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4. 推しに相応しい自分になりたくて

〜スピンオフのダイジェスト〜


本作のスピンオフである『転生令嬢マリアベルは、絶対に推しと結婚したい!』で盛大なすれ違いを乗り越え、マリア様と彼女の推しのユーフェミア様は婚約することになりました!

 





「「マリア様!ユーフェミア様との婚約成立、おめでとう!!」」



 私とルルカは、そう言って手に持っていたクラッカーの紐を勢いよく引っ張った。すると、クラッカーから光の粒が飛び出す。


 光がマリア様に降り注いで、まるでお姫様みたいだと思いながら、私は呆然としているマリア様に話しかけた。



「ビックリした?サプライズ大成功っ!」


「めっ、めちゃくちゃ驚きました…。何ですか、これ!?」


「メアに無理を言って、クラッカーの中に魔法を詰めこんでもらったの。今日はパーティーだからね!!」


「凄すぎます、最高に嬉しいです…!って、そうじゃなくて!!これってもしかして……」



 マリア様はそう呟いて、私達を見つめている。私とルルカは目配せをして、マリア様に微笑みかけた。



「勿論、マリア様とユーフェミア様の婚約祝いパーティーに決まってるでしょ!」


「逆にそれ以外に何があるのよ」



 そう、最近成立した、マリア様とユーフェミア様の婚約祝いパーティーである。


 両片想いだったことが発覚した2人の婚約は猛スピードで進み、昨日ついに婚約へと至ったのだ。身分的な釣り合いも取れているし、何より本人達が見ているだけで恥ずかしくなるぐらいラブラブなのだから、それも当然のことだろう。


 そのことを、



「私、やっぱりユーフェミア様を諦めなくてよかったですッ……!!」



 と、泣きじゃくるマリア様から報告を受けた私達は、彼女のために何か出来ることはないかと必死で考え、今日のパーティーを開催することに決めたのだった。



「マリア様、本当に婚約おめでとう。私がメアのことで悩んでた時、決心出来たのはマリア様が勇気づけてくれたおかげだよ。だから、今日その恩を少しでも返せたらなって思ったの!」



 私はそう言って、マリア様のために2週間ほぼ徹夜で作ったプレゼントを渡す。すると、既に泣きそうなマリア様は、おそるおそるプレゼントを受け取ってくれた。



「……ッ、リゼさん……。こちらこそ私と友達になってくれてありがとうございますッ……!これ、今開けてみてもいいですか?」


「もちろん!」



 私の言葉に嬉しそうに笑ったマリア様は、私が昨日メアに手伝って貰いながら施したラッピングを解く。そして、中身を見て満面の笑みを浮かべた。



「ッ、リゼさん、これ……!」


「私なりに作ってみたの。気に入ってくれたら嬉しいな」



 私が渡したのは、デフォルメ化したユーフェミア様のbigぬいぐるみだった。勿論私の手作りである。


 メアとお揃いの警官コスプレをさせてみたけど、はたしてマリア様が認めてくれるだろうか。そんなことを考えながら、おそるおそるマリア様の様子を窺っていたのだが。



「……ッ……グスッ」


「マリア様!?」



 マリア様の宝石のように綺麗な目から、ポロポロと涙がこぼれ落ちたから、慌ててマリア様に近寄った。


 どうしよう、失敗したかもしれない。ただでさえオタクの種別は難しいのに、私としたことが迂闊なことをしてしまった…!



「ごめん!マリア様って、もしかしてコスプレはNG派だった!?それとも、デザインが……」


「ち、違うんです!そんなわけないじゃないですか!!こんな素晴らしいもの、一生大切にするし家宝にしますよ!」



 マリア様はそう言って、ぎゅっとユーフェミア様ぬいぐるみを抱きしめた。そうは言ってくれても、優しいマリア様のことだ。気を遣ってくれているのかもしれない。


 するとマリア様は、私の視線から考えていることを読み取ったのか、さらにぬいぐるみを強く抱きしめて首を横に振った。



「本当です、気を遣ってとかじゃないです……!ただ嬉しすぎて、勝手に涙が溢れちゃっただけなんです。だって私、ただのモブ令嬢なのに。ルルカさんとリゼさんっていう素敵な友達まで出来てしまって、死ぬほど好きだったユー様とも婚約出来てしまって、さらにこんなに素敵なプレゼントまで貰っちゃったから……!!」



 マリア様は、頬に涙を伝わせながら絞り出すように言葉を続けた。



「こんなにいっぱい貰ってるのに、私ッ、返せるものを持ってないんですッ…!!なのに、なのにみんなが優しくしてくれるからぁ……」



 その様子を見て、まるで少し前の私みたいだと思った。私もずっと、返せるものを探してた。メアに好きになってもらっても、私はメアに返せるものがなかったから。


 その相手がヒロインだったら、ちゃんと幸福を返せてるって知ってるから。1番の成功例を先に見ているから、きっと不安で不安でたまらなくなるんだって、やっと最近分かった。分かったから、私を助けてくれたマリア様を、私も助けたい。


