世界BL禁止令
60年を超える生涯を、汚超腐人としてBL道の求道とタカラヅカに捧げ、独身で過ごしたBBA良子。
中国国内を起点としたゲーム内BL規制に始まり、中性的な男性アイドルを発掘デビューさせる番組も当局により規制禁止。
その規制はコロナウィルスのように中国から世界中に伝搬し、燎原の火のように燃え広がった。
まずは何でも発禁にすれば良いと思っているオーストラリアとロシアに上陸してBL発禁。
アメリカに上陸した時にはタバコ規制のように健康保険組合から巨大訴訟が起こされ、同性愛が禁止されているイスラム圏とキリスト教圏でももちろん発禁処分。
ヨーロッパや南米に上陸した頃には、神父や牧師による同性への性的虐待や訴訟が隠しきれなくなったヴァチカンから、全ての責任をBL本に擦り付けて責任転嫁。
古くから戦国武将の嗜みとして、寵童、稚児、男色、衆道が盛んであった最後の砦であった日本でも、漫画の表現の自由を求める赤松〇が応援する議員が破れ、あろうことか日本初の女性総理がメスガキ物やオネショタと同じ害悪として、BL本を発禁指定して女の敵となった。
所有禁止が出る前の過渡期でもBLはZ指定18禁で通販禁止、店舗販売のみで購入者の実名開示と身分証明書提出の上で年齢確認と顔認証。
ビッグデータだけでは無く、犯罪者予備軍として警察への情報開示でデータ保存という「被害者が存在しない創作物」への死刑宣告が行われた。
どこかの公務員は「トッシー×銀さん」の壁サークルであったのが職場に通報され、副業禁止と公務員信用失墜行為の数え役満で懲戒免職。
普通の主婦であった子持ちの女性は、薄い本制作の際のエロい文字データやエロ絵を、作画用マッキントッシュとアイパッドとアイフォンによってBLポルノ画像として通報され、警察沙汰になりiTune関連も全滅、もちろんグーグルアカウントも閉鎖、高額の収益があったYOUTUBEも垢BAN、各種SNSアカウントも余裕でBAN、アマゾンプレミアムアカウントも消失してキンドルのBL本も数千冊失い、当然職場にも居られなくなり解雇、親戚中に恥を晒した上で離婚、親権さえ失い子供との面会すら拒否。
他の幸せな家庭でも、息子の「ママ、銀さんとトッシー大好きだよ(カップリング間違い、5×2と2×5を同様に扱ってはならない)」と言う証言から、児童が自由に閲覧できる状態で薄い本を本棚の後ろに隠していて、あまつさえ発禁本を複数製作して販売、晴海のオンリーイベントで多人数でコスプレして売り子をしていたのが夫が雇った興信所から発覚して、インフルエンサーだった人物が病原菌扱いで、製造元で元売りで売人として逮捕。
縦割り行政の壁すら超えて、警察や児童相談所からの通報で子供達は母親から隔離され親権も剥奪。
高収入の使い道として「ママと息子のお泊り初デート」などという如何わしいパンフレットを所有していた所からレイプ疑惑まで出て、児童に同性愛ポルノを閲覧させた虐待により、娘や息子は精神科医からのカウンセリングの上で児童養護施設へ入所することとなった。
さらに女性が舞台に立てない昔から女形として男性が演じていた歌舞伎なども放送規制、女性だけで男役も演じていたタカラヅカまで倒錯的だとして規制。
CS局のSKY STAGEまで終了させられ、全世界に凄まじいディストピアとBL包囲網が完成した。
「な、なんやて~~~っ?!」
それらの記事をネットのニュースで見た良子は、まるで焼きたてジャパンの最終回のような悲鳴を上げ、血圧が一気に300を超えた。
高齢により高血圧や糖尿病などの疾患を抱えていた良子は、怒りと慟哭によって脳の血管がブチ切れてプッツン(死語)した。
そして三国志などで出て来る「憤死」とは、こういう状況なのかと実感しながら床に倒れ伏した。
「さ、最後に……」
ハードディスク内の違法BLポルノ画像や、耳元ヘッドフォンエロイケボボイスデータ、投稿用自作文字データ全てを消去しようと腕を伸ばした良子だったが、Lの養父のようにスイッチ一つで全データ削除できるように準備していた上級者では無かったので、何も消去できなかったブツが大量に残った。
個人では紙廃棄物としては到底処分できずに親族から警察に通報され、家宅捜索を受けてわいせつ物を押収され、親戚中に死に恥を晒しまくって実名報道され死体蹴り、葬儀も埋葬すらして貰えない無縁仏となる高度過ぎるプレイを予測しながら意識を失った。
