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せやさかい  作者: 大橋むつお
本編
41/438

041:不発の漫才いう感じで縫いぐるみをもらった

せやさかい・041


『不発の漫才いう感じで縫いぐるみをもらった』 




 檀家回りをしてくると、いろんなものをもらってくる。



 あ、うちと違て、うちの坊主たち。


 お祖父ちゃん、おっちゃん、てい兄ちゃん。


 お饅頭とかの和菓子が多いねんけど、商品券とかビール券とか、手縫いの手袋、映画の優待券、宝くじ、とか色々。


「こんなんもろてきた」


 てい兄ちゃんが衣の袖から出してきたんは、UFOキャッチャーの景品みたいな縫いぐるみ。


 二頭身半の男の子と女の子。着てるTシャツの前には、男の子が「1」、女の子が「2」とプリントしてある。


「てい兄ちゃんは、こんなんばっかりもろてくるなあ」


 こないだは、ラジコンのアブラムシをもろてきてリビングで見せびらかしてた。


「もーーーー! 兄妹の縁切る!」


 ことはちゃんは、それ以来てい兄ちゃんと口をきいてない。せやさかい、うちに見せるんや。


「お腹押してみい」


「うん……」


「自分のお腹押してどうすんねん!」


「あ、そっちか(^_^;)」


「グホ! ちゃうちゃう、縫いぐるみのお腹や(>◇<)!」


 これくらいのボケはかまさんとおもしろない。


 で、で、反応とリアクションを考えながら、大げさに手を振り上げる。


 きゃ~エッチ!……やったら、「よいではないか、よいではないか、グフフ……」


 プ~~やったら、「ウ! おぬし、なにを食ったあ!?」とかね。

 


 エイ!



 勢い付けて押したら……チャンチャカチャン、チャンチャカチャン、チャチャチャチャチャッチャカチャン(^▽^)/


 なんと、ラジオ体操第一が陽気に鳴り出した!


「なるほどお! ということは……」


「2」の方を押してみる。今度は予想通りラジオ体操第二が流れ出す。


「なるほどお……おもしろいねえ」


 アイデアやねんやろけど、びっくりするほどの面白さやない。


「タイミングがええと、ふたり揃てラジオ体操しよるらしいでえ」


「プ、ほんまあ?」


「ほんまほんま、あげるさかい、毎朝お腹押してみい」


 ということで、不発の漫才いう感じで縫いぐるみをもらった。


 



☆・・主な登場人物・・☆


•酒井 さくら      この物語の主人公 安泰中学一年 

•酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。

•酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居

•酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主

•酒井 詩        さくらの従姉 聖真理愛女学院高校二年生

•酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母

•榊原留美        さくらの同級生

•夕陽丘・スミス・頼子  文芸部部長

•瀬田と田中(男)       クラスメート

•田中さん(女)        クラスメート フルネームは田中真子

•菅井先生        担任

•春日先生        学年主任

•米屋のお婆ちゃん

•佐伯さんのお祖母ちゃん 釋良袋(法名) 法子(俗名)

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