 ふと隣を見たら、ルルカはやっぱりいつかの私を見るみたいに呆れた目でマリア様を見ていた。私の視線に気がついたのか、ルルカも私の方を向いたので目が合う。


 転生者って、めんどくさくてごめんなさい。


 だって、推しの幸せが世界一大切だから。


 死ぬ時まで考えてたぐらい、大切だった。だから、この選択が推しのためになるのかをいつまでも考えてしまう。ゲームならボタン1つでやり直しがきくけれど、ここは現実だから、選択肢を間違えることが怖くて仕方がない。


 だから私は、マリア様を強く抱きしめた。



「ッ、リゼさん……?」


「私はね、マリア様と会えたことが運命だって思ってるよ」


「へ……?」


「だって、同じ転生者で同じゲームをやってたなんて運命じゃん。マリア様と会えてよかったって思ってるから、そこにマリア様がいて笑っててくれるだけでいいの!それが十分お返しになってるから!!」



 私の力説に、マリア様はさらに目を涙で潤ませた。美少女はやっぱり泣き顔でも破壊力が強くてドキドキしちゃうな、だとかを考えてしまって、やっぱりオタクは美形に弱いなと再確認してしまう。


 そんな私をやれやれといった様子で見て、笑ったルルカも口を開いた。



「……そうね。私も、あなた達といるのが楽しいから一緒にいるんであって、何か返して欲しいわけじゃないわ。それならもっと、それこそ王子様にでも取り入ってくるわよ」



 ルルカは、クスクスと笑って、綺麗なハンカチでマリア様の頬を拭った。それに続いて、私も抱きついたままでマリア様の背中を撫でる。



「ユーフェミア様のこともそうやって考えてるなら、自分を選んで成功!ハッピー!って思わせるぐらい、『絶対に幸せにしてやる!』って思いながら毎日生きるのがオススメだよ!!」



 私は、少しふざけた様子でそう言ってマリア様に微笑んだ。マリア様は私の言葉にクスクスと笑って、口を開く。



「ッ……そうですね、そうですよね!!私ってば、ちょっと弱気になっちゃってました。運命だって斬り殺せたんですから、私とユー様の前にある障害物を全部倒すのなんて余裕ですよねっ!」



 もしかすると、顔の広いマリア様はユー様のファンクラブの人に何か傷つくことを言われたのかもしれない。ユーフェミア様は人気があるから、やっぱり大変なのだろう。私が、



「そうだよ!推しのいる世界に生まれるぐらい好きなんだから、そんなの余裕だよ!!」



 と言うと、マリア様はようやく泣き止んでくれた。ほっとした私がよしよしとマリア様を撫でていると、後ろから視線を感じて振り返る。


 すると、その様子を見たルルカが、少し悔しそうにほっぺたを膨らませていた。



「……2人ばっかり、仲良しでずるいわ。私だってプレゼントを持ってきたのに、渡し辛くなっちゃったじゃない!!」



 ルルカはそう言うと、くっついたままだった私とマリア様に抱きつき、小声で呟く。



「……もし。2人とも結婚して、私のことを構ってくれなくなったら泣くわよ」


「ッ、勿論だよ!だってずっと友達でしょ!!」


「そうですよ!ルルカさんのためなら、ユー様とのデート中でも駆けつけます!」



 私達はそう言って、目を合わせて笑った。どうしよう、最高に幸せだ。こんなに幸せでいいのだろうか。星座占いがあるなら、きっと今日の私は1位のはずだ。


 そんなことを考えてニヤニヤしているうちに、ルルカは持ってきたプレゼントをマリア様に渡していた。



「……これ、私からもプレゼントよ」


「わ……!素敵なブレスレットですね…。ありがとうございます!!」



 それは、鎖でできたブレスレットで、いくつかチャームが付いていた。抱えたままだったユー様ぬいぐるみを丁寧に机に置いた後、早速装着したマリア様は、目をキラキラさせてプレゼントを見ている。


 ルルカは、それを見て嬉しそうに笑って、



「実はリゼにもあるのだけれど」



 と言って、私にもマリア様に渡したものと同じ箱を差し出した。



「へ、なんで!?今日は私は何も……!」


「ふふふ…。実はね、3人ともお揃いで作ってもらったものなの。だから、リゼにも貰って欲しいのよ。受け取って貰わないと私が困るの!」



 そしてルルカは、自分の腕をこちら側に見えるように差し出した。確かにその腕には、マリア様と同じブレスレットが飾られていた。



「……ルルカ、ありがとう!!」



 私はそう言って受け取って、早速腕にブレスレットをつけた。ついているチャームは、ハート型や星形など様々だったが、飾りの宝石の色が全員の目の色で構成されていることに気がついて泣きそうになる。


