3. 思わぬ再開とお願い
家を勘当されたヴェールがまず最初にすることは...?
さて、家を追い出されたのはいいもののこれからどうしようか。
とりあえず持ってきて売ると決めているものはさっさとお金にしてしまおうか。
そう考えた私は色々と売ってお金にした。
お金を手にして最初にやることはまず安い宿を探すことだ。
寝床の確保は大切だからね。
「はいはい、お一人様一泊100パールよ。
お部屋の番号は203号室ね。
はい、これ鍵ね。
おでかけに行くときは受付に鍵を預けておくれ。
代金は不便だとは思うけど
毎日払ってもらうよ。
ごめんねぇ。こうでもしないとお金を払ってくれない人たちがいるからね」
宿屋のおばあさんはそう言うと私に鍵を渡してくる。
この宿は市場の近くにある宿の中で一番宿泊代が安かったところだ。
ちなみにパールはこの国のお金の単位である。
たしか1パール日本円で100円ぐらいの価値があったと思う。
で1パールよりも下がパーチ。
これは米国のセントと同じ扱いだと思っていいと思う。
とりあえず私は宿屋の部屋に入る。
まずはこの髪を切ろうと思っていたからだ。
私は持ってきたハサミを持ち、部屋にあった鏡を見ながら髪を切る。
そうすると長い髪に隠れるようにして緋色の短い髪が見える。
何を隠そう、このメッシュみたくある緋色の髪があることを確認したのは
女装を命じられた次の日だったので伸びて目立つ前に定期的に切っておいたのだった。
でも家を勘当されたのでそんなめんどくさいことはもうしなくていいのだ。
ちなみに緋色の髪は顔の横,つまり襟足の近くから伸びている。
髪を切ったら次は服を買いに行こうとお金と最低限の荷物だけ持ち部屋を出て鍵を掛ける。
そして受付に鍵を預けて宿の外に出る。
服を買いに行こうとした理由は持っていた服はすべて女物だったからだ。
もう女装する必要はないから男物の服を買って女物の服はすべて売ろうと思ったのだ。
通りを暫く行くといい感じの服屋を見つけた。
店の中に入ると店員さんが
「お客様、いらっしゃいませ。
何をお探しでしょうか」
といってきたから
「男物の服を探しています。
サイズは私と同じでお願いします」
といった。
店員さんはかしこまりましたというとすぐに服を探しに行く。
ちなみになぜか私は声変わりをしなかったから声は少年だ。
さらに体つきも女性らしく女装していても全くバレなかった。
これについては私はものすごく驚いた。
「こちらでよろしかったでしょうか?」
しばらくして店員さんが戻ってきて男物の服を何着か持ってきている。
それらを見て私は
「あぁ、はい、そうですね。
できれば私に似合うような色でお願いします。
これらの服も素晴らしいですが私はもっと身軽で動きやすい服のほうがいいです」
といった。
そう、店員さんが持ってきた服はパーティーや貴族の私服のようなきらびやかな服が多く
私の髪色と同じ緑を基調としたものや、藤色を基調にしたものが多かったのだ。
多分私は、というか絶対に 婚約者とかに服を送るために服を買いに来た
お忍びのお嬢様に見間違えられている気がする。
「かしこまりました。お客様に似合う色合いでかつ動きやすいものですね。
すぐにお持ちいたします。ああ、あとずっとお立ちではつかれるでしょうからどうぞ
店の奥の応接間でお待ち下さい」
店員さんは一瞬なぜだろうかと不思議そうな表情をしていたがすぐに営業スマイルに切り替えると
私を店の応接間に通した。
応接間でこれまたしばらく待っていると私の希望通りの服を持ってきた店員さんがやってきた。
「お客様、こちらでよろしいでしょうか」
「はい、大丈夫です。全部でおいくらですか?」
私はいくらか聞いてみる。頼む、安めでお願いします!
店員さんが持ってきた服は10着ほどだからだいたい100パールほどであってほしい。
ついでにサイズあってるかも確認して、お気に入りがあれば追加で何着か買いたい。
ちなみに私の今の手持ちのお金はパールほどだ。
公爵家が何故か優しく、私の1年間の予算千万パールをくれ、
色々持ち出したものを売ってだいたい五百万パールほど手に入れたので私のお金は千五百万パールほどある。
そのうちの5万パールを今回持ってきているからだいたいは買える思う。
「はい全部で500パールでございます。お客様一応サイズのお確かめをなさいましょうか?」
うん、日本円で5万か。高いな。うん。
知っていたけどね。うん。高いっ。
というか私の持っているお金千五百万パールって日本円にしたら15億でしょ?
金銭感覚おかしくなりそうで怖いんだけど。
というか試着してくれるのか。
「ええお願いするわ。あとねあなたには言っておくけれど実は私男なの。
実家から女として生きるよう言われたんだけど勘当されちゃって…。
だから家を追い出されたならもう女として生きる必要はないかなって思ったんだ。
だから男物の服を買いに来たわけ。
あなたみたいな気が効く子は人間として好きだよ。
あなたの名前を聞いてもいい?」
はっ。しまった。
店員さんの優しさに感動してつい家を追い出されたことと女装してたことと名前を聞いてしまったっ!
ほら店員さん驚いてるじゃん!
「えっとごめんね?
こんなこと急に言われても混乱しちゃうよね。
今の忘れて!」
「…もしかして貴方様はスカーレット公爵家のご令嬢?いいえご令息ですか?
これは失礼しました。わたくしローシェンナ・アンバー・シャトルローズと申します。
覚えておいででしょうか?ヴェール様」
思わず忘れて!と言ってしまったが店員さんが言ったことに驚いている。
ローシェンナだって?だってそれは私の昔のメイドだったじゃないか。
婚姻が決まってやめていった。どうして家名がシャトルローズのままなんだろう。
「え?ローシェンナ?なんで?どうしてここで働いているの?
あとそれよりも私は公爵家を追い出されたからただのヴェール・ウィスタリア、
ただの平民だから様なんてつけなくてもいいよ。
というかどうして家名がシャトルローズのままなの?」
おっとしまった驚いて問いただしてしまった。
「ヴェール様、わたくしも家を追い出されたのですよ。
わたくしの婚約者が浮気をして男一人のこころをつかめないお前なぞいらないと。
なので先程のわたくしは嘘を申し上げてしまいました。
いまのわたくしは貴方様と同じただの平民です。
あと、公爵様が箱入り娘を勘当したことはすでに皆に広まっています。
皆が申していますよ。ヴェール様は容姿で捨てられたのだと。
可哀想にと。
ヴェール様、よろしければまたお使えしてもよろしいでしょうか?
もちろんこの仕事はやめさせていただきます。
ヴェール様に心からお仕えすることを誓います!
ですからどうか...お願いします」
おおう、焦る私の心とは違ってローシェンナが渡しに使えたいと言ってきたぞ。
どうしようか...正直とてもありがたいけどローシェンナに申し訳ないなぁ。
読んでくれてありがとうございます。
ヴェールの所持金すごいですね。
というかお金くれた公爵家勘当したのによかったのかと疑問に思ってしまいますね(笑)
まぁ一応家族の情が少しぐらいはあったからかもしれないですね。