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竜払い  作者: サカモト


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第十章 竜払いの伝説 後編(3)



 実質的な指示はホーキングが行なった。おれは、黙って彼のそばにいた。

 彼は、おれを虚構の英雄化することで、人々の意識を再構築をはかった。それが多少は功を奏したらしい。他所の大陸から、この大陸を助けに来た竜払いが来た。その竜払いは、昨日、一晩中、大陸各地の竜と戦い、あげく、みんなが見ているまで泣いている子供を救って、堂々と竜の群れを横断し、都へ入った。

 その竜払いがいれば、まだ新しい戦いができる。

 希望の捏造だった。

 そして、おれに与えられたのは沈黙だった。とにかく、ぼろが出ないように、黙っている。そして具体的な指示はホーキングがすべて行なった。この大陸の竜払いを統括していた協会はすでに壊滅しているため、反対はほとんど起こらずに済んでもいた。賛同してくれる者だけでも、準備は充分に行なえた。

 まず、人の移動。夕方に来るだろう竜の襲撃に備え、なるべく、都の中央へ集まってもらう。これは指示するまでもなく、ほとんどの人々が自主的に、移動し終えていた。誰だって、都の中心にいた方が生存率が高くなることがわかる。

 それでも取り残されたり、不当に中央領域への避難をはじかれる人がいないように動いた。

 次に「弓がいちばん上手いやつをみつけるんだ」と、ホーキングが言った。それは、人脈のある数人の竜払いが担当した。

 そして、残るはホーキングを先頭にして、破壊された都の外側へ向かった。かつて芸術の都だった場所は焦土と化していた。人々の暮らしの痕跡が生々しく焼けて、朽ちて燻っている。その光景とにおいは精神を攻撃した。それらを緊張感で、なんとか無視して突き進む。

 向かったのはこの大陸の多くの竜払いが犠牲を払い、ようやく仕留めることが出来た、竜たちの亡骸の前だった。そのなかで最も大きいものの前に立つ。竜の身体には、竜払い無数の剣が刺さっていた。傷口からは、血液がたれ、地面に染み込んでいる。

「こいつの力を借りよう」

 ホーキングは竜の亡骸を友人みたいな扱いで発言した。

 それから解体に入る。けれど、島でやったように大がかりにはしない。竜の一部を身体から切除した。

 ホーキングが言った。

「骨、血、肉。三つを試す」

 竜から入手した部位を矢に設置する。職人をみつけ、夕方までに骨は矢先にしてもらった。削る時間はないため、なるべく尖ったものを使う。血は直前に従来の矢先に浸すことにした。肉は、矢の速度も落ち、真っ直ぐ飛ばし方も難しくなるだろうが、先に括り付けることにした。

 とうぜん、その間に時間も過ぎて行く。夕方の襲撃まで時間が迫っていた。ホーキングと共に、世話しなく残された都部分を駆けまわる。

 そしてそれは不意打ちだった。

「いたし!」

 ひどく聞き覚えの声がきこえ、立ち止まる。

 リスがいた。背中に巨大な鞄を背負っている。

 幻覚だ。すぐにそう頭のなかで決めつけた直後、リスの声に反応したセロヒキがやってきた。フリントも一緒だった。

「みんな」

 相当、強い幻覚だ。疑いの濃度を強めた時、見慣れた黒づくめが、ビットに身体をささえられながら姿を現わす。じつは、おれのすぐそばに座っていたらしい。

 ヘルプセルフの服の端からは包帯が撒かれているのはわかった。彼は、仮面越しにおれを見た。

「追いついたぞ」

 ちょっとした悪戯が成功したみたいにいった。たぶん、仮面の下は微笑んでいる。それから、彼は仮面の穴からホーキングを見て言った。

「竜を払うんだろ」

 対してホーキングは「今日は最高だな」と返した。

「意味わかんねーし」リスがあきれた表情で言う。

 一斉に感情が膨れた。けど、気がかりがあった。おれはビットを見た。つい、君まで来たのか、というのが表情に現れてしまったらしい。彼は、それを読み取ったうえで「ぼくも来ました、戦います」と言い切った。「島のみんなは強いですから、姉さんたちはぼくたちがいない間も、自分たちで生きて来た人たちですから」

 根拠はない、ただそれは希望だった。

 言ってしまえることは無数にあった。

「そうか」けれど、おれはうなずくだけにしておいた。

「いよーし」と、ホーキングが区切るように声を発した。実際、もうあまり時間がない。ただ、それでも彼は「おっ、フリント、お前も来たか」と、声をかけた。

 フリントは肩をすくめ「道には迷わなかった」といった。

「で、そこの無茶ばか」リスがおれの顏を見ていった。「あたしたちはどうする」

「何もしなきゃ、この都は明日の夕方に竜にすべて焼かれるんだ。白い竜はそうするつもりらしい」

 正直にそれを伝えた。

「だから、こっちもこっちで悪巧みを試す」

 そして、そう言い切った。

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