様には魔術の才能がございます!
では次は火属性魔術です。
その次は風属性魔術を。
その次は土属性魔術をお教えしまね。
それでは火属性魔術です。
すべてを包み込む慈愛の炎を我が手に!
トルシュ!」
え、あ、うん。ローシェンナは私が次にどんなことやらかすのか期待してないかな?
というかさ、火属性魔術って火を生み出すんでしょ?
危なくない?
そう考えた私は、魔術を行使する際に使う魔力の量を調節できないかと考えて詠唱をするときに出ていく魔力を最小限になるように念じながら
「すべてを包み込む慈愛の炎を我が手に。
トルシュ!」
と唱えた。
すると右手の人差し指に小さな炎が生まれた。
「や、やったよ!
ローシェンナ!
私、どうにかして魔術に使われる魔力が少なくなるように念じていたらなんとかなったよ!
…え?ローシェンナ?
そんな顔しないでよ...
だってさ、火って危ないじゃんか。
さっきみたく何も考えずにやっていたら家事になっちゃう気がしたもん。
勘がさ、魔術の力を抑えろって訴えかけてきたんだよ」
うれしくて思わずローシェンナの方を見たら
「わたくしの教え方が行けなかったのでしょうか?そうでなければヴェール様が生み出す炎がこのような種火みたくなるはずがありませんもの...」
とかぶつぶつ呟いて明らかに落ち込んでいるようなだったのでローシェンナのせいじゃなくて、自分が望んでやったことだと言ったら
「そうだったのですか?確かにわたくしは火の危険性について考慮しておりませんでした。
それよりもヴェール様!素晴らしいです!
魔術を行使する際に消費する魔力を少なくできるなんて!
これは世界が変わってしまいます!
あ、あとそれと...」
といってきた。そして私をものすごく褒め称えたあと、明らかに言いにくそうに、どもったので
「どうかした?」
と言って続きを促してみる。
「はい。じつは先程の魔術を行使した際にほとんど魔力を使い切ってしまったのです。
ですので、今日、もしものことを考えて用意したこちらをご覧ください。
こちらは今日貴方様にお教えしようとした魔術の呪文です。
本当に申し訳ございません。
これしかお力に立てることができなくて。
あ、そうです。
ヴェール様、人間の魔力量が増える時期を知っていますか?
それは16から20になるまでです。
貴族は魔術や魔法を行使して国を守ります。
そのための力を養うものが学園だということは知っているでしょう。
そして学園の実技や座学に魔力科が追加されるのは学園の高等部からです。
学園の高等部には編入試験がございます。
その編入試験は一ヶ月後です。
もちろんわたくしのような家から勘当された元貴族でも平民としてうけれますわ。
ヴェール様、どうか高等部に編入していただければと存じます。
そうすれば、公爵家を絶対にぎゃふんと言わせられます!
わたくしはヴェール様のご移行に従いますわ」
おおう。何かを言おうとしたのを催促しただけなのにすごいよ。
学園の話が出てきたよ。あと魔術の呪文一覧。
この学園というのはこの国――クロムダイオプサイト王国――にある王立学園、フローライト学園のことだ。
ちなみにこの国では最も高貴な色は淡緑色や濃緑色だ。
なぜならこの国の国名、クロムダイオプサイトは淡緑色や濃緑色の宝石だからだ。
この王国ではクロムダイオプサイトを身につけられるのは王族のみ。
というか王族は淡緑色や濃緑色―深緑のこと―の髪色で瞳はだいたいが白緑色だ。
あれ?なんか私、王族と髪色似ていません?
ヴェールって濃緑色に似ているし...
あ、でも瞳は違うんじゃないかな…
ほら、藤の花の色と白に近い薄緑ってどこからどう見ても違うでしょ。
色のもとになったのは同じく自然からだけど。
あとこの国には公爵家が5つある。
うち一つがスカーレット公爵家。
他の公爵家と比べて圧倒的に影響力が弱い。
なぜかというと伝統にこだわりすぎているから。
そのせいで私公爵家追い出されたんだよな。
ちなみに他の公爵家ではそんなことしない。
想定外のことが起きたとしても柔軟に対応している。
他の公爵家は黄色を象徴とするジョンブリアン公爵家、
青色を象徴とするセルリアン公爵家、
紫色を象徴とするバイオレット公爵家、
そしてムーンストーン公爵家。
ムーンストーン公爵家は名前の通りムーンストーンという名の宝石が象徴だ。
ちなみにムーンストーン公爵家が色を象徴するとしたら他の公爵家と違い月光色というは明確な色がわからない色になる。だからムーンストーンが象徴なのだろう。
そしてムーンストーン公爵家は筆頭公爵家である。
だからなのかムーンストーンという宝石はムーンストーン公爵家のみが身につけられる。もちろん王族も身につけられない。
それとこれは本当にどうでもいい話だと思うが
この国の王様の名前はベリディグリ・ライム・エメラルド・クロムダイオプサイトだ。
大変失礼だが長い。お名前が長すぎる!
あ、ものすごく思考がそれていた。
う〜ん...たしかにスカーレット公爵家はぎゃふんと言わせたいよ。
でも王立学園か。一ヶ月もあれば行けるかもしれない。
あ、久しぶりの超ポジティブ思考が役に立った。
というか私を誰だと思ってる!
前世では中学校、高校時代常に上位10%に入っていたからな!
テスト勉強は1週間前から!暗記科目はテスト前日!
いつも後悔してたよ。遊んでる暇じゃなかったって...。
はは・・・。はぁ。
まあどれだけ考えたって私の答えはもう決まっている。
「入学するよ。あ、編入だっけ?するよ。
彼奴等をギャフンと言わせてやるさ。
だからさ、ローシェンナ。手、貸してくれる?
勿論ローシェンナがよかったらだけど」
読んでいただきありがとうございます。
私は月光が好きなのでそれにちなんだ名前を筆頭公爵家の加盟とさせていただきました。
これから登場する人物たちも宝石や色にちなんだ名前だと思います。
ヴェールの全て色の名前という考えが崩れ落ちますね。
でもヴェールは博識っぽいので宝石の名前ほとんどすべて知ってそうで怖いです。
次回は王立学園に入学するまでの流れを書きたいと思っています。
長くなりそうな予感がしますがどうぞお付き合いください。
長文失礼いたしました。