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あの頃のメロディ  作者: 星利
2.<青い春の日>
9/19

ミッドナイト・ディスコ


「っシャ、皆でカラオケ行こかぁー!」


体育祭の日の夜、剛力君の雄叫びにより、カラオケでクラスの打ち上げが行われることになった。


速水君に、「の~ざきさん、友達作るチャンスだよ★」と煽られた私は、しぶしぶ行くことにした。


集合場所は、高校の最寄り駅近くの、カラオケ店前。ちなみに、私は生まれてこのかた、"カラオケ"というものに行ったことがない。


いつもならまっすぐ帰る道を、最寄りの駅前で曲がり、カラオケ店の前でたむろする。


(打ち上げって、どんなのかしら?)


どうせぼっちだろうという不安感と共に、どこか踊る心。今まで、"打ち上げ"というものにも参加したことがなかったのだ。


私は、「今日は遅くなりそう」というショートメールをお母さんに送信する。


そして、周りをキョロキョロ見渡してみる。体育祭終了後、一時帰宅したので皆私服だ。


私は、majic(マジック) regend(レジェンド)というブランドの袖がひらひらした黄色のトップスに、デニムのタイトスカートを履いてきた。


少しばかり気合を入れすぎたかと思ったが、周りの女子達のオシャレクオリティーが高すぎて、杞憂と化した。


(まだまだね、私…!)



特に目立っているのは、森野(もりの)さん。彼女は、うちの高校にしては珍しく茶色のロングヘアをしていて、それをゆるふわに巻いている。


そして、Jazzlin(ジャズリン)というブランドで宣伝していた、白地に赤いチェリー模様のふわふわワンピースを着ている。…あんな可愛らしい服が似合うなんて、羨ましい。


足元も、鼠色のスリッポンの私と違い、リボンデニムのヒールを履いている。


森野さん達を遠くから眺めていると、集合場所に沢下君も来て、友達数人と喋り始めた。


(やっぱり、爽やかだわ…!)


その漂う爽やかさと優しい笑顔に、見惚れてしまいそうだ。彼は、襟付きの薄手白シャツに、下はジーパンという、シンプル・イズ・ベストなスタイル。



「やぁ、野崎さん。…待った?


その服、似合ってるよ!」


デートの待ち合わせみたいなセリフを言いながら、速水君が駆け寄ってきた。


「はぁ?」


待ち人でない人にそんなことを言われて不快なので、精一杯嫌味を込める。


そして、私は速水君の服装をまじまじと見つめる。…オシャレさんだ。


高級そうな白いTシャツの胸元にサングラスを引っかけ、下は黒いタイトな黒ズボン。薄手の黒いジャケットを羽織っている。


更に足元は、ほとんどの男子がスニーカーなのに対し、黒色のロックっぽいショートブーツ。


「…速水君って、オシャレなのね。」


「ハハッ。僕、オシャレには自信あるから。」


キメ顔で堂々とナルシ発言をする速水君。なんと返せばよいか分からなかったので、無言で頷いておいた。


速水君とファッションについて話していると、時計が19時を指した。



「みんなー、来た人から受け付け済ませていって!」


剛力君と共に幹事役のクラスの女子が、皆をまとめる。彼女はサバサバ系バスケ女子で、名前は確か山田さん。



なるほどカラオケというものは、部屋が幾つかに分けられており、その中でそれぞれ歌って楽しむものらしい。


来た者順で勝手に区切られ、私はちょうど女子部屋になった。


メンバーは、森野さんと山田さんと、私とポニーテールの子(名前が分からない)の4人だ。



「イェーイ!女子会しよ!」


はっちゃける森野さん。彼女は、私から見る限りキャピキャピしていて、友達が多い。


「じゃあー、1人ずつ自己紹介からしていこー♡


うちは、森野(もりの) 真由(まゆ)。まゆって呼んで下さぁい!


今日は2コ1のひかるちゃんと部屋が離れてしまったけど、楽しみたいし、よろしくねー!」


(2コ1…ナニソレ?)


