4. 当初の目的其の壱 達成
服を買うという当初の目的をヴェールはいつ思い出すのでしょうか
「うん、私としてはものすごくありがたいけどローシェンナはいいの?
あなたがいいなら嬉しいよ」
悩んだ結果、まぁローシェンナがいいならいっかという結論にいたった。
「はい、もちろんです!ありがとう存じます!」
あ、なんか大丈夫そうだね。
「うん、これからよろしくね」
私はそう言うとふと思ったことをいう。
「そういえばローシェンナ、どうして私だってわかったの?
髪も短く切ってるし何より男子三日会わざれば刮目して見よ
という言葉通り三日どころか数年たって私、だいぶ変わったのに...」
「貴方様は美しい緑の髪に透き通った藤色の瞳、そして数多くいる侍女の中でもわたくししか知らなかった
緑に混ざった美しい緋色の髪をお持ちではありませんか。
お店に来たときは他人の空似かなと思いましたが違ったのですね。
それよりもわたくしは貴方様のお美しいご尊顔を拝見できて幸せでございます」
...ローシェンナ、なんか私のガチファンみたくなっているぞ。
いいのか!!
「あ、うん。そっか。ところで街でさ、私の噂ってさっきの勘当以外になにか知っているのはある?
もしよければ教えてくれない?私に対して失礼なものでもいいから」
とりあえずローシェンナのガチ語りを阻止しようと私の巷での評判とか噂について話題を振ってみた。
「え?はい。承りました。ヴェール様は巷では愛人の子とか言われています。
他には公爵様の温情で生かされている哀れな公爵令嬢とか
弟思いの優しい姉や裏で弟をいじめているとかほとんどが悪い噂です」
うっわぁ。ヤバない?評判ヤバない?というかそんなこと知らないよ?
噂って怖ぁ。これじゃまるで乙女ゲームとか恋愛小説によく出てくる悪役令嬢ですやん。
あ、でも私よくよく考えてみれば令嬢じゃないもん。
え?じゃあ悪役令息?なにそれ、聞いたことないんだけど。
「そう。ありがとう。散々だね。うん。ま、いっか。
これから私はヴェール・ウィスタリア・スカーレットじゃなくてただのヴェール・ウィスタリアだもん。
あ、服のこと忘れてた。あと追加で何着か買うよ。
これに似たデザインで黒を基調としたやつあったらそれにして。
あとこれはもう一着ほしいな。
ああ、あとこれは白と黒をいい感じに使っていていいね。これを4着買うよ。
合計金額はえっと、590パールだね。はい」
完全に当初の目的を忘れていた私は少し強引に話を戻して服を買った。
当初の予定よりもだいぶ散財してしまったが、服は完全にゼロからだったので気にしないようにしよう。
あ、下着のこと忘れてたけどまぁ公爵家で使っていたものは男物だったしそれでいっか。
あった下着全部持ってきた自分偉い!
まぁ全部と言ってもいつも男物の下着の上に女物の下着着てたから女物の下着はおいてきたけどね。
「はい、ヴェール様お買い上げありがとうございます。
こちらが洋服です。
それと誠に申し訳ございませんが店の外でしばらく待っていただけると嬉しいです。
これから店長と話をつけてきますので」
「え?うん。ありがとう」
気がつくとローシェンナが戻ってきていて、買った商品をくれた。
そして店長と話をつけてくると言われてちょっと戸惑ってしまったのは仕方ないよね。
だって、まさか辞めるのが今日だとは誰も思わないでしょ。
これ絶対に店長にとっては青天の霹靂でしょう。
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ローシェンナが店長に話をつけてくると言ってから約一時間、なんかめっちゃ視線を感じるんですけどぉ!
早く戻ってきて!ローシェンナ!
そんな事を考えていると店の扉が開いてローシェンナが出てきた。
「お待たせいたしました。ヴェール様。
お時間頂いてしまい誠に申し分けございませんでした」
「え?いや大丈夫だよ。気にしないで」
どうやら無事に話がついたらしい。
良かったわ。
ちょっと30分過ぎたあたりから大丈夫か結構ガチ目に心配していたりしたからね。
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