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舞踏会の次の日、また国中に驚くべきおふれが出されました。舞踏会の日にある娘が忘れていったガラスの靴が、足にぴたりと入る人を王子様の花嫁とすると言うのです。その日からお城の家来たちが、あのガラスの靴を持って国中の娘を訪ね回っていました。しかし、ガラスのくつがぴたりと合う人は一人として現れません。足を無理矢理ねじ込んでなんとか入れた人もいたようでしたが、当然それはあの日の娘ではないと判断されました。見つからないのも当然です。シンデレラは人間ではなかったのですから。
それから幾日もたち、王子様は落ち込んでいました。王子様はガラスの靴を大事そうに抱え、中庭の噴水の縁に腰掛けていました。灰かぶりの姿を見つけると、王子様はこっちにおいでと手振りしました。
「あの日の女性、愛しのシンデレラがまだ見つからない。彼女はいったいどこにいるだろう」
ああ、シンデレラはここにおります。王子様。
灰かぶりはそう言いましたが、ねずみの言葉が王子様に伝わるはずもありません。灰かぶりは王子さまの手にあるガラスの靴の中に入り込みました。
「おや、お前もこの靴を試してみたいのかい? 灰かぶり。でも君にはちょっと大き過ぎるね」
灰かぶりは靴の中でちゅうちゅうと答えました。
「灰かぶり、お前もシンデレラという名前だね。ひょっとしてあの日の娘さんはおまえだったのかな?」
王子は冗談めかして言いましたが、目の前のねずみは大まじめに首を縦に振っていました。
「私の言葉がわかっているのだろうか。まさかそんなことは……」
灰かぶりはまっすぐに王子様を見つめています。いつものねずみと様子が違って見えました。王子様はガラスの靴を芝生の上に置きました。
「どうぞ、靴をお試し下さい」
王子様はガラスの靴をさしながら灰かぶりにお辞儀をし、丁寧に言いました。灰かぶりは一度靴から出るとかかとの部分に腰掛けるようにして片足だけ靴の中に入れようとしました。