 これじゃあ、占い1位どころで釣り合いが取れない。これはルルカにも何かお礼をしなければ。



「ッ、今度お礼に、ルルカにもぬいぐるみ作ってくるねっ!!」


「誰のをくれるつもりよ!気持ちだけでいいわ」



 即答すぎる。私はルルカのそんな様子に笑いつつ、マリア様とルルカをもう一度抱き寄せた。



「これからもよろしくね。ルルカも、……マリアも!!」



 初めて、マリア様のことを下の名前で呼んだ。反応が気になって、マリア様の方を見ると、嬉しそうな顔で口を開いた。



「ッ、はい!よろしくお願いします、リゼ、ルルカ!!」



 よかった。冷たい目で見られでもしたら、本当に死ぬしかなかった。ほっと安堵する私の様子を見たルルカはクスクスと笑って、口を開いた。



「……リゼ。ルルカ。なんか、いいわね。下の名前で呼べただけなのに、こんなに嬉しいことって初めてだわ!」



 













 それから私達は、ルルカが取り寄せてくれた、お気に入りのカフェのケーキを食べながらパーティーを続けた。ルルカと私で、ノンストップで惚気を始めたマリアを生暖かい目で見つめたり、ルルカに気になる人はいないのかと恋話を振ったりと、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。


 そして、帰り際になって、そろそろ始まる夏休みの予定についての話が始まった。



「そういえば、皆さんは夏休みのご予定って決めましたか?」


「私はお父様と隣国の商業会合に出かけるわ。勿論、お土産を買うつもりだから楽しみにしててちょうだいね!」



 ルルカはそう言って、「リゼは?」と私の方を向く。



「私は、メアと一回王国の実家に戻るつもりなの。薬屋さんがどうなってるかも気になるし」



 最初は私だけで行くと言ったのだが、メアに


「どうして僕だけ置いていこうとしてるの?一緒に過ごせなくて、リゼは寂しくないの。僕はこんなにさみしいのに?」


と詰め寄られた結果、2人で行くことになったのだ。幼馴染みの2人に手紙を送ると、楽しみに待っていると連絡をくれたものだから今からウキウキである。



「そうなんですね!じゃあ私も何処か他国に出かけようかなぁ……」


「それなら、ユーフェミア様と避暑地に行ってみたらどうかしら。隣国のグライツェ皇国なら涼しくて過ごしやすいわよ」


「それいいですね!早速、ユー様にお話してみます!!」



 マリアは嬉しそうにニコニコと笑って、ルルカに避暑地についての話を聞いている。その様子が微笑ましくて私もニコニコしながら見ていると、ルルカが恐ろしいことを言い出した。



「2人とも、恋人と過ごすのが楽しいのは分かるけど。課題はちゃんとこなさないといけないわよ?」


「うっ……分かってるってば!もう半分終わらせてきたから、夏休み中は遊んでも大丈夫…なはずだもん!!」


「ちょっと待ってください、リゼ!?裏切りですよ、それ!!いつ課題やってるんですかぁ!!」


「そりゃ徹夜だよ!!だって私、ブランシェット家から援助されてこの学校に通ってるんだもん!だから、私を通してメアを見る人もいるってことだし、私のせいでメアが何か言われないように必死なの!!」


「それはその通りです!!!!流石です!!!」



 私の言葉に全力で同意したマリアは、



「じゃあ私も、自信を持ってユー様の婚約者ですって言えるように課題やらなきゃじゃないですかぁ!!」



 と言って机に突っ伏した。まだ夏休みは始まっていないのだから余裕はあるはずなのに、今から考えこんでしまうあたりがマリアらしくてかわいい。


 それから私達は、夏休みの計画を立ててカフェを後にした。




大分遅くなってしまったのですが、とっても素敵なファンアートを輝夜様、ゆつき様、さっつんP様にいただいたので、活動報告欄にてご紹介させていただきました。

いつも本当にありがとうございます!!


全部スマホの待ち受け画面にしているので、飴月は見るたびにニヤニヤしております(*´꒳`*)


そして、スピンオフのマリア様のお話も読んでくださった方がたくさんいて、本当に嬉しかったです。


ファンアートも、感想もブックマークも評価も、本当に感謝してもしきれません。ポンコツな飴月ですが、今後もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] 次の単独ライブは、天国開催かな?
[良い点] 単独ライブin墓の底とは恐れ入るセンス。 [気になる点] メア様やユー様にケモミミカチューシャ着けて見ても面白いかもwメア様の場合面倒なことになりそうだけどね… [一言] 供養されるとき、…
[一言] マリア様婚約おめでとー!!! そして、マリア様ルルカちゃんリゼちゃん。お久しぶり~!!! オタクトーク全開の二人に対するルルカちゃんの呆れた目…と言いつつも、そんな二人が大好きなルルカちゃん…
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