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せやさかい  作者: 大橋むつお
本編
44/438

44:エディンバラて……?

せやさかい


044『エディンバラて……?』 




 魔法使いになれるかもぉ!


 廊下を隔てた部屋からことはちゃんの陽気な声。


 うちに向けられた言葉やと気ぃつくのに一瞬の間ぁが空く。


 詩ちゃんは、落ち着いたベッピンさんで、廊下を挟んだ部屋からはしたなく声をかけてくるような子ぉやない。一瞬の間に、うちの後ろに来て「エクスペクト・パトローナム!」と言うまで気ぃつけへんかった。


「え、えと……(^_^;)」


「守護霊よ守りたまえ! という呪文。エディンバラはハリーポッター発祥の地なのよ。知らなかった?」


「ええ、ほんまあ( ゜Д゜)?」


「えーー!? 明後日からエディンバラに行こっていう人が!」


「あー、頼子さんにまかせっきりやから(;^ω^)」


「少しは調べなさいよ、ごりょうさんだって、知らずに近寄ったら、ただの森でしかないよ。はい、これあげる」


 あ、ごりょうさんいうのは仁徳天皇陵のことです。堺では、親しみを込めて『ごりょうさん』と言います。


 目の前に差し出されたのは、映画でも見たハリーポッターの魔法の杖、たしかニンバスなんちゃら。


 聖真理愛女学院はキリスト教系の学校やけど、選択科目とかに魔法の授業でもあるんやろか?


「あーー、それ違うから。魔法はキリスト教以前の土着文化の産物。だからこそ面白い。杖はUSJのお土産だから~」


 それだけ言うと、詩ちゃんはお風呂セットを抱えて一階へ降りて行った。


 ちょっとびっくりした。


 詩ちゃんは、真面目なお嬢様タイプで『けいおん!』の澪ちゃんという感じ。


 今みたいに、魔法の杖を振り回して従妹にチョッカイかけてくるような子ぉやない。


 …………どうも、一昨日の部活で次期部長に指名されたことが影響してるみたい。


 もう一つビックリしたんは、文芸部の合宿が明後日に迫ってるいうこと。


 頼子さんがしっかりしすぎてるんで、うちはお母さんからパスポートもろて、着替えとかをキャリーバッグに詰め込んだらしまいやとタカをくくってた。


 そうや、ちょっとくらい調べとかならなあ。


 パソコンを立ち上げてググってみる。


 エディンバラ……エディンバラ……っと…………え!?


 エディンバラて、てっきりアメリカやと思てた。イギリスなんですわ。ハリーポッターて、イギリス人やったんか!


 京都府と姉妹都市……「きょうちゃん! エディー!」 ムフフ、黒髪とブロンドの姉妹都市が萌えキャラになって頭に浮かんでくる。


 浮かぶと、ゴニョゴニョとイラストを描いてみたりする。エディーは、なんやフェイトみたいな甲冑乙女になってしまう。


 あかんあかん、もっとググっとかなら。


 なになに……秋篠宮家の真子様がご留学になってた? 


 オオ、ロイヤルプリンセスやんか!


 エディンバラ城は、フォグワーツの魔法学校みたいに岩山に屹立してるし、これはもう、ファンタジー全開になってきた!


 せやけど、文芸部の夏季合宿て、なにやるんやろか?


 そういえば、市の図書館に本を借りに行ったぐらいで、文芸部らしいことはほとんどやったことがないことに思い至った。


 そろそろ盛りに入った夏の夜は深々と更けていくのでありました…………。



☆・・主な登場人物・・☆


•酒井 さくら      この物語の主人公 安泰中学一年 

•酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。

•酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居

•酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主

•酒井 詩        さくらの従姉 聖真理愛女学院高校二年生

•酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母

•榊原留美        さくらの同級生

•夕陽丘・スミス・頼子  文芸部部長

•瀬田と田中(男)       クラスメート

•田中さん(女)        クラスメート フルネームは田中真子

•菅井先生        担任

•春日先生        学年主任

•米屋のお婆ちゃん

•佐伯さんのお祖母ちゃん 釋良袋(法名) 法子(俗名)



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