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兵士達は涙を飲んで帰国を決めてくれたみたい。
普通に考えたら名前を捨ててでも生きる方が正しいのだから、この人達は少なくとも悪意があって言っているわけではない。
復讐とかまだ具体的には考えてないけど、そうでも言わないと連れて行かれちゃうからね。あれは酷かったから復讐のことも考えないといけない。ベアトリスが望まないなら別の道を考えるけどね。
兵士達は去り際に飲み水と日持ちしそうな食料を置いて行ってくれた。そんなに気にしなくていいのに。
兵士達がいなくなったので、私は島の探索を開始した。探索とはいっても、魔界の門を見つける気はなくて、逆に私を見つけてもらうのが目的だ。
少し歩いて思ったんだけど、ベアトリスは体力が無さすぎる。たいして歩いてないのに足が痛くなってきたし、息切れがする。
私は体力には自信があったから結構無茶しちゃって、この落差は後から身体に来ると思う。
上手く魔界に行けたらフィジカルも鍛えないとね。
島に来てから3日が経過した。
筋肉痛を我慢しながら歩きまわったけど、未だに魔族に見つけてもらえない。
飲料水はまだ半分くらいあるけど、食料は痛むと困るので少し早めに消費していることもあって明日で食べきると思う。
探索の最中に食べれるものが無いか探してはいるんだけど、木の実や果実といったものを見つけはしても、なかなか口に入れるのは難しい。
食料が無くなればそうも言っていられないのだけど。
動物がいない気がする。まあいたところで獲って食うこともできないので、猛獣がいないだけありがたいと思う。虫にも刺されないんだけど、この島の植物はどうやって受粉しているのかな。
初日から全く汗を流していなかったので、せっかく誰もいないので川で水浴びをした。すっきりしたけど服のことも考えないといけない。
今日で5日目だ。
今、最後の飲料水を持ち歩いている。これが無くなれば生水を飲まなくてはいけなくなる。
生前、親に連れられて湧き水を汲みにいくことはよくあったけど、そんな乗りで飲んでいいのかな。
食料は尽きていたので果実を何種類か口にしている。たまにお腹がいたくなるのだけど、『キュア』すれば大抵の傷や病は治ると言われているように、腹痛にも効いたりする。
水浴びは毎日するようにしている。迎えに来た魔族に嫌がられないようにしないとね。
でも流石にちょっと焦ってきたかな。たまに1人の夜が恐くなってきた。
7日が経過した。
歩く気力が無くなってきた。気力というより体力かな?一応いろいろ口に入れては『キュア』しているけど、ロクなものを食べていない。肉とか卵を食べないと血が足りない気がする。
水は高いところに行って汲んでくるようにしているけど、体力を消耗するんだよね。
日が暮れるのが恐くなってきた。孤独に耐えるのがこんなにきついとは思わなかった。
魔族は本当に現れるのかな。もし従来のベアトリス流刑イベント発生時期まで魔族が現れないとなると私は絶対野垂れ死ぬ。
今日も日課の水浴びに向かった。綺麗に身体を洗ってからボーッと身体を乾かしていると、ついうとうとしてしまった。
気付くと辺りは真っ暗になっている。月の明かりでかろうじて歩けそうだ。留まるか拠点に戻るかどっちにしようかと迷ったが、結局戻ることにした。
服を着て歩き始める。一応、夜には森に入らないように気をつけていたので、初めての夜の森の不気味さに足がすくんでしまう。
ちょっと先で微かに何かが光っているように見える。夜光植物かな?できれば探し物の魔界の門とかご都合主義でいいからお願いします。
私は低木をかき分けてその光を目指した。
「うわっ!?」
足場の無いところがあり、思わず声をあげたが時既に遅く、足を踏み外して斜面を転がる。まずい、止まらない。
身体の至る所を強く打ち付けた後、身体が浮遊感を感じたところで私の意識が途切れた。
この小説はアルファポリス様に以前から投稿している作品です。