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5. 実家帰省ミッション

なんと、『私の推し!』がアイリスNEOファンタジー大賞で銀賞を受賞しました(๑>◡<๑)


書籍化します!!詳しくは活動報告まで!

 




 そろそろ、実家の薬屋が心配で仕方がない。


 いや、私は信じてますよ。幼馴染みのナナリーとマークスの2人がちゃんと店番をやってくれていると信じています。


 でも、流石に1ヶ月連絡がないのはおかしくないですか!!


 最初はちゃんと丁寧にお手紙付きで届いていたのだ。それがいつの間にか分量が減って、手紙がなくなって、注文表だけが届くようになった。それなのに、利益額はむしろ上がっていくばかりである。え、私のいない薬屋で何が起こっているの??


 ここまでくると、流石に怖い。これは自分の目で確かめなければならないのではないだろうか。


 そう思った私は、もうすぐ始まる夏休み中に帰省することを決めた。そろそろ近所の人も恋しくなってきたころだしね。


 そこでメアも誘おうかと思ったのだが、最近のメアは貴族付き合いが忙しそうだったのでこっそり1人で行くことを決めたのだが。



「リゼ、夏休みに帰省するんでしょ?どうして僕のことを置いていこうとしてるわけ?」


「……え?」


「一緒に過ごせなくて、リゼは寂しくないの。僕はこんなに寂しいのに??連れて行ってくれないんだったら、リゼのこと閉じ込めちゃうかもしれないんだけど」



 と、夕食時に突然メアに詰めよられた私の気持ちになって欲しい。尊さと驚きで息が止まるかと思った。本当に。おかしいな、命日へのカウントダウンが着々と迫ってきている。


 こうして、メアに内緒で荷造りを始めた私だったのだが、あっさりとメアにバレていた。


 え、メイドさん?もしかしてチクりましたか?そうなんですね!?ひどい!!


 しかし、やましい理由もないので正直に訳を話したところ、あっさりとメアも帰省に参加することが決まった。


 パーティーの出席とかは大丈夫なのかと聞いたが、「むしろリゼと過ごす以外に大事な用事ってあるの?」と真顔で尋ねられたのだから、私にはどうしようもない。


 そんなメアが愛しくて仕方がない私に、メアを止められるわけがないので、その辺の調整はルーシア様に任せることにしよう。


 そして、2人で荷造りを進めたり課題を終わらせたりしているうちに、あっという間に時間が過ぎて、ついに夏休みに突入したのである。


















 それから、背中が痛いと悲鳴をあげてはメアに


「んー?じゃあ僕の膝貸してあげるけど。はい、ごろんってしていーよ?」


と、膝枕を提案されて、別の意味で悲鳴をあげることを繰り返しつつ、ようやく王都に着くことに成功した。


 本当に長い道のりだった。どちらかというと、体力よりも精神力の限界だった。分かってますか、メアさん。どう考えても貴方のせいですよ!!


 しかし、当のメアはどこ吹く風である。いい加減、自分のあざとさを理解して欲しい。いや、自覚してるからこれなのか。それならもう手のつけられようがないんだけど。


 そして、「懐かしいね」と言い合いながら薬屋への道を歩くこと約15分ほど。



「リゼ、メア、お帰りなさ〜い!」


「久しぶりだな!元気そうでよかった」



 薬屋につけてある、インターホンのような役割をする魔道具を鳴らした私達を出迎えてくれたのは、見覚えのある2人組だった。



「……久しぶりだね」


「ナナリー! マークス!! 久しぶりだね、会えて嬉しい!!」



 そう、私の幼馴染みの2人だ。2人に一頻り抱きついた後、みんなで居住スペースである二階へ移動することになった。どうやら、今日はお店を閉めてくれているらしい。


 すると、荷物を置いたナナリーが早速私の元へやってきて、嬉しそうに口を開いた。



「ねぇねぇ。そういやリゼの手紙で見たけど、婚約が決まったんでしょ〜?本当におめでとうだよ〜!」


「ありがとう!!」


「……いや、もう絶対にそうなると思ってたけどね。逆にリゼが他の男を連れてこようものなら、絶対殺されてたと思うし〜」


「やだなぁ、誰に?」


「どう考えてもメ……ん、待って。これ以上は私の命が危ないからやめとくね〜」



 どこからか殺気を感じたらしく、別の話に切り替えたナナリーとお互いの近況を話しているうちにあっという間に夕食の時間になってしまった。やっぱり、久しぶりに会った気の合う友達との会話は楽しいものである。


 そこで早速、夕食の準備に取りかかり、今日のメニューであるハンバーグ煮込みを完成させた。久しぶりに自分で料理を作ったものだから、失敗していないことを必死に祈りながら。ダメだな、私。ついつい貴族生活に染まりそうになっている。



「……ダメだな、私。もっと自立しなきゃ……!」



 人生、何があるか分からないのだ。悪役令嬢だって、追放されるのは一瞬である。しかし、改めて気合いを入れ直す私の呟きを拾ったらしいメアは、何故か悲しそうな顔をして口を開いた。



「なんで?リゼはもっと僕に寄りかかってくれていいんだけど。むしろ何もしなくてもいいのに」



 はい、出ました。メアさんのリゼ贔屓。おかしいな、どう考えてもそれは推しに養われるニートなのだ。そんなやつはゴミ屑同然である。


 オタクたるもの、推しのATMにならねばならないのに。あ、今考えたら婚約することで口座が一緒になるはずだから、本当のATMになれるかもしれない。いや、今の私の財力じゃ意味ないんだけどさ。


