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チュートリアル

 騎馬と馬車の一団との面会が終わったが問題が一つ発生した。人間の縮尺が少々違うのである。


「な、なんやて~~っ?」


 ファンタジー世界とは言え普通の人体、寄生虫まみれで駆虫剤も存在しない世界では、男性の平均身長は150センチ以下、女性なら130センチ以下しか無かった。


 今も明治村で展示されている、帽子の右から「大日本帝国陸軍」と書いてある制服は子供服程度の大きさしか無く、ゴールデンカ〇イの登場人物は全員150センチ以下。


 博物館にある全身金属鎧は、衣食足りている貴族しか着れない物だが150センチ以下の子供用サイズ。


 巨人症を発症していて末端肥大症も発症している、ジャイアント馬場系の人物でもせいぜい170センチ。


 時代小説で書かれる「身の丈七尺の大男」(2メートル10センチ)なんてのは大嘘である。


「お、お姫様抱っこ」


 パッケージ版まで購入した良子は、パケ裏やフルコンプCG画像のような、攻略対象からお姫様抱っこしてもらうのが不可能なのを自覚させられた。



「ありがとうございました。私共はこの街の商人、王都にも店を持っておりますが、ここを本拠地としているのです。街が魔獣に襲われたと聞き、家族や店が気になり戻って来たのですが、ここでスライムに出合い馬を傷つけられてしまい……」


 攻略対象の美青年に感謝されたので、タクティクスモードのチュートリアルクエストが開始された。


 卵を産み付けられてグッタリしている二頭の馬車馬がいるので、商人の一団を守りながら周囲の魔物や魔獣を倒し、街に入城しなければならない。


 この商人たちはBL本で街と王都を汚染する時に必要なので、一人も欠けることは許されない。


「馬を庇いながらゆっくり行きましょう」


 本来聖獣を駆使してターン制で一匹づつ倒して行かなければならないが、聖獣ではなく元が猫なので言う事を聞かないフリーダムな状態、まあ接近した敵には猫パンチと噛み付きで対応してくれる。


 そこでアイテムボックスを開いて何かないかと探っていると、最終局面に出てくるはずの最強装備があった。


 近所のSSの聖男も装備している、大日如来の加護を受けた具足と不動明王の利剣。


 煌めく星座の聖衣は貰えなかったが、仏教徒としてはありがたい品が貰えた。


「瞬着」


 武装烈火したり蒸着したり聖衣を装着するように、変身バンクを使って自動的に身に纏うことが出来る大日如来の具足。そして不動明王の利剣である倶利伽羅剣も腰に装備する。


 ドラゴンとか魔王と戦う時は、具足の力で巨大化して殴り合えるのだが、雑魚には必要無いので普通サイズで戦う。


 デカイ背丈を縮められないものかと思ったが、ミクロサイズの敵とか、誰かの体の中に侵入するとき以外は使えないようだった。


 猫達にも変身バンクで防具を装備させてやり、爪での攻撃力を高める手甲も嵌めて貰う。



「修羅、魔〇拳!」


 一度やってみたかった技名を叫んで魔獣にフィニッシュブローを放つ。


 仏教的な装備なのでヒンディーの世界でも通用するが、オ〇ム真理教の宣伝にも利用された終末戦争アニメなので、もうCSであろうと二度と放送できない。


 皮肉なことにSMAPが解散してキムタク以外退所したので、草薙クンがセンパイ役で出演していた姫ちゃん〇リボンが放送できるようになり、慎吾クンがリーヤ役で出演していた赤ずきんチャ〇ャも放送できるようになった。


 プリキュ〇なども年に一回お笑い芸人を出演させているようだが、獅子舞ネタと「ちゃ~」ぐらいしかネタが無い焼肉屋が借金抱えて殺人事件とか詐欺事件とか起こしたり、バイトの女の子をレイプしたり反社勢力と付き合っていたり麻薬使用で逮捕されたりすると、放送できない回が出来てしまうのでやめて欲しい。


 こどちゃもぜんじろうなんか採用したばっかりに二度と放送できない。



 商隊の周囲を回って倶利伽羅剣を魔物に当てて聖なる炎を点火してやると、浄化の炎で魔物は苦しまずに浄土へ旅立ち、近くの魔物も魔獣も浄化の炎に惹かれて飛び込み続け、青く炎上しているヘクスにスタックして現世での苦しみから逃れるために消えて行った。


「ヨシッ!」


 タクティクスモード完全勝利。誰一人として傷を負わなかったので、ボーナスポイントも獲得して登場人物の経験値も好感度もアップ、レベルは999とカンストしているようなのでもう上がらない。エロい攻略画面もゲットして男達の水浴びシーンを保存した。



