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せやさかい  作者: 大橋むつお
本編
47/438

47:エディンバラ・3

せやさかい


047『エディンバラ・3』 





 英語とはちゃう言葉!



 むろん日本語でもない言葉でサッチャーさんが挨拶する。


 頼子さんも同じ言葉で挨拶を返す。


 え、どないなってんのん( ゜Д゜)?


 不思議に思うと、次からは日本語になった。


 たぶん、うちらにも分かるようにという気遣い。それにしても、サッチャーさんも日本語がお上手。


 感心してたら、うちらの前に来た。


 背筋が伸びてキリっとしてて、正面からうちの顔見て、うちの全部が見すかされたみたいで一瞬ハイジが初めてクララの家に行ったシーンを思い出した。いよいよロッテンマイーヤーさんや(^_^;)。


「お待ちしておりました。どうぞ我が家だと思って素敵なバカンスをお過ごしください、さくらさん、留美さん」


 にこやかに握手してくれはる。


 にこやかやけど、手がちょっと冷たい……うちの手ぇが熱いのんかもしれへん。


 あとで聞いたら留美ちゃんは熱く感じたって言う。留美ちゃんはうちよりももっと緊張して手ぇが冷たなったんかもしれへん。


「「よ、よろしくお願いします」」


 留美ちゃんと声が揃って、頼子さんがクスリ。


 せやけど、にこやかなんは、握手の時だけ。他のメイドさんはニコリともせえへん。


 それから、サッチャーさんは順番にお屋敷の人らを紹介してくれはる。執事のアーネストさんは分かったけど、他の人は上の空で聞いたそばから忘れてしまう。


「では、お二人のお部屋にご案内します。お荷物が整理できましたらスィティングルームにおこしください、ご休憩いただきながら、いろいろとご説明させていただきます」


 サッチャーさんが指を立てると、メイドさんがわたしたちの荷物を持ち上げた。


「それから。わたくしは、お嬢様の世話係で、イザベラと申します。サッチャーでもロッテンマイヤーでもありませんので、よろしくお願いいたします。では、お荷物を」


 サッチャ……イザベラさんの目配せでメイドさんたちがお返事「イエス マーム」、これは中学生でも分かる。


 

 このお屋敷で、一番の権力者はサッチャーと陰では呼ばれてるイザベラさんやった(^_^;)



「サッチャーが来てるとは思わなかった」


 スィティングルームに行く前に、頼子さんに招集を掛けられた。


「イザベラさんじゃ……」


「鉄の女だからサッチャー。ま、あなたたちがどう呼ぼうと構わないけどね」


 いつになく、頼子さんはホッペを膨らましてる。ま、事情がありそうなんで、あんまり突っ込まんようにする。


「日本語が喋れるのは、サッチャーさんとジョン・スミス。あとは喋れないと思っといて。喋る必要のある時は、この屋敷の者は翻訳機持ってるから大丈夫だけど、大事な話とか込み入ったことは、とりあえず、わたしに言ってもらえると嬉しいわ。エディンバラの観光は明日から、なにかリクエストとかあったら、前日までに言っといてね、予約とか必要な所もあるしね。あ、合宿ってことだから、博物館的なところはいくつか入るから覚悟ね。食事が口に合わないとかだったら言って、無理して食べてると体壊しちゃうから、それと……あ、あなたたちからは、ない?」


「えと……個室でありがたいんですけど、できたら三人一緒の方が……」


 日ごろは、いっしょに着替えるのも嫌がる留美ちゃんが意外な提案。


「あ、いいわよ。うん、こういうのがいいのよ。旅先で気が変わって、いつもとは違うことをしたくなる。うんうん、やろやろ。うん、パジャマパーティーだ!」


 頼子さんはえらい! 留美ちゃんが、心細さから言ってるのは、うちにも分かってる。それを留美ちゃんの積極性ととらえて、逆提案にした。


 それから、パソコンでエディンバラの街を検索、明日から周る観光スポットを、あーでもないこーでもないと話し合う。



 トントン



 ドアがノックされてメイドさんが入ってきた。英語で……イザベラさんがお待ちです的なことを言っている。言ってから翻訳機のスイッチを押した。


『イザベラさんがお待ちですので、リビングルームへお越しください』


 おお、うちが思った通りや! 


 それから、スィティングルームというのがリビングルームやいうことも分かった。


 それと、メイドさんの胸には、お出迎えの時には付いてなかった名札が付いていた。これは、サッチャーさんの気配りやろか?


 名札には、カタカナで『ソフィア』と書いてある。彼女の愛称は『ソフィー』やねんけど、そう呼ぶのは、もうちょっと先になってから。この先、頼子さんにもうちらにも縁が深くなる人やねんけど、それは、さらに先のこと。


 

☆・・主な登場人物・・☆


*酒井 さくら      この物語の主人公 安泰中学一年 

*酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして娘のさくらと共に実家に戻ってきた。

*酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居

*酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主

*酒井 詩        さくらの従姉 聖真理愛女学院高校二年生

*酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母

*榊原留美        さくらの同級生

*夕陽丘・スミス・頼子  文芸部部長

*瀬田と田中(男)       クラスメート

*田中さん(女)        クラスメート フルネームは田中真子

*菅井先生        担任 スガちゃんと呼ばれる

*春日先生        学年主任

*米屋のお婆ちゃん

*佐伯さんのお祖母ちゃん 釋良袋(法名) 法子(俗名) 幽霊

*ジョン・スミス     女王陛下の諜報員

*イザベラ        女王陛下のメイド長 陰ではサッチャーと呼ばれる

*ソフィー(ソフィア)  女王陛下のメイド



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