第七章 ある、限りは(10)
島に来て一週間目と一日が経った。
「あした、俺とフリントはあっちの大陸へ渡るよ」
その日の夕食後。半壊した家屋を素人ながらみんなで改修して、食堂と、そして男たち寝床しはじめた家でおれたち七人と、トーコとこどもたちがいる前でホーキングは告げた。
「なんだかんだで一週間、この島にいた」
ホーキングは他にも何かを言いたそうだった。表情にはあきらかに島を出ることに対して躊躇するものが浮かんでいた。そもそも、ホーキングとフリントは、島に来た翌日には出発すると言っていた。それが、とくに何も言わないまま、一週間、島の回復のために黙々と勤しんだ。いつもなら《いつ行くんだよ》と皮肉のひとつでも言いそうなリスもふたりに言ってる場面に出くわさなかった。とうぜん、それはおれがいない場面でやりとりされた可能性もある。
いずれにしても、出発を暗黙で送らせているふたりへ、けしかけることも、確認することも、おれは自然と抑止していた。ふたりに島にいて欲しかった。できれば、ずっと。
まだまだ島でやらないといけないことがたくさんある。そのために大人ふたりの力があるのはかなり大きい。それにどうしても気持ちの部分もある、いて欲しかった。
ホーキングは息を大きく吸って、ゆっくり吐いた。
「奴の息の根は止めなきゃなんねえ、こいつは必ずだ、必ずそれだけはやんなきゃなねえ。生かしてはおけない」
それは当然わかる。この島で過ごしているうちに、日々、おれだって、その念は強くなりばかりだった。
どうしてこんな酷いことができる。いや、相手は人間じゃない、竜だ。だから、こんなことを考えても、行き止まりの気分になるだけだ。
けれど、それでも竜に対して、人へ持ち込むような怒りが沸き起こって止まらない。
それでもなんとか、正気を失わずにいる。きっとこの島をなんとかしようすることで、狂わずにいられた。もちろん、失われたものは決して元には戻らない。それは知っている。父さんや、せんせいだってそうだ、元には戻らない。でも、せめて立て直しを。最悪からの立て直しをしたい。
願いなのか、いや、祈りというべきか。正体は不明だ、けど、とにかく無力さはわかっている、だから。だからといって、投げ出すのは生きた心を失う気がした。
あきらめたくない、あきらめるのは、ただ嫌いだ。
がき、なのかな。独り、よくそう思ったりもする。弱点なんだろうな、穴ぼこみたいに感じる。
ホーキングはそのまま黙った。フリントも何もいわなかった。




