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せやさかい  作者: 大橋むつお
本編
130/438

130:『英語でも日本語でもない……』


せやさかい・130


『英語でも日本語でもない……』  





 う~~~~~~~~~~~ん 軒並み中止や。



 頼子さんのために堺の春を撮ろうと思たのに、ほとんどの行事が中止になってしもてる。


『仕方ないよ、選抜高校野球だって中止になったんでしょ……それに、あんたたちも休校中なんだし、あちこち出歩いて映像撮ってきてくれって言うのも、考えたら無理なお願いだったのよ』


 モニターの中で頼子さんは済まなさそうにしてる。


「こないだの動画、どうでしたか?」


『うん、よかったよ。大仙公園はわたしも知らなかった。地元民なのに知らないことって多いよね。でも、留美ちゃんはスゴイね、いろいろ知ってるんだよね』


「あ、そんな(^_^;)」


『能ある鷹はナントカだね』


「鷹だなんて……たまたまですぅ」


『あの、平和の塔だっけ、三角だったのは知ってたけど、摂津・河内・和泉を表してたって知らなかったわよ』


「いえ、記念碑とか銘板とか見るの好きなもんですから……」


 はにかみ屋の留美ちゃんは、赤い顔して俯いてしまう。


『わたしも宮殿から一歩も出してもらえなくて、もう引きこもりみたいよ。まあ、動ける範囲で面白いことあったら知らせっこしよっか』


「はい、なんかあったらお知らせします」


『うん、じゃ、今日はこんなとこで。バイバイ……アハハ、ダミアも手振ってくれるんだぁ、バイバイ、ダミア~』


 あたしも留美ちゃんと頬っぺたひっつけるようにして手を振って、嫌がるダミアにも前足を振らせる。


 ニャーー。


 モニターの頼子さんが消えると、サッサとダミアは部屋を出ていった。


 二人では、さすがに本堂裏の部室広すぎる。


 昨日は――あと一日――と伸ばしてきたお雛さんも片づけた。例の三人官女を揃えてあげようとねばったんだけど、お母さんに聞いても分からないし、家の前で出会ったのも幻だったのか、それっきり。


 それで、今日からは留美ちゃんと二人で、わたしの部屋でやっている。



 しかし、こうなると手持ち無沙汰……。



 卒業式になったら、頼子さんに、あーもしよう、こうもしようと考えてたんやけど全部パー。


「あ、蛍の光……」


「え……ほんと」


 微かに『蛍の光』が聞こえてくる、どうやら廊下を挟んだことはちゃんの部屋から。


『蛍の光』は、去年の夏エディンバラ城のミリタリータトゥーで、原曲の『Auld Lang Syne 「オールド・ラング・ザイン」』を聞いて大感激したんで、メロディーを聴くだけでワクワクしてくる。


「……日本語でも英語でもないよ」


「なんやろねえ?」


 思わず、詩ちゃんの部屋のドアに寄ってしまう。


『あ、入っといでよ』


 詩ちゃんの声がして、わたしらは「それでは……」とお邪魔する。


 詩ちゃんもパソコンを付けて動画を観ていて、モニターからは、よくある卒業式の動画が写ってて、今まさに『蛍の光』を斉唱してる。


 どこにでもある中学校の卒業式の様子みたい……『蛍の光』を歌ってるし……でも、その言葉は英語でも日本語でもなかった……。






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