「ウチは、山田(やまだ) 梨華(りか)。バスケ部。サバサバしすぎてて怖いってよく言われるけど、元からやし気にしないで!」


彼女は、黒髪ショートカットで、いかにも"スポーツ少女"といった感じだ。


次に、黒髪ポニーテールの子が口を開いた。


「あたしは、白崎(しろさき) 海乃(うみの)です。


剣道部に入ってるよ。


良く、変わり者っていわれるけど、どうぞよろしくね~。」


おっとりした口調の彼女は、美人かつ癒しキャラといった雰囲気だ。


「海乃は、変わり者じゃなくてナチュラルビューティやって!」


森野さんが、真剣そうな目で白崎さんを見て言った。


「ありがと~。」


フフッと笑う白崎さん。


次は、私の番だ。



「あ、あの…私は、野崎 花澄、です。


今日は、打ち上げに参加させてくれてありがとう、ございます。


どうか、よろしくお願い致します。」


「花澄ちゃん、うちら同いやし、敬語じゃなくていいよ!むしろ、タメで話そうやぁ。」


森野さんが、優しい言葉をかけてくれた。


「あ、ありがとう、森野さん。」


「"さん"とか、付けんといてよ~。


一緒のクラスやし、仲良くしよ!今から、ここにいる3人のことは名前で呼んであげて。」


ニコニコとこちらに笑いかけている3人。


3人共、思っていたよりも優しそうだったので、何だか感動して泣きそうになった。



「じゃあ、1曲目は真由いくなぁ!


DTB43(道頓堀フォーティースリー)で、『恋するぬいぐるみ』!」


DTB43とは、今を時めく女性アイドルグループである。



(でも、名前が出てきすぎて頭パンクしそう。一旦、整理しよう…。)


私は、3人が歌っている間手拍子を入れながら、今まで出会った人たちの情報を日記にまとめることにした。(あとがき参照)※


(人と関わることに慣れていないもので…。)



◇◆◇◆


(ふぅ…)


全て書き終わったと同時に、私の左隣に座っている海乃ちゃんの歌が終わった。


「次は、花澄ちゃん歌ってよー!」


楽しそうに笑う真由ちゃんに、マイクを渡されてしまった。


(ど、どうしよう。カラオケなんて、来たことないのに…。)


「自分がよく聴く歌でいいと思うよ~。」


海乃ちゃんの言葉で、私の決意は固まった。


(えぇい、私の好きな曲入れちゃえ!)


震える手で転送ボタンを押し、始まったのは『ちぇりー』。



「恋してしまったのよ~♪


絶対 君は気付いてないのに~♪」


いざ歌うと、思っていたよりも乙女な歌詞にこっぱずかしくなり、後悔した。


「ちぇりーやん!」


「意外!」


「あたし、この曲知らないんだな~。」


「え、海乃、知らんの?」


「うん、あたし、流行には疎いもので~。」



大いに盛り上がり、そんなこんなで歌い切った。


「イェー!」


ハイタッチを求めてくる真由ちゃん。


「めっちゃ"恋してます"って感じ。


なぁ、花澄ちゃんって好きな人おるん?てかさ、皆で恋バナしようやぁ!」


「…!」


恋バナなんて、久しくしていない。


「お、いいね!


で、誰?速水君?」


探るような目で笑っている梨華ちゃん。


「え?速水君は、友達だよ。」


真顔で答える私。


「えー、あれだけいつも一緒なのに~?」


「いいやん、速水君イケメンやん!」


そして、真由ちゃんが追い打ちをかけてきた。


「じゃあ、もしかして沢下君?」


「…ッ!


好きかどうか、まだ分からないよ。」


言葉とは裏腹、みるみるうちに熱を帯びていく私の顔。


「おー!真由当たりやぁ!お目が高いなぁ!


でも、知ってる?黒田さん…あの金髪ギャルも、沢下君のこと好きらしいし、気を付けて!」


声を潜める真由ちゃん。私は、心の中で"知ってます"と呟いた。


「えー、まじ?!不釣り合いすぎじゃん!」


「まじか~。」



「実はな~、真由の2コ1・ひかるちゃんが今、その2人と一緒の部屋らしくて、LINDで状況を教えてくれるそうで~す!」


(あの2人、同じ部屋だったのか…。)


ザワザワと胸騒ぎがする。


「なになに…、えーとね、…ハァー?!


