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せやさかい  作者: 大橋むつお
本編
166/438

166『返ってきた手紙』


せやさかい・166


『返ってきた手紙』    





 なんでもメールやラインで済ませる現代、手紙は出すことももらうことも珍しくなった。



 直近で手紙を出したのは年賀状。


 厳密には年賀状は葉書やさかいに手紙ではない。


 便箋にお便りを書いて封筒に入れて切手を貼ってポストに入れたのは……ええと……ええと……小学校の時に『お手紙の練習』というのんで、授業でお母さんに手紙を書いて出して以来?


 ってゆーか、きちんと手紙を出したことが無い!


 そのわたしが手紙を出した。



 というのは、小学校でいっしょやったAさんのことが気になったから。



 留美ちゃんのお母さんが看護師やってはるのは、どこかで紹介したわよね。


 コロナ感染者を引き受けてる病院で、留美ちゃんのお母さんはめっさ忙しくって、何日も家に帰られへんのやそうです。


 そのお母さんが帰ってきはって、久々の親子の会話で入院患者の中にAさんのお母さんらしい人が居てるのが分かった。


 人違いかもしれへんねんけど、めっさ気になったわたしはAさんに手紙を書いたというわけです。



 その手紙が戻ってきた!



 え、なんでえ!?


 封書の表を見たら『料金不足』の紙が貼ったーる!


 わたしはテイ兄ちゃんを恨んだ。


 なんで手紙が戻ってきてテイ兄ちゃんを恨むかと言うと、封書の料金が分からへんので、テイ兄ちゃんに聞いたわけ。


「ああ、82円や」


 そない言うたさかい、おばちゃんに八十円と一円切手二枚をもらって出したわけなんです。


 ググってみると84円。


 たった二円の不足で、わたしの純情は届かなかった!


「テイ兄ちゃん、封書は84円やったやんか!」


 檀家周りから帰ってきたテイ兄ちゃんに詰め寄った。


「え、うそ、82円やろ」


「ほれ、料金不足で返ってきたし!」


「え、え?」


 テイ兄ちゃんもスマホでググって84円を確認してビックリしてる。


「いつの間に値上がりしたんや?」


「いつの間にて、毎月『如来寺便り』とか出してるんちゃうん?」


「あれは料金別納やさかい、気ぃつけへんかった」


「りょーきんべつのう?」


「数が多いさかい、料金は別払いで、いちいち切手貼れへんいうこっちゃ。しかし、いつの間に」


 改めて、スマホ確認のテイ兄ちゃん。


「なんと、2017年……いやはや三年も気ぃつけへんかったんやなあ」


 感心すると、わたしなんか、居らんかったみたいに冷蔵庫からアイスを出して自分の部屋に行ってしまいよった。


 はてさて、もっかいやり直そか。


 そう思って、手紙を読み返すと――これは書き直さならあかんやろ――いうくらいにひどい。


 まあ、明日にでも書きなおそ。


 そう思って四日がたって、まだ、よう出せへんさくらでした(^_^;)。


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