(ごめん、叔母ちゃんはBLが大好きで……)
死後は児童ポルノ所有でアニヲタでロリラブドール所持でエロゲー持ちのロリコンと同等の扱いになり、親戚中から蛇蝎のごとく嫌われ、存在すらなかったことにされ、話題に上るのすら憚られる犯罪者で汚物扱いになり、自分の子供や孫のようにかわいがっていた甥や姪、その子供達からも遺産(BL本の倉庫と化した自己所有マンション)すら相続拒否されそうな未来を感じながら息を引き取った。
数十年前の初期のコミケでは、原作で一次資料の雑な似顔絵だとか、下手くそすぎる絵でも作家が少なすぎて飛ぶように売れていたが、良子の描き出す作品は萩尾〇都の〇ーの一族の絵でも、山岸〇子の厩戸皇子×蝦夷でも、竹宮〇子の地球〇…の絵でもソル〇ャーブルー×ジョミーマーキス〇ン×キース〇ニアンでも見事に再現してBLに書き写す「奇跡のペンを持つ女」として一時持て囃されていたが、今となっては原作者より絵が上手いのが当たり前になってしまい、「な、何を言っているのか分からないと思うが、藤原書記本を領布したら出版社からメールが来て、てっきりお叱りを貰うと思ったら、姉妹紙で藤原書記のスピンアウト物を連載するように言われた」みたいな事が現実に起こるようになってしまった。
健康問題もあり、締め切り前の修羅場には堪えられなくなり一線からは引いていた良子。
BLもタカラヅカも存在を許されない世界に未練など無かったが、2匹の飼い猫とプランターの数々、大量の愛読書であるBL本の行く末が心残りだった。
暫くして夕食の時間になり、夕焼けの中で茶トラの猫と白キジの猫が良子の亡骸に前足を乗せ、モミモミしながら食べ物を強請った。
「にゃ~う」
「みゃおん」
猫は親戚にも119番にも通報できないので、戸締りされたマンションの鉄扉を超えることはできない。
せめてベランダ側の窓が開いていれば、隣に逃げ込んだり手摺から大ジャンプして地上に降りることもできたが、猫の転落事故を恐れて施錠されたアルミサッシの重い窓は猫の前足では開閉できない。
数日以内に親族から電話でもあり、不通だと誰か来るかもしれないが、いつものように半月以上連絡が無ければ猫達は餓死する。
その前に水分が尽きてしまい枯れ死、便器の水でも舐めて生き残れるかもしれないが、猫がトイレットペーパを巻き取らないよう、間違えて便器で溺れないよう、トイレと風呂場のドアも閉まったままになっていた。
春なので腐乱死体にハエが卵を産みつけたり、ウジが沸いてハエになってまたその子が産まれ、窓にビッシリとハエがとまるような事態にならないので発見はさらに遅れる。
カーペットの染みになったり、空腹になった猫に亡骸の肉を食べられたりする死に方。風呂の中で溶けて茶色い腐乱臭がする液体と骨になる次に悲惨な孤独死である。
「メイオウ……」
「にゃおん、にゃおん」
猫とは生涯に一度、人間にも分かるよう意味がある深い言葉を発すると言われている。
それは飼い主の願望が生み出した幻聴なのか、人語の物まねをした際に意味がある言葉に聞こえてしまうのかも知れないが、ここでも猫は言葉を発した。
「おやすみ、おばあちゃん」
「つれてって」
そこで猫達の異常を検知したNNN(ネコネコネットワーク?)を通じて、以前姪の家に引き取られ、今は亡き飼い猫が、早めに寝ていた姪の耳元で泣き叫び、体の上に体重を掛けて飛び乗り、前足でモミモミする怪奇現象が起った。
「もう…… 寝させてよ、ご飯食べたでしょ?」
そこで姪は、その猫が3年も前に腎臓病で亡くなっていて、自分で庭に埋葬したのを思い出して飛び起きた。
「大佐っ!」
チビ猫のエドの相方としてお迎えされた猫。ネーミングからしても、この姪も腐っていた。
「にゃおん、にゃおん」
枕元まで来たエドの方も、充電中の携帯を前足と肉球でテシテシ叩いている。
猫語なので何を言っていたのかは不明だったが、子猫だった大佐とエドを連れて来た叔母の事が思い起こされた。
「叔母さん?」
何故か姪も叔母の事が気になるようNNNに誘導され、夜間に叔母のスマホに電話を掛けてみた。
「繋がらない」
