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昔々、あるところに立派なお城がありました。そのお城は、この国の王宮で、もちろん王様やお妃様、王子様が住んでいらっしゃいます。とても平和で、王様はとても国民に慕われておりました。
そんな王様にも頭を悩ませるものがありました。王子様のことです。王子様はもう結婚なさっても良い頃だというのに、王子様にとっていま一番楽しいのは乗馬や猟りなどの遊びであり、結婚には一向に無関心なのです。
「おまえが結婚してくれないことには安心して死ぬこともできん。早く孫の顔がみたいものじゃ」
王様は王子様にたびたびこう言いますが、王子様は決まって言い返します。
「いえいえ、父上。死ぬなどと不吉なことは言わずに、どうか長生きして下さい。結婚したいと思うひとが現れましたら、ちゃあんと結婚しますよ」
そしてそそくさとその場から逃げるのです。王子様自身はまだ結婚なんて早いと思っていましたし、結婚したい相手もいませんでした。
しかし、王様が扉の前に立って行く手をはばんだので、今日は逃げられませんでした。
「結婚したい人が現れれば結婚すると言ったな。ではこうしよう。すぐにでも舞踏会を開く。そして国中の年頃の娘を一人残らず集めるのじゃ。家柄、身分も問わぬ!」