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せやさかい  作者: 大橋むつお
本編
51/438

051:エディンバラ・7

せやさかい


051『エディンバラ・7』 





 戦争でメチャクチャになったのはドイツや日本とかの敗戦国だけじゃないのよ。


 イギリスとかの戦勝国も戦死とか爆撃とかで街が破壊され大勢の人が亡くなったわ。生き残った人たちも心が荒んで希望が持てなくなって。それで、少しでも人々を心を慰め、励ましたい。そういう気持ちで軍隊が始めた音楽の祭典がミリタリータトゥーなの。


 頼子さんの解説の通り、夕方になると、エディンバラの街から三々五々とキャッスルヒルの会場に人々が集まって来る。


 キャッスルヒルは文字通りお城の丘。


 せやさかいに、丘の下、エディンバラの町々から大勢の人が丘を目指して集まって来るのが見えるのんよ! なんか魔王を打ち倒した勇者とか降臨した神の子を出迎えるみたい。静かな期待と一体感が迫ってきてしもて、始まる前から留美ちゃんと二人ドキドキしてしもた(^▭^;)!


 それにそれに、エディンバラの街はネオンやら電飾が全然あらへん。


 あらへんさかい、街も街灯やら家々の灯りだけに照らされて、その照らされてる建物が、まるでRPGに出てくる始まりの街みたい! みたいっていうか、そもそもそういうRPGとかアニメとかは、こういうイギリスとかドイツとかのヨーロッパの街をモデルにしてるさかい、もう本家本元っちゅうわけですわ! そこを町の人やら観光客の人やらが上って来る。お城もきれいにライトアップされて、振り返った会場とお城のゲートのとこはリアルかがり火! 


 めっちゃファンタジー! 


 ゲートタワー(大手門)の上にはユニオンジャックを真ん中に五本の旗が翻てって、ゲートの両脇にはボーボーとかがり火が焚かれてる。って、さっきも言うたねえ(^_^;)。ユニオンジャック以外の旗は分からへんけど、どれも中世ヨーロッパの感じで、これから始まるミリタリータトゥーへの期待をいやが上にも膨らませる!


 パーパプププーーパプーー


 ゲートタワーの向こうから何十ものバグパイプの響きが地を這って立ち上がる。


 ほんで十秒ほどすると、バグパイプとドラムの団体さんが威風堂々! 続々と現れる!


 パーパプププ パッププーー ドンガラドンドン ドン ダララララ ドン


 どんだけ居るんや!? 


 もう、全校集会かいうくらいの数のバグパイプとドラム!


 バッキンガム宮殿の衛兵みたいなんも居てるし、女子高生と同じチェック柄のスカートに白のブーツは昔のAKBみたいやけど、同じチェックの布を肩から垂らして、頭にはごっつい黒熊の帽子。それが全校集会、それも大規模の私学かいうくらいパレードしてくるんは、ほんまに圧巻!!


 そんで、出てくるのは軍楽隊ばっかりやない。民族衣装の女の人が一学年分くらい出てきて民族舞踊っぽいダンスしながら歌ってくれたり、アメリカの海兵隊やら、いろんな国の軍楽隊やらグループやらが素敵な音楽を聞かせてくれて、パフォーマンスを見せてくれる!


「二年前は日本の自衛隊も出て、和太鼓やら剣劇やらを見せてくれて、とっても好評だったのよ」


 頼子さんは適度に解説を入れてくれる。ソフィアさんは、時々翻訳機で訳しては頷いてる。お互いにええ勉強になるわ。


「ラスト、ちょっと感動的かもよ」


「え、どんなんですか!?」


「ま、お楽しみ(≧v≦)」


 頼子さんは、可愛く鼻にしわを寄せる。いったいなんやろ? 留美ちゃんと顔を見かわした。


 アナウンスが入った……言葉は分からへんけど、フィナーレという単語で『終わりの挨拶』やということが分かる。


 &%$#@!!


「「キャ」」


 指揮者の将校さんが、なにか怒鳴ったんで留美ちゃんともども驚く。


 怒鳴ったんとちごて号令やと分かったんは、映画かなんかで聞いたことのある曲が演奏されたから。


「ゴッド セイブズ ザ クィーンや!」


 そう、イギリス国歌! まわりの人にならって起立する。自然に国歌が歌えるのはええもんやと思う。


 せやけど、本物の感動は、この次やった。



 ターータタラ タタタ ターン タタラタタターン




 ウグ…………(´;ω;`)




 反射的に涙が出てきた。


 なんと『蛍の光』が演奏され始めて、さっきの国歌と同じに、会場のみんなが歌い始めた!


 英語の歌詞は分からへんけど、うちも日本語で歌う。



 ほたーるのひかーり 窓のゆうーーき♫ 文読む月日かさーねつーーつ♪



 ソフィアさんがビックリし、ジョン・スミスがサムズアップ。


 終わったら、そばに居てた人らが次々にハグしてくるのにはまいった(^_^;)。




☆・・主な登場人物・・☆


酒井 さくら      この物語の主人公 安泰中学一年 

酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。

酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居

酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主

酒井 詩        さくらの従姉 聖真理愛女学院高校二年生

酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母

榊原留美        さくらの同級生

夕陽丘・スミス・頼子  文芸部部長

瀬田と田中(男)       クラスメート

田中さん(女)        クラスメート フルネームは田中真子

菅井先生        担任

春日先生        学年主任

米屋のお婆ちゃん

佐伯さんのお祖母ちゃん 釋良袋(法名) 法子(俗名)

ソフィー        ソフィア(メイド見習い)

イザベラ        メイド長&女王秘書(サッチャーの異名を持つ)

ジョン・スミス     ボディーガード




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