表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
交彩アイソーン  作者: 矢口間也(やぐち まや)
7/23

第7話 別世界旅行

ソーポートの街を出て初めての夜、俺と紫は街道と森の境界でキャンプをしていた。たき火を起こして軍用食(レーション)と水を胃に入れる。食べるんじゃない、胃に入れるという作業なんだ軍用食は。俺も紫も一分かからずに作業を終了する。



「青空の下をこんなにまったり歩いたのなんて初めてだったなァ、ただ歩いてただけなのに楽しめた気がする。」

「そうだね、青空でもほとんどは戦場だったもんねわたしたち。」

「進んだのはだいたい40kmかァ、まァゆっくりだったしなァ、明日はもう少し進めるだろ。」



万能端末の地図情報で確認する、ソーポートの街から歩いてきたエリアが詳細表示されている。



「次のクルーンって街まであとどのくらいなのかな?」

「さァな、まァ急ぐ理由もねェし。…食料ぐらいは買い込んどけば良かったか?」

「ううん、軍用食は慣れてるし。簡単な調理ならできるけど料理はできないでしょわたしたち。」

「そうだなァ。」

「だからおいしい料理は街で食べよ?移動中は簡素な方が料理も一入(ひとしお)だって。」

「んー、まァ今はそれでいいか。」

「うん、可能なら後で改善しよ。…ところで。」

「あァ、わかってる。」



俺と紫は銃を抜いて立ち上がる。俺の魔白銃『懺廻(ざんかい)』と紫の魔黒銃『廻天(かいてん)』。体内で練り上げた魔素を充填して撃ち出す個人用の兵器。構えて森の木々の奥を見据える。



「ギリャングゥゥコゥエッビャギャ!」

「コゥーェッディマャ?」

「ロロロパーャザヲトェング!」



昨日見かけたゴブリンが三匹奇妙な鳴き声をあげながらこちらに近付いてきている。一匹が手に小さいナイフを持っているが二匹は非武装。



「三匹、昨日見たゴブリンという生物だ。一匹はナイフを所持、二匹は無手、片方は生け捕りだ。頭を狙え。」

「了解。」



ィィン!!



オルゼイ王国兵を壊滅させたものとは違い小さな光が射出され二匹のゴブリンの頭が吹き飛んだ。残った一匹は状況が理解できないのか周りをキョロキョロ見回している。



ゴッ!!



素早くゴブリンの後ろに回り込み頭を地面に叩き付け動きを止める、紫が手早く手と足をロープで縛る。



「完了。」

「了解。死骸は捨て置け、こいつは実験体だ、色々試すぞ。」

「了解。」



担ぎ上げたゴブリンはか細いうめき声をあげるだけで抵抗は無い、すこし強く叩き付けすぎたのだろうか。まぁいい、どうせこの後叫べなくなるからな。たき火の横に仰向けにゴブリンを転がす。



簡易解析(スキャン)



名無し(ゴブリン種) Lv4 状態:意識不明

スキル

なし



簡易解析(スキャン)の魔術は機能するな。本来なら装備の点検や修理に使う魔術なのだが。しかしやはりレベルというものがこの世界にはあるようだな。紫は個の戦闘能力と推測していたな、俺がLv871、紫がLv809、このゴブリンがLv4か。…雑魚もいいとこだなこれは。あの兵たちや辺境伯はどうだったのか、もう確認できないのが残念だ。



詳細解析(アナライズ)



詳細解析(アナライズ)の魔術、手術などに使われる魔術。身体を開かなくても内臓や筋肉の状態が見える医療分野で活躍している。俺はその魔術でゴブリンの骨格や内臓を見ている。



「中身はかなり人間に近いな、…ん?」



胸部中央、心臓の裏に何か結晶がある。詳細解析と同時に簡易解析を使用する。



魔石 (ゴブリン種)

魔物の血と魔素が混ざった結晶



魔石か、これも知らないものだな。回収しておくか。



「紫、魔石ってやつを取り出す。押さえろ。」

「了解。」



ナイフを突き立て一気に開く、ゴブリンが悲鳴をあげそうになるが紫が拳大の石を口に突っ込んで黙らせる、歯もかなり折れた音がした。肋骨を叩き切り手を突っ込み魔石を取り出す。指の爪ぐらいのサイズの緑色の結晶が俺の手の中に収まる。



「魔石か、…何かの役に立つのかどうか。」

「死骸を捨ててきます。」

「あぁ。…後いいかげんうっとおしいアレらも同様に処分しといてくれ。」

「了解。」



紫の手によって二つの死骸が転がる場所に追加で三つの死骸が追加される。これらは獣たちによって朝までに片付けられることになる。地面に血の跡だけを残して。





★★★★★★★★★★★★★





「ヴァイゼル様、あの2人を追跡させていた斥候の2人が戻りません。」

「なんだと!バレたのか!?」

「わかりません。しかし彼らが夜営したと思われる地点から程近い場所で地面が血に汚れていました。それ以外は何もありませんでした。」

「……。」



三日後、領主館でヴァイゼル辺境伯は頭を抱えた。自領の軍の中でも手練れの斥候を出したというのにこうも簡単に失敗するのかと。もし自分の差し金だと彼らが知り、報復に来るのではと。



「いかがなさいますか?」

「…道中の追跡は中止、クルーンの街に向かった者は彼らの姿を確認したら戻るよう伝えろ。1週間待って姿が確認できなければそのまま撤退してよし。」

「かしこまりました。」



バトラーが部屋から出ていく。辺境伯は1週間後、かなり白髪が目立つようになる。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