 お姫様抱っこの夢が潰えたので少々いじけていたが何とか立ち直り、負傷していた人物に治療魔法を掛けて回っていた。そこで。


「う、産まれる~~っ!」


 既にスライムの卵を産み付けられていたマッチョ騎士が産気付き、人気のいない方に駆けて行った。


 寄生生物、それもバッタやカマキリに寄生するハリガネムシは、成長が終わると寄生主であるバッタやカマキリを、水辺へと歩かせて身投げさせ溺死させておいて、悠々と水の中に帰って行く。


 寄生主であるカマキリが人間に捕まったり、寄生主が捕食者に食われそうになって死の恐怖を感じて暴れていると、何をどう感知したのか分からないが、腸の中で死の恐怖を察知し緊急脱出して土の上にでも逃げ出す生き物である。


 タミフルのような抗ウィルス剤はウィルスも殺すが、ウィルスの多くは寄生主に死を命じるスイッチを押すことが可能で、高い所から飛び降りるなどの異常行動を起こさせ、生命活動を停止することで薬効を止め、寄生主の死体を他の野生動物に捕食されて住処を変

るまでの機能を備えている。


 子宮頸がんワクチンなども、死んだ不活性ウィルスを使っているにも関わらず、感受性が強すぎる者には同様の機能が働き身体機能を害したり、神経系統を遮断されるような事故が起こるのかも知れない。


 つまり今、くっ殺せマッチョを放置すると、どこかから飛び降りるか、水生生物であるスライムを出産するために鎧姿のまま水の中に飛び込む危険性がある。


「待って、危ないっ」


 その事実に気付いたのは良子だけだったので、聖獣三頭を伴って追い掛けた。


「さっきの騎士を見付けてっ」


 猫達に言い付けるとイカの耳をして驚いたが、ダルそうに騎士を探し始めた。


 良子が血相を変えたのを見て他の者も探し始め、動ける者は全員で捜索した。


「ニャ~~ゴ」


 騎士を見付け、声を上げた大佐の方に向かうと既に手遅れで、マッチョは破水していた。


「まさか、そんな……」


「ああっ、見ないでっ、見ないで~~っ」


 残念ながら騎士は野ぐそスタイルでスライムを多数出産していた。それも駆け付けた全員の前で。


(屈強な騎士がスライムに負けて、カッチカチの尻とヤヲイ〇から出産、貴重な資料ご馳走様でした、ありがとうございます)


 これもスマホで録画して、騎士の羞恥の表情と汚い擬音も余さず保存。


「くっ、殺せ」


 スライムに辱められた上に子スライムを多数出産、名のある貴族なら家名を穢したので自決物の恥を晒し、またくっ殺状態になった。



「そう落ち込むなよ旦那、このぐらい良くあることだ」


 顔見知りの冒険者の護衛に慰められている騎士、街から町の移動の最中、ケツの貸し借りなど良くあることらしい。


 近所のSS「聖男」が呼ばれた武士社会なら、ホモゴブリンとかオークにヤられて魔物の子供を産むと切腹ものだが、ここではスライムやゴブリンに種付けされたり卵を産み付けられたり、美少年が人魚に誘惑されて卵を産み付けられるのは良くあることなので、自決するほどの恥ではないらしい。


「シクシク……」


 まるでアメリカに筋肉留学し、レインボーカラーのキャップとタイダウンベルトで決め、上半身裸と半ズボンでゲイの聖地で行進した「なかやまきんに〇ん」みたいに、マッチョで同好の士である鍛え上げた黒人さんの一団に声を掛けられ、周囲から舐めるような眼差しと哀れな被害者を笑顔で見つめられている中で一人ポージングを決めていた写真をブログにあげて以後、「アメリカとは恐ろしい所だ」とうなだれた写真をアップし「使用前、使用後」みたいに落ち込んで、やせたかなしい姿でご自慢の筋肉もパンプアップしなくなってゲッソリ痩せて帰国して、長い時間を置かないと再び鍛えてマッチョにならなかったように、1対1のメイクラブを求めて渡米した物の、夢破れて多人数のオモチャにされたトラウマから回復するのに時間が掛かったのと同じく、マッチョ騎士にも立ち直るまでの時間が必要になった。


 尚、新喜劇の舞台上では相方のようなハードゲイが実はストレートで、あれは舞台上だけのキャラで、ただの筋肉好きでプロレスファン、一般人女性と結婚して一気に人気がガタ落ちしたのとは逆に、カミングアウトしていないきんにくんが酷い目に遭ったのは対照的である。



