5. 魔法と魔術
厨二病心をくすぐる感じ。
ヴェールは厨二病なんでしょうか?
服を買い終わった私は一旦宿屋に戻る。
宿屋ではローシェンナが神業とも言えるような速度で私の近くの部屋を取っていた。
これには正直驚きよりも納得のほうが強かったな。うん。
…なんというか最近過去について思い出したおかげで鮮明な前世の記憶を思い出す。
前世では異世界というとやっぱり“アレ”だよね。
そう、“魔法”である。魔法は厨二病患者の憧れでしょ!
ゑ?私が厨二病患者かって?確かに14歳ぐらいのときは憧れたけど
い、今は別にそんな?うん。
まぁとりあえずローシェンナにこの世界に魔法があるか聞いてみよう。
転生したことに気づいたときはそれどころじゃなかったし、
そもそも落ち着いたときには魔法の存在について忘れてたし。
とりあえずローシェンナの部屋に行ってみよう。
コン、コン、コンと3回ノックをして
「ローシェンナ、私だよ。開けてもいい?」
と尋ねると「どうぞ」
と返事が来たので扉を開ける。
そして私は開口一番に
「ローシェンナってさ、魔法って知ってる?」
と聞く。
それを聞いたローシェンナはまるで希少生物を見つけたかのような目で私を見つめると
「もちろん存じておりますが...。
まさかヴェール様、知らなかったのですか?
魔法について学ぶことは貴族としての義務ですよ?」
と言われた。
ちょっと流石にローシェンナの言い方にイラッときたものだから
「そうなんだ。私は魔法について学んですらいないし存在すら知らなかったよ。
ローシェンナ、魔法について教えてくれるかい?」
と返す。そしたらローシェンナは笑顔で
「もちろんです。貴方様に魔法を師事するのはわたくしにとってとても光栄なことですわ」
といったのだった。
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ローシェンナに聞いてわかったことは2つある
1つ
魔法は馬鹿みたいな集中力と想像力が必要らしい。
そしてもちろん使う魔法に応じた魔力が必要になってくる。
使用魔力量というものは工夫次第でかなり減らすことができるらしい。
この工夫というものはだいたい効率よく魔力を使用することだ。
もう1つは
魔術があること。
魔術は魔法とは違い、詠唱が必要であること。
魔法は頭に想像し、魔力を流すことによって使用することができるが
魔術は詠唱したり、魔法陣に魔力を流し、魔術名を唱えなければ使用できない。
しかし魔術は魔法に比べ発動条件が難しいからか
使用魔力が魔法に比べて圧倒的に少ないのが特徴だ。
あれ?これ2つ以上ありそうだぞ?
まあいっか。
まぁこれらがローシェンナに聞いてわかったことだ。
明日辺りにローシェンナに魔術について教えてもらうことになっている。
魔法は生まれながらのセンスが重要で特に教えることがないからだ。
それに対し魔術は生まれながらのセンス以上に覚えなければいけないことが多い。
まぁ結局は魔術は記憶力の問題ということだろうか。
魔法があるということがわかりすぐに使いたくなってしまったが、
まずは体内の魔力について理解しなければならないし、
何よりも無知な状態で使う魔法というものほど危険なものなどないと思うから
今日あたりは大人しくしていようと思う。
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「闇夜を照らす光を我が手に!
ライトッ!!」
「ええと
闇夜を照らす光を我が手に?
ライト!」
え?何をしているかって?
決まっているじゃないか。魔術の練習だよ。
なんかこれさ
中身25歳に対しては酷ですよ。
恥ずかしいです。
ものすごく。
というか初めて知ったけど
どうやら魔術というのは高位の魔術になればなるほど詠唱する時間が長くなるらしい。
ま、当然といえば当然か。
「ヴェール様。恥じらいを持ってはいけませんわ。
こうです。
闇夜を照らす光を我が手に!
ライト!!」
うん。正論なんだよなぁ。
というか魔術の練習に入ったのってつい5分ほど前なんですよねぇ。
3時間近く自身の体内の魔力さんと仲良くなろうとしていましたから。
お陰様で今や一心同体よ!
「こう?
闇夜を照らす光を我が手に!
ライト!!」
ローシェンナの光った右手を見て私もやってやるぞと思っていたら
ピッカー!と掲げた右手があら不思議ね?ものすごく輝いているわよ。
眩しいのに眩しくないって何なの?なんか落ち着かない。
あ、ローシェンナは眩しそうね。いいなぁ。
私はそんなことを思いながら光に消えてと念じて光を消す。
そして顔をあげるとローシェンナのあっけらかんとした表情を見て
あ、これ私、やらかしちゃいました?
と呑気に考えてしまったのは仕方がないだろう。
なんか大変なことをしちゃった気がしたので兎に角現実逃避をしたい気分なのだ。思いっきり。
読んでいただきありがとうございます。
次回はローシェンナがヴェールをものすごく褒め称える回になりそうな気がしなくもなくもなくもないですね。