留守電モードになってしまう電話に、今は亡き大佐に叩き起こされて心配して電話したのと、エドが鳴きやまないのも、明日にでも行くと伝えて電話を切った。
やがて良子の穢れた魂(BL的に)は、異世界であるバーナード星上に建設されているダイソン球の中に召喚された。隣にあるSSの「竜の花嫁」と同じ並行世界で平面世界。
「ここは?」
光に溢れた周囲を見渡すと、巨大な女神像と思われるものが出現し、まるでお釈迦様の掌の上の孫悟空のように女神の手の上に乗っていて、絶対的な力の差を感じさせながら頭の中に響く声で話し掛けられた。
『目覚めましたか?』
「は、はい」
『貴方はヨゴレた人生 (BL的に)を終え、新たな世界へと旅立ちます。その前に選択肢が与えられます』
「はぁ?」
訳が分からないうちに話は進んだ。
『このまま輪廻の輪に戻り、新しい命としてすべての記憶を失って生まれ変わる野も可能です。しかし、貴方の穢れた魂はそれを許さないでしょう。もし悔いが残る人生なら、BLに全てを捧げ尽くしても構わないのなら、この世界でもBLを布教し領布したいのなら、この手を取って「捧げる」と言いなさいッッ!』
女神像の圧力は凄まじく、後者を選ぶしか無さそうだったが、物凄いペンタッチで原稿が重くなるほどベタと斜線を入れた漫画を描かされ、50代で心筋梗塞を起こして死にそうな感じの契約を結ばれそうで恐れた。
「さ、捧げる」
案外あっさり受け入れた良子だが、まだBL坂を下り始めたばかりで、連載打ち切りなど到底受け入れられず、後になって連載枠を買えるほど金持ちになって大物になれば、BL物を連載継続したい願望があった。
『宜しい、これから貴方は乙女ゲー世界、「煌めきの聖女、世界を統一す」の中に転生します』
ここで、多数ある六角形の平面世界上に、五分前世界創造のように、良子が転生する五分前と言うか、「マジで転生する五秒前」「会って五秒で合体」ぐらいで世界が創造された。
元々PC版エロゲーとして開発されていたこのゲームは、「今時PC持っててエロゲー買う若い奴なんてこの世にいねぇ」と言う結論と、売ったところですぐに中国人に複製防止プロテクトを割られてコピーされるので、路線変更されてスマホ用アプリでブラウザゲーとして開発された。
作中のカット立ち絵全てが、男同士の「顎クイ」「壁ドン」「ネクタイ掴み」で埋め尽くされ、タクティクスモードで敗戦した時は攻略キャラが捕まって半裸で拷問されているシーンになるので、わざと負けまくって攻略キャラたちが「何かに負けている」状況を楽しみ、イベント画像フルコンプの為に、仲間を弱くする拘束用課金アイテムが爆売れした。
『貴方の使命は、この世界を統一してBL神を最高神で一神教として広め、BL本を大量生産して出版領布することなのです』
確かこの平面世界は、人類が破滅戦争をしないよう科学技術のハッテンが禁止されていて、銃砲や印刷技術や蒸気機関が開発され次第、巨大な上級天使が出現して下級天使の軍団が攻め寄せて、印刷技術を開発した人物や、印刷物を領布された人物全員が抹殺される世界のはずなのだが、女神だか上級天使はその決まり事をガン無視してBL本を大量生産するよう言いつけた。
もちろん、この女神も腐っている。
そして腐っている女神像は、この世界の存立に関する定義「人類や動植物を元のまま有りのままの姿で保存する」の大原則を曲げ、この世界に存在する人類ソックリな亜人で男性に在り得べからざる改変を行った。
全ての男に「ヤヲ〇穴」を増設したのである。
それはもちろん、男性が愛する男性の子供を身ごもり、どっかのバン〇ラン少佐の恋人のマラ〇ヒみたいに子供を産み育てられる、と言う意味でもある。
リバって裏返って相手を身籠らせるのも可能。
もし他の上級天使や、ダイソン球を管理している「神」と呼ばれる巨大AIにハッケンされると、周囲全部から「責め」られ平面世界の危機になるはずなのだが、他の腐っている女神像や上級天使もグルなのか、平面世界の盤面一面ぐらい自由にできるのか、乙女ゲー世界でヤヲイ世界が創造された。
『それらを可能にするため、貴方にもチート能力を与えましょう。その拳は空を切り裂き、その蹴りは大地を割り、その魔力は天空をも焼き焦がすでしょう』
どっかで聞いたようなフレーズに、魔法までサービスする女神像。一輝×氷河、一輝×瞬も美味しく頂けるタイプなのか、ギリシャ神話のような輝く聖衣もくれるのかも知れない。