黒田さんが沢下君に言いよって、LIND交換したんだって!


しかも、最初は同じ部屋じゃなかったのに、黒田さんが無理矢理入ってきたとか!」


「ハァ?


何なん、あのビッチ黒田。部屋変えとか、そんなルールないし!」



どうやら真由ちゃんと梨華ちゃんは、黒田さんのことが好きではないらしい。


「うちら、花澄ちゃんを応援してるしな!」


真由ちゃん達が、ニコリとして笑った。


(は、はぁ…。)



「…で?真由もいるんやろ、好きな人。」


梨華ちゃんがニヤニヤした顔で迫る。


「えー、言うん?


真由の好きな人は、…剛力君。」


顔を両手で隠しながら、楽しそうに暴露する彼女。


「エッ!」


驚く一同。


「えー、何か、体育祭で惚れた。カッコよくない?キャ~♡」


真由ちゃんは、足をジタバタさせ、まさに"恋する乙女"を具現化したようだ。


「まさかの、黒田さんの元カレ…。」


呆れる梨華ちゃん。


「てかさ、聞いて!真由、黒田さんと中学同じやってん!


知ってた?…黒田さん、中学の時いじめられてたんやで!」


「そうなの?」


目を丸くする私達。


「何か色々あって、あんな風になったらしい。


中学の時は、かなり素朴だったのに。」


「え、黒田さんって、最初からギャルじゃなかったん!」


アハハ、と笑う梨華ちゃん。


「また、卒アル見においで。…あ、いいこと考えた!


体育祭の後は期末テスト期間やし、真由ん()で勉強会しよ、この4人で!」


「いいね~!」



◇◆◇◆


それからは、4人で歌ったり踊ったりして夜が更けていった。


やがて朝が来ると、疲れ果てた体とは裏腹、帰りたくないと思う自分がいる。


仲間と騒ぐことの楽しさを知った。こんなに楽しいことが、あるなんて。


体育祭は金曜日に行われたので、今日は土曜日だ。


「そろそろ朝6時やし、お開きかな!」


幹事である梨華ちゃんがそう言ったので、初めてのカラオケオールは終了した。



しかし、帰りに駅へと向かう組をチラリと見た時、さっきまでの満たされた気持ちが一気に覚めてしまった。


そこにいたのは、沢下君と、…隣で楽しそうに笑う黒田さんの姿。ズキリと胸が痛むのが分かった。



「野崎さん、一緒に帰ろうか!」


そんな速水君の声で、ハッと我に返る。


「いや~、男ばっかりのカラオケルームだったよ。


…でも、友達できたし…ま、いっか。」


「あ、そ!」


「野崎さんは、どうだったの?」


「カラオケ自体は、楽しかった。


でも、――。」


私の表情はきっと、曇っていた。速水君は、それ以上追及してこない。


その日は、喜びと悲しみの混じった複雑な気分のまま帰宅した。

<花澄のノート>


「・野崎 花澄…自分

 

 ・沢下君…爽やかなテニス青年で、優しい。こんな私に笑いかけ、困っている時に助けてくれた。(思わず目で追いかけてしまう)

 

 ・速水 瑛太…うざいぐらい、いつも私の周りにいるクラスメイト。軽音部。金髪で、俗に言う"イケメン"(らしい)。


 ・田中 秋子ちゃん…私の小学校の時の友人。私をいじめから救ってくれた後、家族ごと行方不明となってしまった。


 ・磯辺部長…軽音部の部長。雰囲気はインテリなのに、似合わないファンキーな赤眼鏡をかけている。ニックネームは"いそべやき"。


 ・椿さん…軽音部で同じバンドになった、大人な色気のある黒髪の美少女。


 ・黒田さん…軽音部で、同じバンドになってしまった金髪のギャル。沢下君のことが好きらしく、私を勝手にライバル視してくる。


 ・剛力君…見た目はクラス1のチャラ男。しかし、体育祭委員として頑張っていた。


 ・真由ちゃん…キャピキャピしていて友達が多い。優しい。


 ・梨華ちゃん…サバサバ系バスケ女子。黒髪ショート。


 ・海乃ちゃん…ポニーテールの剣道女子。ナチュラルビューティ。おっとりしている。」


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