 そうこうしている間に馬も出産して復活したようなので、街を目指して移動を開始した。


 浄化の炎が点火したままなので、産まれたばかりのスライムでも現世での苦しみから逃れるために炎に飛び込んで消えて行った。


 街に近付くと包囲されている城砦を解放するクエストが開始されたが、最初の数体の敵に浄化の炎を点火してやると、魔物も魔獣も気の毒なほど炎に詰めかけ、次々に自殺して浄土へと旅立って行った。


 街を包囲していた魔獣たちを倒し終わると、馬車や騎馬も付いてきて城門に近付き、護衛達が開門を要求した。


「開門ーーん!」


 煌めく具足を身に着けて、三体の聖獣を連れ歩き、包囲されて撃退もできずに困っていた魔獣や魔物を、簡単に排除したのは聖女以外の何者でもなく、すぐに跳ね橋を降ろして開門してくれた。


「おお、あのお姿は?」


「聖女様?」


 門番の兵士も身分証も冒険者ギルドのカードも持っていない「そんなデカイババアがいるか」状態の良子を簡単に通してくれた。


「まず私共の商会においでください。領主様も是非聖女様とお会いしたいと仰ると思います」


「ええ」


 女神からの情報では、王都にBL生産工場となる屋敷を貰っていて、ちかひみつきちで他の執筆陣も集めて量産できるはずだが、まずは商人の知古を得て流通体制を確保しなければならない。


 タクティクスモードでは三国〇無双か北斗〇拳無双、ガンダ〇無双同然の無敵状態なのを確認したので、たとえこの国の軍隊でも他国の軍隊でも一人で殲滅できる。


 相手が最終盤の魔国の魔獣や魔物、アイアンゴーレムの軍団でも困らない感じなので、序盤はどうやってBL本を流通汚染させるかに気を配らないといけない。



 街中の大通りで人の波を割って練り歩き、その姿はシュラトのような霊験あらたかで宗教的にも有難い具足、ヒールとかヘッドパーツを入れると190センチ超えの大女、肩や腰の防具も入れると凄い幅で凄いガタイ。


 三体の聖獣と言うか大きいだけの猫と言うか魔法少女付きの関西弁の淫獣みたいなのを連れ歩いたので騒動になり、各方面に報告されていた。


「ようこそおいで下さいました、聖女様。こちらが私共の屋敷にございます、どうぞ遠慮なくご逗留下さい」


「お、お邪魔します」


 流石に60年も生きると、若い頃の全く喋れないコミュ障も多少治っていたが、金持ちに屋敷に招待されてお泊りする時の挨拶などは心得ていなかった。


 隣のサークルと挨拶して領布本を交換したりするルーティーンなら、同好の士相手で臆することも無かったが、商人街の大きな屋敷に招待されるのは慣れていない。


 若い頃にどこかのヲタキングの女版みたいな金持ちの屋敷に招かれ、会議室みたいな大部屋で集団でBL本を執筆したことならあるが、メイド執事付きで接待されたことはない。


(そういえばあの時の「ねえや」「ばあや」ってメイドだったんじゃ?)


 入り口で武装解除すると猫達も小型化して付いて来た。小鳥を追いかけたり相変わらずフリーダムに行動しているが、迷子にならないように一定以上の距離は離れられないようになっているらしい。


 屋敷に入るとイケメンの枯れオジが向き直って、執事で家令としてイケボで挨拶して来た。


「我が家に聖女様をお迎えできるとは光栄です、お部屋をご用意いたしますので、それまでこちらでお寛ぎください」


 猫と共に案内された部屋に入ると、猫用トイレまで用意され、お茶に茶菓子も出され、専属のメイドまで付けて貰えた。


「お客様、なんなりとお申し付けください」


 高級な部屋なので落ち着かないが、天井を見ると照明器具があり、魔法か何かで点灯している。


 トイレに行くと水洗便所で手洗いもあり、拭き取り用の桜紙もあった。どうやらトイレや水周りにも困らないで生活できるらしい。


 部屋にもミニキッチンがあって水道が出て、ポットの湯沸かしもできるようなので、多分魔導コンロ的なものもあり、風呂などもあって生活水準を落とさないで生活できそうなので安心した。


 大昔のように屋外にボットン便所があり、拭き取り用にロープが渡してありソコに跨って擦り取るとか、インド的に水で洗い落とせるように水壺が置いてあり、洗うのに使う側の手は不浄の手で、子供の頭をなでようとすると嫌がられるとか、そこまで古い生活をしないで済むようなので助かった。

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