第22話 報酬とその先
「そういやお宅、指揮官って言ってたが男爵だったのか?」
「ああ、そういえば爵位持ちとは言ってなかったね。改めて、私はセイディール・コレファノ名誉男爵だ。ハモン伯爵の下で武功を上げて叙爵された当代限りの名誉男爵だ。特に偉いとかはないよ。」
セイディール・コレファノ
27才 男 Lv88 状態:健康
スキル
鼓舞 士気高揚
剣術 槍術
器用
回復速度上昇
おい、女王よりレベル低いぞお宅。しっかり守れよ。騎士だろう。
★★★★★★★★★★★★★
二時間後、準備が整ったと言われコレファノ名誉男爵の案内で玉座の間に入室する。中央奥の他より一段高い場所に据えられた玉座には先ほど紅茶をぶっかけた女王が正装で座っている。傍らには初老の男。そこから伸びる通路を両側から挟むように八人の男女が立っている。
「セイディール・コレファノ名誉男爵が報告にあがりました。こちらが今回の最大の功労者、冒険者蒼殿と紫殿です。」
片膝をつき頭を下げる名誉男爵。俺たちはその後ろで立ったままだ。
「おい、そこの二人。頭を垂れぬか、無礼であろう?」
一番端の小太りのおっさんが俺たちに向かって意味のわからないことを言ってる。無視する。
「おい!聞こえておるだろう!跪いて頭を下げよと言っておるのだ!」
「なァ紅茶女王、俺たちを呼んだのは豚の鳴き声を聞かせるためかァ?」
「……はっ?」
小太りおっさんは絶句し女王はポカンとしている。並んでる女の一人が肩を震わせて笑いを我慢している。おっさんの顔がみるみる赤くなる。
「今の私への暴言、確かに受け取った。兵士よ!取り押さえろ!」
「全兵士よ!動くな!」
おっさんの声で動きかけた兵士たちが女王の透き通った強い声で止まり、元の位置に控える。
「な、何故です陛下?こやつらは無礼を…。」
「喧嘩の売り買いをしたのはそなただけであろうバフカール子爵、兵士を巻き込むな。ほれ、余は止めぬから自身で二人に殴りかかればよい。」
「なっ!?」
「そもそも余は無礼を受けたとは露ほども思っておらん、理由がそれならそなたの勘違いだ。」
「ぐぬぅ。」
「で、どうするのだ?」
「……出過ぎた真似をしたようです陛下、ご容赦を。」
「うむ、よいか二人とも?」
「元々気分なんて害されてないぜェ?話を進めてくれ。」
小太り子爵が睨んでいるが無視する。特に障害になり得るとは思わないからな。っつーかあの紅茶女王、オンオフ差がすげぇのな。紅茶女王の隣の初老の男が一歩前へ出る。
「では進めさせていただきます。この度、ルルディエルの街がアーカム帝国に攻撃され大打撃を受けました。しかし、そちらの二名の冒険者、蒼殿と紫殿によって帝国兵は壊滅、捕虜も二名確保するという偉業を成し遂げられました。よってここに報酬として金貨8000枚を贈呈いたします。陛下。」
「うむ。」
女王は丸められた紙を持ち目の前まで歩いてきてそれを俺に手渡す。
「民を代表しておぬしたちに感謝を。後で国庫に案内させる、この紙と引き換えに金貨を持っていくがよい。」
「あァ、どぉも。」
女王は微笑み玉座に戻ると表情が引き締まる。あの玉座が精神的なスイッチになってんのか。
「後、捕虜として扱っている女騎士だが事情を鑑みても数日はこちらで預からせてもらうぞ?その後はおぬしたちに引き渡そう。」
「あァ、それまでは王都で宿を取るさァ。」
「うむ、ところでいくつか訊きたいことがあるのだが、よいか?」
「答えられる範囲ならなァ。」
「それでいい。ではまず先月、ヴァイゼル辺境伯領カダス平原でオルゼイ王国兵十万を撃退した二人組というのはおぬしたちで合ってるおるか?」
「合ってるな。」
どよめきが起こる。十万の兵を二人で?ありえん!帝国だけでなく王国も相手にしていたのか!?あれはヴァイゼル辺境伯の妄言ではなかったのか?おい!口が過ぎるぞ!……など色々聞こえてくる。
「おぬしたちは何故我らがチェスター女王国を救ってくれたのだ?」
「結果的にそうなっただけさァ、救うつもりなんてなかった。俺たちは俺たちに武器を向けた相手を殺しただけだ。」
「そうか、可能ならおぬしたちを雇いたいと思っておるのだが…。」
「断る。」
「で、あろうな。わかってはいたが残念だ。ならせめて我らの国を害さないでもらえないだろうか?」
「それはあんたら次第だなァ?俺たちから積極的に攻撃はしねェさァ。だが敵意を向けられたら反撃はさせてもらう、その結果どうなってもお宅らの自業自得だ。」
小太り子爵に目線を向ける。さっきまで睨んできてたくせに目反らしやがった。タマナシかよ。
「それでかまわん、改めて感謝する。余からの話は終わりだ、おぬしたちから何かあるか?」
「なら街の美味い飯屋を何軒か教えてくれ、あときれいな宿を。」
「うむ、わかった。あとで案内役を寄越そう、先程の談話室で待っていてくれ。」
「では、解散とします。」
三人で談話室に戻ったがコレファノ名誉男爵はまだ仕事があると言いさっさと出ていってしまった。そして数十分後…。
「待たせたな、行こうか!」
勢いよく部屋に入ってきたのは女給姿ではなく、女王としてのドレス姿でもなく、一般より少し小綺麗な格好をしたセエラノ女王だった。
あんた、仕事しろよ。




