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灰かぶりはコックの目を盗んでこっそりと巣穴に戻りました。
「まあ、帰ってきたの。灰かぶり」
巣穴にはごろんと寝そべったお姉さんたちがいました。
「帰って来てもらわないと困りますけどね。だって明日は舞踏会だもの」
「そうよ。灰かぶりにはたくさん働いてもらわないと。舞踏会よ? ああ、きっとおいしいごちそうがたくさんあるわ!」
「いいこと? 灰かぶりはちゃんとごちそうを運んでくるのよ。」
灰かぶりはうつむきました。
「でもお姉さま方、私・・・舞踏会に出たいわ」
姉たちはきょとんとしました。そしてすぐに大笑いし始めました。
「舞踏会に出たいですって? 何を夢のような話をしているの?」
「でも、身分も家柄も問わず、すべての娘が舞踏会にいっていいのよ」
灰かぶりは言い返しました。
「ばかね。人間の話よ。まさかあなた、あの人間の王子が好きなんじゃないでしょうね?」
「そういえばよく一緒にいるところを見かけるけどね、人間がねずみを相手にすると思って? 一緒にダンスも踊れやしないわ。」
お姉さんたちはくすくすと笑いました。
「ダンスくらい踊れるわ。私練習したもの」
「いいかげんになさいよ。おまえは舞踏会に出ることはできないの。さあ、そんなことより、灰の中の豆を拾ってきて頂戴」
灰かぶりは悲しそうにうなだれると、かまどに向かいました。灰かぶりだって、もちろん自分が舞踏会に出れないことくらいわかっていました。華やかな舞踏会で王子様とダンスを踊るなんていうことは、夢物語でしかありませんでした。
「せめて一晩だけでも、人間になることができたらいいのに……」
灰かぶりは叶わぬ願いをぽつりとつぶやくのでした。