作戦会議
私達は、高校の近くにあるこぢんまりとしたカフェ・"dreamy"に入ることにした。
「ここ、初めて来たけどオシャレ!」
店内の様子をスマホでパシャパシャと写真に収める私。
木造の建物で、店内はナチュラルな雰囲気だ。植物や、猫モチーフの雑貨などのインテリアがアットホームな感じを醸し出している。
「速水君って、こういうお店詳しいの?」
「まぁね。」
「ふーん。」
私達は、それぞれ名物のフレンチバーガーセットを注文した。
数分すると、焼き立てバンズにオニオンらしきソースやレタス、トマトに肉汁溢れるお肉が挟まれた手作りバーガーが運ばれてきた。
手作りの細いカリカリポテトと、コーラも付いている。
「うまそー!」
目を輝かせる速水君の前で、私はまたスマホをパシャパシャ鳴らす。
「いただきまーす!」
彼がそう言ったので、私も手を合わせる。
フレンチバーガーを口に運んだ私は、それを堪能する。サクッとしたバンズは、中がふわとろでほんのり甘い。それが溶けたと思いきや、次はフレッシュな野菜に包まれた肉汁たっぷりのミートがジュワッと口いっぱい広がる。
「お、美味しい…!」
感動してしまった。この世界にこれほど素晴らしいバーガーが存在していたなんて。
「美味いね!」
そう言うと、コホンと咳をする速水君。
「そろそろ本題に入らなくちゃね。どうする?…黒田さんのこと。」
彼はフレンチバーガーを頬張りながら、困った顔をして言った。
「どうするかねぇ…。」
私は、しぶしぶと答えた。
「そこなんだよなー。でも、バンドやる為には何とかしなきゃ。」
更に眉間にしわを寄せて、彼は続ける。
「というか、野崎さん。何でそんなに黒田さんに嫌われてるの?」
「え、…。」
多分それは、私と黒田さんが恋のライバルであるからだ。でも、それが他人にバレるなんて恥ずかしい。
言葉を失っている私に、速水君が恐る恐る言う。
「…もしかしてだけど、野崎さんって沢下君のこと、好き?」
「ぶふぉっ!」
飲んでいたコーラを思わず吹き出してしまった。
「ゲホッ、ゲホッ…」
(何でそんなに鋭いのよ!)
「…そっかそっか。」
少し切なそうに、うんうんと頷く速水君。そして、続ける。
「僕が思うに、黒田さんも、沢下君のこと好きだと思うんだ。
この前、宣戦布告とかされたんでしょ?」
…
一拍置いて、私は叫んだ。
「な、なんでアンタがそれを!」
「まぁ、オトコのカンってやつかな。僕の人間観察能力をナメちゃいけないよ?」
「は、はぁ…。」
「入学して早々恋愛なんて、キミたちは困ったもんだよ。」
彼は、やれやれと手を広げる。
「でも、こうなったらキミには2択しかないだろうね。」
「2択?」
「そう。恋――沢下君を選ぶか、バンド――僕たちを選ぶか。」
「……。」
(バンドにも沢下君が関係してるなんて、言えない…。)
「でも、キミにはどうしてもバンドを選んでほしいな。
今後一切、沢下君と関わらないことだね。
そして、黒田さんと仲良くなるんだ。」
「そ、そんな一方的に…。」
困り果てた私は、腑に落ちないことを暴露する。
「で、でも…。黒田さんと仲良くしようにも、もっと"根源的な何か"がある気がするの。
…それに、沢下君とは、たまに話す程度だし…。」
「そこなんだよなー。
あー、もうわっかんねぇな!」
彼は自分の頭をグシャグシャしている。
「確かに、分からないわね…。」
カァ、カァ、カァ…
沈黙の中に響き渡る、カラスの鳴き声。よい子はもう、帰宅する時間だ。
「もう、帰ろっか。
あ、そうだ。野崎さんのLIND教えてくれない?
何か作戦をひらめいたら連絡してよ。」
LINDとは、若者の間に普及したインスタントメッセージアプリだ。
「あー、はいはい。」
別に嫌というわけではなかったので、私は速水君とLINDのIDを交換した。(実は、これが男子と交換する初めてのLINDである。)
「じゃ、僕が払っておくよ。」
速水君は先に歩いていき、2人分のお会計を済ませようとしている。
「えっ、そんなのいいって!」
「ちょっとぐらい格好つけさせて、ね★」
「う、うん…?」
速水君は、なぜそんなに女子から好かれたいのだろうか。
◇◆◇◆
その日の夜、速水君からLINDが来た。
「速水 瑛太でーす!
何かあったら、気軽に連絡してね♪」という文字。
「ほーい」という黒猫のスタンプを送っておいた。




