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もしも私が小説を書くならば  作者: 喜びの子
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私と鏡



床に何個もの紙くずが散らばって、一人暮らしで片付けるように言ってくれる親もいないから数日間丸まった原稿と一緒に朝を迎えてる。

大学2年生になって数ヶ月が過ぎた。今は夏休み前なのにコロナのせいで全然大学生になった気がしない。授業は、1年生の時は全部オンラインだったし、2年生の今も週2回の対面だけで後は全部リモート。週2回だけでも大学に行けてることは良いことなのかもしれないけど、土地勘もない場所で友達もいないところでいつ対面になるかも分からないから、その通知が来るのをひたすらに待っていた1年の時は、誰も味方じゃない気がして結構しんどかった。

今はバイト先が同じ子達と一緒に授業も受けてるから、乗り越えた先にある少しの楽しさを感じられる。


夜子(やこ)ちゃん!」

教室に入り手を振ってくれているのは、バイト先で一番仲良くなれた美咲ちゃん。

彼女の赤色の髪が、どれだけ遠い席に座っていてもどこにいるかすぐに教えてくれる。

田舎にある山に囲まれた大学で派手髪の子は、まあまあ少ない。そんな中で個性を貫いている彼女をかっこよく思って、私も青髪にしたりした。

笑顔を向け、美咲ちゃんの一つ開けた隣の席に座ると

「これ可愛くない?」

と美咲ちゃんが自身のパソコンを見せてきた。

それは隣の市にある最近出来たばかりの大型ショッピングモールの中にある洋服ブランドの店舗限定商品の写真だった。

「えっ可愛い!」

洋服の趣味も合う友達で良かった。

私は鼻歌を歌ってしまいそうな程に心が騒いで、今日の学校に行く前の将来への葛藤なんか忘れて次の週末に来る久々のお出かけに心を弾ませながら授業の始まりのチャイムを聞いた。



週末になって美咲ちゃんが、家の前まで車でお迎えに来てくれた。

ショッピングモールに行くまでの1時間で美咲ちゃんと沢山の話をした。

最近の大学で見たかっこいい人のこととか、過去の恋愛の話とか。

恋愛も何もなく流れで生きてきた私は、ただただ美咲ちゃんの話を聞いていただけなんだけど。


「夜子ちゃん、本当に自分の話しないよね。」

そう言い美咲ちゃんは、ローズピンクの可愛らしいリップのついた唇を少し尖らせた顔をした。

「なんでもいいから話してよ~!何でこの大学に入ったの?」

「うーん。親に勧められて入った感じかなあ。」

「えっ。夜子ちゃんが決めなかったの?」

「一応大学に行っとけって言われたから大学には行く気はあったけど、行きたいところがあった訳じゃなかったからまあそこでいいかなって。」

私がそう笑うと美咲ちゃんは、少し驚いたように口を「あ」の字に開けた。

「じゃあ、将来の夢は?」

「公務員は良いぞってお母さんに言われてるからそうしようかなーって。」

「そうなんだ~。まあそれぞれな生き方だね~。」

「そうね~美咲ちゃんは?」

そんな話をしながら私は、バイト先の4年生の先輩に同じ事を言った時に

「あ~はいはい。夜子さんは何でも”なんとなく”で道を歩けちゃう人ね。」

という言葉を思い出していた。

そんなことは無いはずなのに。


私だってきっと悩んだり悲しんだり楽しかったり、人生を生きてる!って感じだった。

それでも何故か自分を第三者目線で見過ぎていて、どこか遠い誰かの人生のように感じてしまう自分もいた。


だからか分からないけれど、過去の自分を余り深く思い出せないでいる。

先輩の言葉に腹が立ったけど、完全否定出来なかったから、その言葉を苦手なキノコを食べる時みたいに噛んで飲み込んで笑って受け流した。



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