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広いホールの一番奥には王様とお妃様、そして王子様が豪華な椅子に腰掛けていました。流れるワルツに乗ってダンスを楽しむ人たちを、そしてたくさん集まった女性たちを王様は満足げに眺めていました。
「これ王子、ぼうっと座っているばかりでなく、誰かと踊ってきてはどうかね」
「こんなにたくさんいては、どなたと踊るか迷ってしまいますよ」
王子様はそう言いながらあくびをしました。王様はその様子に顔をしかめました。招待された女性たちは、いつ王子様にダンスに誘ってもらえるだろうかと、皆ちらちらと王子様のほうを見ています。
兵隊によってホールの扉が開かれました。遅れてきた娘さんが入ってきたのでしょう。王子様は入り口の方に目を向けました。どうでしょう。そこには見たこともないほど美しい娘が、緊張気味に立っていました。人見知りらしく、これ以上中に入っていくのをためらっている様子でした。王子様は立ち上がると、その娘の方に行きました。すべての女性が、いったい王子様の目にとまった羨ましい女性は誰だろう、と王子様のあとを目で追いました。
「美しい方、私と一緒に踊っていただけませんか?」
王子様は後から入ってきた女性、灰かぶりにダンスを申し込みました。灰かぶりは緊張でこわばっていた顔がぱっと輝きました。
「……はい、よろこんで」
王子様はホールの中央に灰かぶりをエスコートしました。選ばれなかった女性たちは悔しそうな、羨ましげな顔をしながら、王子様と謎の娘のために道をあけました。二人のためにワルツが流れると、王子様と灰かぶりは楽しそうに踊り始めました。王様はやっと重い腰をあげた王子様の姿を見て、嬉しそうでした。