第20話 女王国王都へ
「お宅、今回の出兵の責任者?」
「いや、現場指揮官ではあるが最上位にハモン伯爵がおられる。」
「指揮官なら十分さァ、このおっさん引き取ってくれ。今は俺が命令権持ってるんだが国の捕虜になるだろォ?お宅に命令権委譲させてくれ。」
「あぁ、わかった。頼む。」
「じゃァちょっとばかし魔素もらうぜェ?」
「魔素?」
指揮官の肩に手を置き魔素を少し抜き取る。
「あぁ、魔力のことか。君は魔素と言うんだな。」
「あァ、住んでる地方によって違うのかもなァ。」
首輪に指揮官の魔素を流すと同時に俺の魔素を抜き取る。問題ないはずだ。
「大丈夫だろうが一応試してくれ、今は喋らないこと、動かないことを命令してある。解除はしない方がいいぞォ、うるせェし万が一にも自死するかもしんねェからな。」
「あぁ、承知した。…片足で立て、…よし。…女王陛下万歳と言ってみろ。」
「女王陛下万歳!」
「…確認した、恐ろしい首輪だなこれは。」
「この国にはねェのかァ?」
「少なくとも私は知らない。」
知らされてねぇのか、知らねェのか、本当に無いのか、判断がつかんな。話していると兵士が一人走ってきた。
「報告いたします!帝国兵は死体のみで生きている者はおりませんでした。後、逃げ遅れていた民を六名保護いたしました。」
「!!…そうか、ご苦労。引き続き処理に当たってくれ。」
「了解、失礼しましたします!」
兵士はまた走って戻っていった。
「すまなかった、そして、本当に感謝する。」
指揮官は深々と頭を下げた。回りの兵士も驚きながらも続いて頭を下げる。
「礼はいらねェよォ、代わりに一つやって欲しいことあんだけどさァ。」
「できることがあれば協力はさせてもらおう。」
「さっきも言ったがこの女は首輪のせいで戦わされてた、被害者側って立場にもっていきたい。お宅の上官にそう進言してくれ、こいつを罰することは国にとって不利益だと納得させてくれ。」
「ふむ、首輪もあるしそこの男も洗いざらい話すだろうからおそらくは可能だろう。」
「いやァよかったなァ。この女今は縛って動けなくしてるが解くとお宅らより強いからなァ、断ってたら死んでたかもなァ。」
「……。」
「冗談だよォ。」
いまだにアラネアの糸で転がったままの女に近付き耳元で話しかける。
「命を助けた、非道な目にも多分あわねェだろ。後は自分でなんとかしろ、…最後の質問だ。」
「…何でしょうか?」
「お前みたいなのは帝国にあと何人いる?」
「三人います、男が二人に女性が一人です。…もし会うことがあれば女性を助けてやってほしい。」
「まっ、そん時の相手の態度次第だな。」
糸を解き立ち上がらせる。女王国兵は身構えたが女が頭を下げ、両手を上げたのを見て警戒が緩む。そしておっさんと共に数人の女王国兵に連れていかれた。
「あの二人はこれから王都へ送られ捕虜として扱われ、帝国の情報を聞き出すことになります。男はあの首輪が付いていますし、女の方もあの様子ではきちんと話をしてくれるでしょうし、すぐにとはいかないでしょうが短期間で釈放されるでしょう。」
「あァ、それでいい。」
「それで君たち二人にも王都へ来て当時の状況を説明してもらいたい。あの子を引き取るのにも都合がいいだろう?」
「……引き取る?」
「捕虜の釈放には身元引き受け人が必要なんだ、君はあの子を引き取るから優しくしてたんだろう?それに我々は帝国兵と戦闘を行っていない、どう侵攻してきたかもわからないんだ。君たちが来てくれた方が話がスムーズに進むんだよ、それに間違いなく報酬も出るぞ。」
「そんなつもりはないんだが、…まァ金は要るかァ。ギルドも機能してねェし。」
海底ダンジョンの魔物が次元収納に入れたままだ、換金したいのにギルドがないんじゃどうしようもない。…ん?海底ダンジョン?……やべっ、皆殺しにしたって言っちまったけど二十人残ってるわ。後ろに立ってる紫に向き直る。
「紫、遺跡でスルーしたあいつらなんだけどよォ…。」
「大丈夫、街で戦闘にはいった時に魔物送っといたから。もう処理済みだよ。」
「さすが相棒。」
「感謝の気持ちはこの世界でししゃもを見つけることで返してね?」
「ど、努力します。」
この海にはいなかったしなァ、てなると川か。きれいである程度大きな川で海から登ってくるところを獲る感じか?漁村探さねェとな…。
「どうかされたか?」
「いや、なんでもねェ。」
「そうか?で、王都には来てもらえるということでいいかな?」
「あァ。」
「よし、では今から行こうか。この街は後詰の軍に任せ我々は王都に向かう!総員準備!」
「はっ!」
控えていた兵士が走り出す。三十分後、街の出口に整列し出発する。王都までは十日ほどかかるらしい、途中いくつかの町と夜営を挟み、魔物を撃滅させながら十日後の昼過ぎに俺たちは王都に到着した。




