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5-5;この世界のナオかな

 病院の一室。

 コオたちは訪れた。

 一人の少女が寝ていた。


〈昔、学校でいじめられっ子にいじめられて、心身ともに疲労してしまったらしい。それでも頑張って生きたらしい。学校から出たら自由になれると希望を持って我慢したらしい。冒険に出たら楽しい人生が待っていると夢見たらしい。そんな期待に胸膨らませてギルドに訪れると、いじめっ子たちもいたらしい。そこで再びいじめられたらしい。再び心身ともに疲弊したらしい。それでも耐えて生きて旅に出たらしい。しかし、冒険の先でモンスターにやられたらしい。そして……いえ、その先は言うのをやめておきましょう。命あるだけでも幸せなのかもしれません。しかし、いつ目覚めるのかは……〉


 妖精は説明した。

 コオはそれを聞いていた。

 ナオは寝ていた。

 コオはそれを見ていた。

 ……



 2人は橋の上に戻った。

 コオは遠くを見ていた。

 妖精は近くを見ていた。


「……」

〈これで分かっただろう?ここが君が生まれなかった世界。これが君の望んで世界だ〉


 街はとても静かだった。魔物が攻め込む音も、人々が逃げ惑う音も、警報の音の何もなかった。妖精の声だけが響く。


「……ふざけるなよ。何が、君の望んだ世界、だ。こんな世界、誰が望むか」


 コオは沈黙を破った。


〈しかし、君が望んだことは事実だ。わたしはそれを叶えただけだ。感謝される覚えはあっても、非難される筋合いはない〉

「何を言っているんだ。こんな世界があってたまるか。こんな地獄のような世界、なくなってしまったほうがましだ」

〈魔王みたいな事を言うね。それか、破壊者かな〉

「うるさい。お前みたいなやつに何がわかる。お前みたいなやつに……」

〈たしかに私にはあなたのことはわからない。人間のこともわからない。実際にそれが原因で違う世界を滅ぼしてしまったことがある。それで神様失格の烙印を押されて、それを払拭するためにここに来た〉

「お前みたいなやつは、来るべきではなかった。お前なんかに救えることはできないんだ」

〈そうか、わたしの仕事は失敗したのか〉

「そうだ。お前の仕事は失敗したのだ。そして、俺の人生も失敗したのだ」

〈そうか……〉

「出て行け。こんな世界なくなってしまえ。俺の人生は終わりだ」


 そう泣き崩れていくコオ。

 妖精は静かにコオのもとから去っていった。

 雨が再び降り始めた。

 ……



「――おい、コオ、こんなところにいたのか?」


 コオは深い意識の暗闇から呼び戻された。あの世か?と思っていた。


「おい、コオ、しっかりしろ」


 コオは体が生きているのを感じた。あの世ではないらしい、と。


「おい、コオ、大丈夫か!」


 コオの目には光が見えた。そして、知っている顔が見えた。


「……ウロじいさん?」

「そうじゃ、しっかりしろ!」


 コオは涙を拭った。ウロが大丈夫だったことに涙した。


「どうしたんだ、ウロじいさん?」

「どうしたもこうしたあるか、モンスターが攻めて来ているんじゃ」

「そうか、モンスターが攻めて来ているのか」

「そうじゃ、だからコオも戦いに行ってくれ。街のピンチなんじゃ」

「そうか、モンスターが攻めてきて街のピンチ……え?」

「どうしたんじゃ?」


 コオは何とも言えない表情になった。

 え? モンスターが攻めてきた? それはつまり、元の世界ということ? そうコオは推測して、心が晴れた。

 雨が止んで、日は照ってきた。

 コオの人生が始まった。


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