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せやさかい  作者: 大橋むつお
本編
122/438

122:『造反有理』


せやさかい・122


『造反有理』  






 反逆すのるには道理がある……という意味らしい。



 ほら、大仙高校の水道管破裂事故で、旧館の裏階段通って避難した時に壁に赤ペンキで書かれてた四文字熟語。


 帰ってからテイ兄ちゃんに聞いたけど「仏教用語には無いなあ」という返事。お祖父ちゃんに聞いてみた。


「ああ、反逆するのには理由があるいう意味や」


 え、当たり前やん。反逆とか反抗とかは、なんか気に入らんことがあってやるもんや。あ、『理由なき反抗』いうのもあったっけ。あれは映画やし。


「お祖父ちゃんが若かったころはなあ、あっちゃこっちゃで学園紛争ちゅうのがあってな。授業も受けんと、学校の中で暴れたり、もの壊したりしとった奴らがおった」


「校内暴力?」


「まあ、そんなもんやけどな。そこに理屈をつけよった。学校や社会は我々学生や生徒に、秩序への一方的屈従を強いるものであって、それは打倒され破壊されなければならない、とかな」


「なんや、難しいなあ」


「やってることは校内暴力や、褒められたもんとちゃう。せやけど、なんでそんなカビの生えたような言葉知ってんのん?」


「ああ、それはね……」


 スマホの写真をお祖父ちゃんに見せる。


「これは……大仙高校か?」


「うん……て、なんで分かんのん?」


「わし、大仙の卒業生やからなあ」


「え、旧制中学!?」


 交流会のファッションショーで見た詰襟の制服を思い出す。


「アハハ、そこまで歳やないわ」


 そう言うと、お祖父ちゃんは衣を着て檀家周りに出かけて行った。



 ネットで調べてみた。



 造反有理いうのは中国の毛沢東マオ・ツォートンいう人が中国の体勢を倒したり、文化大革命(なんやろ、文化祭の革命?)やるときのスローガンやったとか。昔からあった『造反無道』のひねりみたい。


 むつかしいので、大仙高校を調べる。


 字ぃ読むのはメンドイから画像を見ると、旧校舎の写真、外観は、こないだ見た通りやったけど、内部は剥き出しの配管なんか無くてスッキリしてる。仁徳館いうのが正式な名前。文化祭やら地域の行事、選挙の演説会やら投票所にもなって、青春映画のロケにも使われた様子が写ってる。


 いろんな思い出がある建物なんや。


 スクロールすると、仁徳館に赤旗が林立して、立て看板が並んでるのがあった。これやろか、学園紛争いうのんは?


 あ、造反有理や!


 壁に、あの造反有理がピカピカのペンキで書かれてて、その前にヘルメット被ったニイチャンらが腕組みして立ってる。傍の旗には『大仙反戦反帝連盟』と書かれてる。なんや、怖い。


 その中で一人だけノーヘルで学生服いうのが写ってる。画像下のURLをクリックすると、別のサイトに飛んで、さっきの写真が大写しで出てる。


 今度のは、下に名前が書いてある。


 書記長   野中民雄  以下ゴチャゴチャとあって、ノーヘルの学生服……。


 生徒会長  酒井諦観



 え? え? お祖父ちゃんのこっちゃ! 


 


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