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強者の振る舞いを  作者: 黒乃いばら
第一章 魔女の産声
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5 人間の戦い

「閣下!!ど、どうか再度ご検討を!!」


 静止に入ってきたのはイリーナであった。

 ここで領主館と同様の混乱が起きるのを避けたかったのだろうが、なんとも殊勝なことである。


「ガディアス。お前はこの二人をここから出すべきではないと、そう考えているのだな?」


「恐れながら……、ご認識の通りです」


 膝を付き、許しを乞うかの様に侯爵を凝視するイリーナ。

 傍から見ていると、私が原因でイリーナが怒られているようで、とても居心地が悪い。


 まあ、大した変わりはないのだが。


「……話は後で聞く。()()()()殿()、エキナ枢機卿(すうききょう)?くれぐれも邪魔になる様なことはなさらぬように」


 イリーナの言外の訴えが届いたようで、怒りを噛み殺し、苦虫を噛み潰したような表情をしているが、なんとか見学の許可は出してもらえるようだ。


「ありがとうございます〜」


 昨日は立派な法衣(ほうえ)をまとっていたエキナが、今日になってメイド服を着ていたためか、困惑しているのが見て取れるのが面白い。


 しかし、『リアリス殿』とは。

 枢機卿(すうききょう)であるエキナが私のことを上位者としていた為か、マリーの妹であると知らされていたのかは分からないが、随分と扱いが良くなったものだ。


「第三塹壕、防護柵の設営完了!」

「負傷兵の搬送経路を確保しろ!」

「目標地点まで一○分!」

「全弓兵の配置完了!」

「第五次防衛ライン構築間に合いません!」


 あらゆる指示や報告が、怒号のように飛び交い、現場の緊張感が徐々に高まっていく。


 一方で、私は全く関係ないことが気になっていた。


「エキナ。ここって何メートルくらいかしら」


「高度ですか?外壁が見た感じ三○メートルはありますよねぇ。それの二倍以上はあると思います」


 私の目算とほとんど違いはないようだ。仮に、現在の高度を七○から八○メートルとして、三○キロ先がギリギリ見えるとなると……


「なんともまあ、都合の良い異世界があったものね」


「どうかしたんですか〜?」


 水平線というのは、観測地点の高度によって距離が変わる。しかしそれは、星の直径が変わらないことを前提としてだ。


 つまりこの世界は


()()()()()()()なのよ。私の知っている世界とね。奇妙な偶然もあったものね」


 まあ、そんな事はどうだって良いのだが。


「始まるわね。見せてもらいましょう。人間の戦いを」


 ―――――

 ―――

 ―


 見事なものだ。

 

 西外壁を背に、放射状に陣を敷き、野戦で迎え撃ったティアミス軍は、完璧に統制の取れた動きで魔物との戦いを繰り広げていた。


 あらかじめ油でも撒いてあったのか、広範囲を焼き払い、魔物の数を削りつつ進軍ルートを制限し、そこに魔術による集中攻撃。そして、時間を稼ぐことを目的に動く前線と、崩れそうなラインに瞬時に加わる遊撃部隊。

 兵たちの練度もさることながら、真に評価すべきは広域を見渡しながら、的確に指示を出す侯爵や、その直下の隊長格だろう。


 しかし、魔物の前線を構築していた四足獣や甲虫達を片付けたところで、ゴブリンやオークといった人型の魔物が増え、単純な罠を避けたり、迂回する集団などが現れたことで、徐々に苦戦している様子が感じられるようになった。


 そして、なによりの問題が


「いくらなんでも多すぎます……」


 隣でイリーナが呟く。


 当初二万と予想した大群であったが、開戦から二時間ほど経過して(なお)、森から溢れ出る魔物の勢いは衰えていない。


「塹壕に薪を詰めてるんでしょうか〜?よく考えますねぇ」


 防衛ラインを下げつつ、新たな炎の壁を作ることで時間を稼いでいるが、状況は悪くなる一方である。

 元々、綱渡りのような戦いであったが、このままではその頼みの綱すら擦り切れかねない……


 そんなとき、「あ」と声を上げたのは誰だっただろうか。


 ワーウルフの集団により最右翼が食い破られ、更に後ろから殺到したフォレストウルフによって、前線は完全に崩壊した。


「総員撤退ッ!!」


 侯爵の判断は早く、兵たちは最終陣地に火を放ち撤退し、跳ね橋が上げられ、戦いは籠城戦(ろうじょうせん)に持ち込まれたのであった。


「中隊(ごと)の被害状況確認を急げ!」

「既に教団員が派遣された収容施設は全て満床(まんしょう)です!!」

「南西塔が魔法による攻撃を受けています!」


 魔物からの魔法攻撃もあるようだが、数は多いとはいえ、森から追い出される程度の魔物には、外壁を突破することは難しいだろう。

 お互いに手詰まりといったところか。しかし、一点気がかりなこともあった。


「侯爵。調子はどう?」


「……ティアミスでは、籠城(ろうじょう)は常に想定されています。王国第二軍と、第四、第五聖騎士団への援軍要請も行っていますので、我々の勝利は揺るぎません」


 やはり気づいていないようだ。報告は上がるかもしれないが、そもそも判別ができない可能性もある。

 籠城戦で落ち着かれるのも面白くないが、ワンサイドゲームではもっとつまらない。ヒントを出して、もう少し楽しませてもらおうか。


「気づいてないみたいだから教えてあげるわ。さっきのワーウルフ、()()()()()()()()()()

毎日投稿もうダメですね!

ただ、追われながら書くのが良さそうなので、多少ずれてもペースは落とさないように頑張ります

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