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せやさかい  作者: 大橋むつお
本編
169/438

169『耳をすませば・2』


せやさかい・169


『耳をすませば・2』    






 アニメの『耳をすませば』はこういう話。



 中三の月島雫は大の読書好き。


 ある日、図書室で借りた本の帯出カードに自分より先に本を借りている天沢聖司の名前を発見する。


 同時に借りた他の本を見ると、どの帯出カードにも雫より先に借りている天沢聖司の名前がある。


 そこから聖司への関心が生まれる。


 その後、雫のドジが原因で聖司本人と知り合うことになるが、印象はさんざん。


 やなやつ! やなやつ! やなやつ!


 家に帰って机の前に座っても悪態が止まない雫。しかし、いろんな事件があって、二人は急速に接近していって恋に落ちるという青春ラブストーリー。



 実は、うちのおっちゃんとおばちゃんも、似たような経過をたどって結ばれたというお話。



 当時大学四年やったおっちゃんは大学の図書室で卒論を書いてた。


 そんなある日、三回に一回同じテーブルの対角線の席で本を読んでる小柄な下級生に気づく。


 チラ見すると、保母さん志望なのか、絵本や児童書、保育関係の本を熱心に読んでることが分かった。


 下級生は、読み切れない本を閉館間近に借りに行く。おっちゃんはチャンスやと思った。


 おっちゃんも、適当な本をカウンターに持って行って、彼女の後ろにくっ付いて帯出のために出した学生証で名前を確認――そうか、月島美保というんか――


 こういうことを繰り返して、おっちゃんは一計を案じた。


 彼女が読んでる叢書は文学の棚の中段にあるのやけど、それをこっそり最上段に移した。


「あ、届かない……」


 彼女が困っていることを隣の書架の隙間から見てたおっちゃんは、自然な感じで文学の棚に回って彼女に声をかける。


「どうかしました?」


「あ……その……」


「あ、高くて取れへんねや……蔵書点検で配置が換わったんやね。ちょっと待ってや」


 おっちゃんは、そばの壁に脚立があるのを確認してて、その脚立を取りに行こう……としたら、その脚立が無い。


「あ、いいです。司書さんに頼みますから」


「いやいや、これくらいのもんは……」


 おっちゃんは、書架の一番下に足を掛けて(ちゃんと靴は脱いだ)、う~んと背伸びをした。


「う~~~ん」


「大丈夫ですか?」


「大丈夫、大丈夫……ほら、届いた!」


「やったあ!」


「あ……うわ!」


 安心して着地しようとしたおっちゃんは、バランスを崩して倒れる!


「うわーー!」「きゃーー!」


 ドッシン!


 二人仲良く通路に倒れる、彼女が下でおっちゃんが上というラブコメ的展開。


 これで接近に成功したおっちゃんは『キネマ旬報』でジブリの新作アニメがロードショーになることを知って彼女を誘った。


 主人公が彼女と同じ月島という苗字なのはスクリーンを見るまで気が付かへんかったらしい……ほんまかな?


 とにかく、シュチュエーションとしては完璧!


 そして、彼女が卒業するのを待ってプロポーズしてゴールインしたそうな。



「でも、それだとアニメ観ないでも結婚したんじゃないですか?」



 銀ちゃんが身もふたもないことを言う。


「それがね、アニメ観るまではプロポーズされたら断るつもりでいたの」


「そうなんですか、だったらどうして?」


 留美ちゃんが膝を乗り出す。


「だって、諦念先輩の家ってお寺さんでしょ……」


 ああ、分かる分かる、陰気臭いし大変そうやし。


「でも、映画観たら、なんか運命みたいに感じて、影響されやすいのよね……あ、付き合わせちゃったわね。そうだ、晩御飯食べてってよ(^▽^)/」


 留美ちゃん、銀ちゃんもいっしょの晩御飯になりました。


 部室が我が家というのんは、ほんまにええことです(^▽^)/。


 


 


 


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