25 大聖女は見た(ローザリア視点②)
この小説はアルファポリスに以前から投稿している作品です。全59話完結済。
不可解なことって言っても私の服が突然濡れていたり、泥で汚れていたり。靴が無くなったりもしていました。
些細な嫌がらせ程度のことだったけど、それなりに嫌な気持ちにはなりました。
そんな時には決まってベアトリスが近くにいたので、面倒を見てくれていた使用人達はしきりにベアトリスのせいにしていました。
彼女がそんなことをしているのを見たことはないし、そんなことできる位置まで近づいてなかったんです。
でも、一人で王宮に来て信用できる人もいなくて恐いので、特に意義は唱えませんでした。
そしてあの事件が起きます。
私のすぐ横で陶器が割れるような音がしたんです。
鉢植えが横で割れていました。
使用人が二階からベアトリスが鉢植えを落としたと騒ぎ出したので、兵士がベアトリスを呼びに行きました。
でも、二階から落ちた割に鉢植えは割れてはいたけど粉々に飛び散ったりしてるわけじゃないし、私はいつものと同じなのかもと疑いました。
そこからとんとん拍子にベアトリスの犯行と決めつけられて、侍女の証言を聞いてベアトリスは真っ青になってました。
ユリシーズも結構調子に乗ってました。あの王子は単細胞だから。憎めない人ですけどね。
アルフレッドが鬼の首でも取ったみたいにベアトリスを糾弾するのを見るに見かねて止めてみたんだけど、王家の勤めとか言いながら、邪魔をするなって感じで凄く恐い目で私を見るので、私も引き下がるしかありませんでした。
この時、今までのことも全部こいつが仕組んだんだって気付いたけど、それと併せてアルフレッドへの恐怖の気持ちが湧いてきました。
次の日、私は後悔することになりました。もっと身体を張ってでもベアトリスを庇えば良かったと。
私が狙っていた隠しルートの流刑イベントを待たずに、早々にベアトリスが流刑されることになったんです。私を流刑にするのはベアトリスなので、私はこちら側に閉じ込められたことになります。
それからは恐怖の毎日でした。国王が亡くなったら誰かのルートになるわけだけど、時期が早すぎるから死ぬかどうかもわからない。
私が魔力を失ったらアルフレッドと結ばれないといけなくなるのが怖くて、自分に傷をつけて『キュア』して魔力を消失していないか確認したりもしました。
アルフレッドともユリシーズとも距離を置こうとしてたんだけど、アルフレッドから悩みがあるなら聞くなどと言われて益々怖くなったり。
そんなある日、ついに国王が亡くなりました。
アルフレッドが決まり切ったように戴冠して王位を継ぎ、ユリシーズは微妙な立場になりました。
そして、アルフレッドは国王が他殺だと息巻いていて犯人探しが始まりました。すぐにユリシーズが犯人だという証言が出始めました。
でも、私は見たんです。
国王が死んだ日、周りを気にしながら国王の寝室に入るアルフレッドを。
死角にいたからたぶん気づかれてはいないはずだけど、もうアルフレッドに関わりたくないこともあってユリシーズに相談しました。
それ以前のベアトリスに関することも全部話しました。そちらは半信半疑でしたけど。
そこからのユリシーズは結構行動的で、夜の闇に紛れてユリシーズの馬で二人でトルマリンの王宮を抜け出しました。
行くあてもなかったので、私が故郷のライムストーンを提案すると、ユリシーズは二つ返事でオッケーしました。
なんとかライムストーンに着きましたが、アルフレッドに追われているかわからないので実家には寄らず、ライムストーン辺境伯を頼りました。
ライムストーン辺境伯は私のことを凄く歓迎してくれました。たぶん政治的な理由で。
それから、ライムストーンに来て一週間くらいだったかな。辺境伯に下に来ているお客さんが知り合いか見てくれって頼まれました。
変なことを言うなあと思って見てみると、流されたはずのベアトリスがそこにいました。
私はその瞬間、喜びのあまり飛び上がりそうになりました。やっぱり魔の島には魔族がいるんだって。
よく見るとベアトリスはフードを被った怪しい二人を従えています。
私は階段を駆け下りてベアトリスに声をかけました。辺境伯の質問に応えてから、ベアトリスにフードの二人のことを聞きました。
早くフードの下が見たい!
期待に胸踊る私をユリシーズが邪魔してきたので、私はすっごく頭にきてユリシーズを怒鳴ってしまいました。
そこで辺境伯が場所を変えて話してはと言い出しました。どれだけ私は焦らされるのかな。
これからみんなで広間でお話しします。もちろん一番最初は自己紹介でお願いします。魔族さん!