 しかし、何事にも栄枯盛衰という言葉は付き纏うものなのだ。保険はあったほうがいいという路線でせめてみたら、メアも納得してくれるだろうか。



「だから!ニートリゼに需要はないの!!それに、万が一ブランシェット家が大変なことになったとしても、メアに苦しい思いなんて少しもさせたくないもん」


「……ならいいけど?」



 すると、この作戦が大成功だった。不機嫌そうだった顔が途端に明るくなり、ニコニコしている。その理由を尋ねてみたら、「どんな俺でもそばにいてくれるって分かったし」と言っていた。この人は今更何を言っているのだろうか。そんなの、前世から当たり前なのに。


 そんな私達の様子を見たナナリーとマークスが呆れ果てた顔をしていたので、慌てて煮込みハンバーグをお皿に盛り付けて食卓についた。


 勿論、慌てていたのは私だけである。メアは慌てるどころか、「ふふ、もっと見せつけちゃおっか」とハニーボイスで言ってきた。メアさんやめてください。それ、お金払わないとダメなやつです。


 そして、世間話をしつつ、煮込みハンバーグを完食した私は、ついに本題に取り掛かることにした。



「……あのさ、2人に聞きたいことがあるんだけど。このお店の売り上げ、なんで3倍になってるの?」



 さっきお店の様子を見てきたけど、ちゃんと店番をやってくれているらしいし。それはよかったし、助かったのだ。私も流石に、知り合いに何かを注意するのは気が引けるし。


 しかし、ここで恐ろしいのは売り上げである。


 なんと、私がやっていたころの3倍。何があったんだ、ナナリーの美少女パワーなのか?やっぱり必要なのは美少女だったのか?ん??


 そう思いながら2人に尋ねてみると、2人は不思議そうな顔をして口を開いた。



「え〜?そんな特別なことしてないよね〜?」


「そうだな。あ、セット売りを始めたことぐらいか??」


「……セット売り?」



 2人の言葉に口を開くと、マークスがにこやかに説明してくれた。



「リゼの薬ってめちゃくちゃ性能いいだろ?でも、売り方があんまりだなって前から思っててさ。試しにセットとか、定期購入割引とか取り入れてみたら売り上げが増えた気がする」


「確かにそれかも〜!あとは、よく買ってくれる人にお手紙書いてみたりとかね。リゼのにも書いてつけるつもりなんだけど、あの時期めちゃくちゃ忙しくて…!!ごめんね?」



 それにナナリーが賛同して詳しく話してくれるけれど、2人のコミュニケーション能力と手腕が凄すぎる以外に私から言えることが一つもなかった。「もしかして2人って人生2周目ですか?」と聞こうとしたが、まさに私が2周目である。泣きたい。かろうじて私の口から出た言葉は、



「全然大丈夫……。お給料、倍にするからこれからもうちのお店をよろしくお願いします…」



 というものだけだった。


 だって、どう考えても神店員すぎる。それにしても何故私にも知識があるのに出来なかったのか。おそらくコミュ力の違いであるという答えを導き出す前に、虚しくなるから思考を打ち切った。あー、やめ。人には向き不向きがあります。仕方ない。


 そして、2人の始めた話題に全力でのることにしたのだが。



「そういやもうすぐ精霊祭だね」


「そういやそんな季節だな」


「あ、そうだね!!今年も張り切って、商品作ってきたんだ!なんと今年は恋する紅茶シリーズの新作です。バリバリ売ろうね!」



 と言って拳を突き出すと、2人に首を振られた。え、なんで?



「いやいや。毎年そうだったんだから、今年ぐらいはメアと回るべきでしょ〜」



 ……ん?



「俺もそのつもりだった。リゼの代わりにバリバリ売るから、楽しみにしててくれよ!あ、変な気とか遣ってないからな?俺が物を売る楽しみに目覚めてるだけだからさ!」



 ……んん?



「せっかくだから浴衣も着なよ〜!私とマークスの貸してあげる〜!!」


「いいの?ありがと。リゼと楽しんでくるね」


「ちょっと、メアまで!?」


「なに、嫌なの?僕とお祭り回るの」


「いや、嫌ではない……というかむしろウェルカムですけどね!?」



 そこまで話が進んだ頃には、私に許された発言はイエスだけだったので、私は涙目になりながら頷くしかなかった。そりゃあ行きたい。お祭り、行きたいですよ。血の涙を流すぐらい行きたくてたまらないです。


 でも、浴衣メア様なんて見ちゃった日にはライフポイントが危ないわけでですね!?まさに死と隣合わせなわけですよ!分かりますか!!


 しかし、もう頷いてしまったからには仕方がない。当日に向けたイメージトレーニングを重ねて、何とかメア耐性を習得するんだ…!頑張れ、私!!






 こうして、命が危ない可能性がある、私とメアの浴衣デートが決定したわけである。


 とりあえず私は遠くのマリア様に念を飛ばしてSOSを求めたけれど、多分届いていない。ジーザス。私に幸あれ。


明日も投稿しますのでお楽しみに…!

次回が本当の夏祭り編です!!


そして、前書きでも述べさせていただきましたが、本作の書籍化が決定しました!!


(詳しくは活動報告まで!)


これも応援してくださった皆様のおかげです!

ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)


さらに、まる。様から素晴らしいファンアートをいただきました…!!

いつもありがとうございます!


こちらも活動報告欄に掲載させていただいたので、ぜひぜひ覗いてくださると嬉しいです。


よろしくお願いします(๑>◡<๑)

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます! 相変わらずのあまーい2人にニヨニヨ( *´艸`)しちゃいました!時折ヤンデレ化しそうなメア様にトキメキを感じずにはいられません…!! ヤンデレ化しちゃったメア様……
[一言] えっナチュラル糖度がすごい...! リゼがメアオタなのは変わらないけど、メアからの愛に慣れていますね...!?すごい...ナチュラルに......!ひゅう!! そして書籍化おめでとうございま…
感想一覧
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