「あの……」
良子が山のようなBL本の所蔵品と在庫と、各種執筆機材の処分を頼もうとしたが、それらは全て女神像がお見通しだった。
『皆まで言うでない、愛蔵本の全てはコピーを取らせてもらいます、全て神にささげなさいッッ! そして「参考資料」や出版と執筆に必要な機材、身の回りの品は全てあなたのアイテムボックスに収納しておきます』
良子のアイテムボックスの中に、違法なBL本の山が正確にジャンル分けされ、生ものとアイドル物と政治家物と二次創作とオリジナルと18禁止物に分類され、DAIG〇の姉で竹下総理の孫が書いた、DAIG〇本人が作中に出演して声優までヤった商業誌と竹下家的に放送禁止指定されたアニメも、ブルーレイにも収容されていない、おそまつな幻の1話も漏れなく回収された。
余程の上級者でなければこの判別はできない。
ともかく、死後親戚に恥を晒しまくる所蔵品は全て撤去され、普通の電化製品と家具だけがあるマンションの一室が残った。
「あ、ありがとうございます」
そして最後の心残り、二匹の飼い猫とプランターの事を考えた。
『宜しい、二匹の猫と植物も旅の仲間として認めましょう、召喚』
「にゃ~」
「エ~ン」
「ゴロゴロゴロ」
「ああっ、あんた達っ」
基本、聖女にモフモフのお供は欠かせないので、二匹の猫、銀さんとトッシーが召喚され、ついでに早くに亡くなってしまった黒猫の大佐の魂まで召喚され、良子と再会した。
『もうこれで思い残すことは無いか?』
「最後に、姪にだけ電話させてください」
技術的にはとんでもない申し出で、数光年先で時代も違う異世界に電波を飛ばして通話する、ほぼ不可能な願い事だが、BL女神像は願いを聞き届けた。
『話してみなさい、それと、これからも「一次資料」の収集に、ネット接続は可能にしておきます』
スマホやタブレットの充電には、ダイソン球の裏側で収集する膨大な太陽エネルギーがあり、魔法と言う寝言を現実のものにする技術もあるので、現代地球との回線接続も簡単な事であった。
女神的には、新作の流行ジャンルも欲しかったとも言う。
「もしもし、ああ、叔母ちゃんだよ」
姪に死んでしまったことを伝え、BL女神に救われて、外に出せない捨てただけで捕まる所蔵本と、タブレットやPCも回収してもらい、猫もこちらに連れてきてもらい、恥をさらさずに済んで猫も死なせずに済んだことを伝えた。
「はぁ?」
NNNの配慮で心配はしていたが、異次元の会話に付いて行けなかった姪、しかし電話口で先程も聞いた大佐の鳴き声を聞かせると信じた。
「ミャ~ウ」
「大佐っ、おばちゃん、これから大佐をお願いします」
涙声で話し、長電話になったが、マンションを受け取って貰えると聞いて安心し、一応危ない残留物が無いか明日調べて貰い有れば処分を頼んで、別れを告げてから電話を切った。
『さあ、それでは旅立ちなさい、BLで世界を汚染するのです』
一応女神も、それが汚染だと自覚はあるらしかった。
先日、数あるなろう原作のコミカライズ版を拝見していると、「ダィテス領攻防記」 が六巻で終了し、巻末に原作者である先生のご逝去のため、切りが良い所での終了だと拝見しました。
ご冥福を祈るとともに、腐男子の身でありながら、何かBLに関するものを書こうと思い投稿させて頂きました。
もうジジイなので普通の少年漫画は全く読めなくなり、なろう原作の「お約束」部分と、作家さん個々の切り口の違いを毎日楽しませて頂いております。
今作も拙作の「竜の花嫁」と同じ背景設定を利用しています、大元は拙作のSSこのすば物からの流用です、以前見た方は悪しからずご了承ください。
異世界転移物やゲーム内転生物は、チート設定やステータス表示のテンプレが一般の方から嫌がられることが多いようなので、「科学的に処理している」で誤魔化していますが、同様の設定を利用したい方は一寸書き替えるなどして遠慮せずご利用ください。
なろう小説で転生物やゲーム内転移は、パクリパクられが普通で、他の作品設定も使って良くなっていくようですので、こちらとしても利用していただけると光栄です。
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