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せやさかい  作者: 大橋むつお
本編
2/438

002:意気込んで二年ぶり!

せやさかい・改(増補改訂版)


002:意気込んで二年ぶり!   






 うちは意気込んでた!



 なんちゅうても、今日からはここの家の子になる。


 むろん戸籍は別やけど、おなじ酒井の苗字で暮らしていくんや。いとこのテイ兄ちゃんもコトハちゃんとも兄妹姉妹同然で暮らしていくんや。自慢の笑顔で「よろしく!」とかまさならあかん。


 玄関わきの鏡をチラ見して笑顔のチェック。


 申し分のない笑顔……と、思たら、目尻に緊張感。頬っぺたも微妙に強張ってるし。


 目をゴシゴシ、頬っぺたをペシペシ。


「ただいま~」


 さっきの「いくで」でちょっとだけ見せた緊張感はどこへやら、お母さんはお気楽に入っていく。


「ちょ、待っ……」


 急いで上がろうとして……あかんあかん、靴! 行儀よう靴先を外に向けて揃えて、お母さんの靴よりも壁際に置く。「よろしく!」とかますにしても、この辺のお行儀と遠慮は気にかけとかならあかん。


――いやあ、歌ちゃん、ごめんなさい、お迎えにも行けなくってえ(^▭^)!――

――いえいえ、そんなぁ(^_^)――


 奥の方では、おばちゃんとお母さん、大人のご挨拶が始まってる。後れを取ったらあかん!


 オワ(>△<)!!


 気がせいて、こけてしもた(^_^;)!


 人類の先祖はお猿さんいうことを思い知らされる。ジワ~っと尾てい骨から痛みが上ってきてジンワリと涙が滲む。


 ササッと尾てい骨を労わって、廊下の先のリビングへ。


「なんか音がしたけど、さくらちゃん大丈夫?」


「アハハ、だいじょうぶだいじょうぶ(o´罒`o) 」


 挨拶もぶっとんで、ヘラヘラと照れ笑い。緊張はほぐれたけど、不細工なことこの上ない。


「今日は、おばちゃん一人なのよねぇ」


 すまなさそうに、お茶を淹れるおばちゃん。


「専念寺さんのご住職が入院されて、旦那は(伯父さんのこと)手助けに出てるし、お父さん(お祖父ちゃん)と諦一は檀家参りに出ちゃって、ことはは部活だし、ごめんなさいね」


「いいですいいです、なんかお手伝いしましょか?」


「いいわよ、ゆっくりして。荷物とかは、それぞれ二人の部屋に運んであるから、あとで見てちょうだい」


「すいません、お姉さんの手を煩わせて」


「いえいえ、男たちがやってくれたから。三人とも、歌ちゃんが帰って来るんで、ちょっとハイなんですよ」


「ああ、アハハ、期待されたら辛いなあ~」


「あ、お腹空いてたら、これでも食べて。今朝焼いたばかりだから、まだ焼き立て」


「おお……」


 さっき介護喫茶からしてきたパンと同じ匂い。家やったらすぐに手ぇ出すねんけど「ありがとう」か「おいしそう」とかのお愛想がいる。それでワンテンポ遅れたとこにおばちゃんがかぶせてくる。


「あ、部屋先に見とく!? そうよ、足りないものがあったら、買って来るって旦那言ってたから、そうしよ! 帰ってくる前に電話したらホームセンター寄ってきてくれるから。さ、いこっ(`•︵•´) !」


 おばちゃんはサザエさんみたいに思い立ったらスグの人みたいなんで、ツバを飲み込んで付いていく。


「ほら、こっちがさくらちゃんの部屋だよ」


「ええ、こっち?」


 おばちゃんは、予想していたコトハちゃんの部屋ではなく、向かいの部屋を開けた。


「使ってもらった方がいいの、閉め切ってると陰気臭くなるでしょ」


 そこは、二階の客間ということになっていたはずや。


「二階の客間って客間につかうことってないしね、コトハもさくらちゃんも年頃だしね」


 コトハちゃんと同室と言うのは、かすかな楽しみやったんで、ちょっと寂しいんやけど、おばちゃんの好意なんや。


 せやさかい「あ、ありがとう、とっても嬉しい!」。よそ行きの喜び方をしてしまう。


 お母さんは、むかしの自分の部屋を使うらしい。


 足りないものなんか思いつかへんかったんで、リビングに戻ってお茶にする。おばちゃんが途中までやっていたお茶の用意はお母さんがやって、おばちゃんは恐縮している。まだ、ちょっとよそ行きやけど、大人同士、なんとかやっていくやろう。そんで、パンをいただこうと手を伸ばしかけたら……。



「おお、さくらあ! 来たかあ!」



 玄関の靴で分かったんやろう、お祖父ちゃんは、ドシドシとリビングに入ってくると、いきなりハグしたかと思うと、頬っぺたを合わせてスリスリする。


「あ、ちょ、あ……(>‐<)」


 嫌やとも言えず、為されるままになっておく。お爺ちゃんにとっては、いつまでも可愛いくて可哀そうな外孫のまま。


 やっと解放されて、ソファーに座ると尾てい骨に響いてパンどころやなくなる。


「なんやぁ、涙ぐんでからに……そうかそうか、さくらも中学生や、困ったことがあったら、なんでもお祖父ちゃんに言うんやで」


 今度は、髪の毛をワシャワシャされる。


 お祖父ちゃんがころもを脱いで寛いだころに、おっちゃん(伯父さん)とテイ兄ちゃんが帰って来る。


 おお……!


 テイ兄ちゃん見てビックリした。衣姿のテイ兄ちゃんは、二年前のグータラな大学生と違て、立派な坊主になってた。


「お、おう、さくら、今日からやってんな(''◇'')」


 ドギマギするとこは昔のまんま。


 そんで、もっとビックリしたんは、部活から帰って来たコトハちゃんを見た時やった……。




☆・・主な登場人物・・☆


酒井 さくら    安泰中学一年 この物語の主人公

酒井 歌      さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って実家に戻ってきた。

酒井 諦観     さくらの祖父 如来寺の隠居

酒井 諦念     さくらの伯父 諦一と詩の父

酒井 美保     さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 

酒井 諦一     さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる

酒井 ことは  さくらの従姉 聖真理愛高校二年生

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