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2話

「ゴメンね、柏崎君。今日何曜日かわかる?」


「えと、水曜日だったと思います。」


「そっか、ありがと」


「それで、今回は何日だったんだ?」


「新木さん、デリカシーが無いですよ」


「すまんすまん。で、何日だったんだ?」


「話聞いてました?…まあいいです、今回は3日でした」


「まあ今回はそこそこってとこか。信次、良かったな。寝たばっかだったら1時間だったぞ」


「3日って、食べものとかどうしてるんですか。脱水とか栄養失調にはならないんですか?」


「その点は大丈夫だよ。私達の体はちょっと特殊だから」


「特殊…?それに、私た…」

「ほら、もう着くぞ!喋ってないで、隊長への言い訳を考えとけ」


「あ、はい。すいません」


「大丈夫でしょ、そんなに気負わなくていいよ。隊長は私がどれだけ起きないのか知ってるから」


 そんなことを話していると、会議室に到着。


 それにしても、この拠点はどうやって作ったんだろう。こんなに大きいものを、この場所、それも地下に、戦時中に造るなんて、不可能に近いのではないだろうか。


「結構早かったな。席に着いてくれ。始めるぞ」


「あ~あ、30分かからなかったか、早かったな。お前の勝ちじゃん」


「ちょっと、声がでかいよ!それに今じゃなくていいでしょうが!」


「聞こえてるよ、佐々木君、猪口君」


「ばれちゃったか。こりゃまずい」


「ならもっと隠す努力をしろよ!お前は声がでかい!空気を読めない!」


「大方、私の来るまでの時間でも賭けていたんでしょう。猪口君への意見は全面的に認めるけど、賭けに乗る佐々木君も悪いと思うんだよね、私は」


「ごめん、西巻。次はもっとうまくやるからさ。佐々木は見逃してやってくれ」


「あんたって奴は…」

「お前、ほんとに空気読めないよな」


「もういいか、時間がない」


「すいません、隊長。始めてください」


 そして、会議は始まった。



 僕のいる部隊にはなんと8人しかいない。これは、現在西と東に別れて内戦状態の日本のどちらの軍にも所属していないことで、新たに配属される人物がいないのが理由の1つだ。


「ではこれより緊急会議を始める。今日、富士の砦に西軍が攻め込むという情報を掴んだ。それに乗じて俺たちも攻めるぞ。唐突なのは、勘弁してくれ。色々あった」


「むむ、思ったより西の動きが早い。で、今回は何が目的なんだい、隊長?」


 いきなり核心を突いたのは白井孝治さん。この隊の最古参メンバーで、隊長の右腕であり、親友でもある。

 ちなみに、この部隊の隊員は、所属歴が長い順に、白井さん、隊長、新木さん、西巻さん、立川さん、佐々木さん、猪口さん、僕の8人。

 

「消耗品の補給もあるだろうが、本当の目的を話してくれよ?」


「単刀直入に言うと、()()()()が見つかった。……だが、時間が経ちすぎている。手遅れだろう」


「そりゃ残念だ。…期待はしてなかったが」


 例の奴らとは誰なのか僕は知らない。部隊に入ってまだ2年の僕には、あまり多くの情報を与えられていないからだ。正直に言うと、信用されていないようで、反発はある。だが、納得はしている。拾ってきた孤児にほいほい情報を与える方がおかしいからだ。


 隊長に敬語を使わないのは、白井さんと新木さんだけ。新木さんが入ってきてから西巻さんが入るまでに何かあったのだろうか。

 会議は基本的に古参の3人が進行する。わからない事があれば、他の隊員が適宜質問する形だ。


「立川、佐々木、猪口は東に紛れてうまく陽動してくれ。西巻は偵察を頼む。孝治は情報伝達。浩介はやばそうな所のサポートにまわってくれ。…そして、信次は俺と一緒にこい」


 その瞬間、水をうったように静まり返った。

 

 だが、それは嵐の前の静けさだ。


「初めての出撃が隊長と一緒に突撃ですか!?」

「ヤ…隊長!駄目だ!早すぎる!」

「本気でいっているのかい、隊長?」

「隊長が遂に一人で突撃することをやめたぞ!」

「バカ!空気読め!」

「隊長と信次君か…それもまたいいな」

「立川君?何言ってるの?」


 皆が一斉に騒ぎだした。新木さんは慌て、白石さんは冷静に、猪口さんは騒ぎ、佐々木さんはいつものように猪口さんをたしなめ、立川さんの呟きを耳ざとく聞きつけた西巻さんが顔を引きつる。

 余談だが、白井さんは「~~~~、隊長?」が常套句だ。


「本気だ。疑心は疑心しか生まない。俺は昔、それを思い知ったからな」


「それはわかるがよ…。それでも心配だよ。あんたはもう、簡単に死ねる身じゃないんだ」


「新木、お前がフォローすればいい。僕もやれるだけやろう。だが、新木の言うことにも一理ある。わかったかい、隊長?」


「簡単に死ねる身じゃない…か。心に留めとく。俺だって死にたくないからな」


「約束だ。何があろうと生きて帰ってきてくれ。たとえ、奥の手を使うことになってもだ」


「ああ、わかった。絶対に、生きて、帰ってくる。俺の居場所は…もうここだけだから」



 話に入り込む余地がない。隊長は過去に何があったんだろう?

 隊長は、いつも1人で突撃しているらしい。僕は入隊してからまだ外に出たことがないから人伝だが。これも、隊長の過去に関係があるのだろうか?

 


 それにしても、隊長と一緒に突撃か…。期待と同じくらい不安だな。生きて帰ることは出来るのだろうか。



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