表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
せやさかい  作者: 大橋むつお
本編
95/438

095:海老煎餅と要介護3

せやさかい・095 


『海老煎餅と要介護3』 





 要介護3か……



 二枚目の海老煎餅に手を伸ばしながらお祖父ちゃんが呟く。


 マクドで菅ちゃんの兄妹喧嘩を聞いてしもた。


 お母さんが要介護3になって、菅ちゃん一人では手が回らんようになった。菅ちゃんは、午後から休みを取って妹さんと相談してたんや。


 菅ちゃんが泣きごと言うてるようにも聞こえたし、妹さんが薄情なようにも感じた。


 人が感情的に言い合いしてるのは嫌いや。そばで聞いてるだけでも心がささくれ立ってしまう。


 うちの両親もたいがいやったと思う。なんせ父親が失踪して、お母さんの実家に転がり込んでるんやさかい。


 けども、ここに至るまでお父さんとお母さんがケンカしてるとこなんか見たことない。せやさかい、お祖父ちゃんがお母さんをたしなめてるとこを見ただけで足がすくんでしもた……て、言うたよね(^_^;)。


「要介護3言うたら、二十四時間の介護が必要な状態で、特養の入所を考えるレベルやなあ」


「とくよう?」


「特別養護老人ホーム、ベッドから起きたりトイレに行ったり食事をしたり風呂に入ったり、日常生活全てに介護が必要なレベルや。言うても、特養なんて、すごい順番待ちや……菅井先生も大変なんやろなあ」


 菅ちゃんはポカと休みの多い先生や。大事な連絡忘れたり、いらんこと言うてしもたり、言わなあかんこと言わへんかったり。


 せやけど、お母さんの介護があったことを知ると、ちょっと可哀そう。



「特養のアキもなかなかないし、妹さんに助けを求めて逆ギレされてしまいはったんかもなあ……檀家さんにも、そういうお家があるで」


「みんな、どないしてはるのん?」


「いろいろや、市役所に相談したり、家族でもめたり、金策に走りはったり……介護には時間とお金がかかるよってなあ」


「そうなんや……」


 うちも、しんみりしてしもて、海老煎餅のおかわりに手ぇ出そ思たら、お煎餅入れた菓子皿が空になってた。


 ああ……。



 よっぽど残念そうな顔してたんやろね、「ああ、すまん、好物やから、つい食べてしもた」 お祖父ちゃんが申し訳なさそうに頭を掻いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